沖縄における裁判移送に関する声明

日本弁護士連合会は、去る昭和36年6月、日本政府を通じて、米国政府に対して、琉球民裁判所に係属中の事件を高等弁務官の裁量により随時琉球列島民政府裁判所に移送することができる旨の米大統領行政命令の規定は、沖縄住民の「自国民による裁判を受ける権利」を奪う不当なものであるとして、該規定の削除を強く要望したところである。


しかるに、去る6月7日琉球上訴裁判所に対し、米国の安全、財産、利害に特に重大な影響を及ぼすとは到底考えられないいわゆる「友利裁判」および「第2サンマ事件」を民政府裁判所に移送すべきことを命じた高等弁務官命令は、当会の要望を無視するものであって遺憾に堪えない。


沖縄住民も近代国家における市民的自由を享受し得る日本国民として、人権に関する世界宣言、国連憲章および日本国憲法にも明定された基本的人権を当然に保障される権利があることに鑑み、琉球列島民政府当局は、速かに民主主義の普遍的原則に反する前記移送命令を撤回すべきである。


右声明する。


1966年(昭和41年)7月7日


日本弁護士連合会
会長 中松 澗之助


昭41・7・16理事会承認
総理府総務長官宛送付