3億円事件別件逮捕に対する声明

いわゆる三億円事件の捜査当局は、事件発生後満1年を経過した昭和44年12月12日A氏に任意同行をもとめ、10数時間にわたって取調べた上、別件の脅迫被疑事件について逮捕状を得て身柄を拘束した。


この脅迫事件なるものも、1年以上前の些細な出来事であり、強制捜査はもとより、捜査に値するほどのことでもなかった。したがって、前記逮捕は、もっぱら三億円事件の捜査に利用するためのいわゆる別件逮捕といわなければならない。


このような別件逮捕が違法、不当なものであることは学説判例の認めているところである。本連合会では、つとに昭和29年札幌で開かれた人権委員会総会において決議したのをはじめ、昭和31年の人権委員会総会決議、昭和40年の人権大会宣言等もかかる違法捜査を強くいましめ、去る5月にも半田署事件について関係当局に警告しているのである。ところが、依然として、その跡をたたないのは極めて遺憾である。


よって、本連合会は、人権擁護委員会内に三億円事件別件逮捕特別委員会を設け、次の事項について徹底的に調査し、真相をきわめるとともにその責任の所在を明らかにし、人権擁護のため適切な処置を採ることにした。


  1. 別件逮捕の法理
  2. 本件逮捕および取調べの具体的経過
  3. 本件逮捕状および捜査令状発布の実態
  4. 本件に関する報道と人権
  5. 本件被逮捕者の釈放についての民間の協力

右声明する。


1969年(昭和44年)12月20日
日本弁護士連合会


昭和44・12・20理事会承認