自民党の「裁判制度調査特別委員会」設置提唱に対する談話

1.

去る4月23附新聞の報道によれば、自民党の提唱する「裁判制度に関する調査特別委員会」設置の動機ないし目的が、公安、労働事件の判決の傾向に対する不満から出発、具体的判決内容を調査し、政府もしくは与党たる政党の力を以て裁判官の人事を通じ、この傾向を是正せんとするにある。


2.

政党として政策研究の立場より司法制度のあり方を検討し法令の解釈を批判論議することは一般的に許さるべきであるが、右のような目的の下に、政府与党として事実上裁判官人事に強い影響力をもつ自民党がかかる調査を行うことは、裁判官に対し圧力を加える危険性が極めて大である。


従って、かかる企図ありとせば、裁判官の独立に対する重大の干渉となり、われわれは絶対に容認できないところである。


1969年(昭和44年)4月25日

日本弁護士連合会
会長 阿部 甚吉


昭44・5・10理事会承認