日弁連新聞 第574号

新年会長インタビュー
1年9か月を振り返る
―重要課題への取り組みと成果

明けましておめでとうございます
本年が皆さまにとって良い年となりますようお祈り申し上げます


就任後、会長として最も力を入れて取り組んだ課題は何ですか

インタビューに応じる荒会長一昨年から続いてきた新型コロナウイルス感染症への対策・対応を可能な限り実行することが第一であったと思います。コロナ禍の中でも総会や理事会、法定委員会を含む委員会が十全に機能するための手当をすることは喫緊の課題でした。また、市民や事業者の方々が大変苦しい状況に置かれ、幾重にも法的な課題を背負わざるを得なくなる事態が想定されたことから、これらに対する法的支援を検討してきました。ワクチンの接種を巡るさまざまな偏見・差別といった問題も出てきたため、実態調査や問題解決に努めました。日弁連の行った対外的な取り組みについては、「COVID-19と人権に関する日弁連の取組―中間報告書― 」にまとめていますので、日弁連のウェブサイトでご覧いただければ幸いです。


さらに、このような状況下で、会員の皆さまの負担を軽減するため、会費の見直しにも力を入れてきました。若手会員の支援についても私の任期中に可能な限りのことを行おうと、具体的な支援策を取りまとめて実施しました。


その他、私が会長就任以来大事にしてきたことは、日弁連として言うべきことを適時・的確に取りまとめて公表することです。


こうした課題に対する具体的な成果を教えてください

コロナ禍の中でも総会や理事会、法定委員会を含む委員会が十全にその役割を果たし、日弁連としてしっかりとした活動ができる体制を築くため、会議の出席方法などに関する会則等の改正を行いました。その結果、2021年度の定期総会は、開催場所を広島県から東京都に変更することにはなったものの、予定されていた日時に開催することができました。また、理事会も会則や議事規程等のルール上の疑義が生じることなく毎月開催できています。法定委員会では、外部委員の方々にも安心してご出席いただくことができており、その他の委員会活動についても支障なく行われています。


対外的なものとしては、感染症法の改正についての活動が挙げられます。行動制限に違反した市民に対し刑事罰をもって対処する改正案が検討されていたのに対し、日弁連は法律家の集団として、厳しい環境に置かれている市民や事業者に対して刑事罰をもって対処すべきではないという意見を述べ、関係者に対し強く働き掛けました。その結果、刑事罰の規定は削除されて法改正が行われました。


また、検察庁法の改正については、2020年には一旦廃案となり、その後検察官の勤務延長の特例が削除されるなど日弁連が求めていた点を反映した形で再提出され、昨年6月の通常国会において改正法が成立しました。


その他、少年法や入管法の改正問題についても、日弁連の主張や活動の結果、一定の成果を上げることができたと思います。こうした成果は、先ほど述べたように、日弁連として言うべきことを適時・的確に取りまとめて公表するという方針が結実したものだと考えています。


会費の見直しについては、昨年12月3日に開催された臨時総会において、弁護士会員の一般会費を月額1万2400円から1万200円に減額することが承認されました。少年・刑事財政基金とその他7援助事業を行う法律援助基金のための特別会費についても減額が承認され、今後、それらの支払項目の拡大や支払額の増額等についても見直しを行う予定です。


若手支援に関しても、「若手チャレンジ基金制度」(若手会員の公益的活動等に対する支援)を創設することができました。若手会員が行う公益的な活動等に光を当てて、日弁連として積極的に支援する仕組みを作ることができたことは、非常に意義のある取り組みだと思います。実際に、対象となった会員から500を超える応募があり、先進的な取り組みについては、まもなく審査結果を公表する予定です。


日弁連会長として最も思い出深い出来事は何ですか

2020年度は、定期総会を予定どおり開催することができず9月に延期しましたが、7月末から8月中旬にかけて、総会の開催方法等について副会長と共に検討を重ねたことが思い出に残っています。どうしたら皆さまにご理解いただける形で総会を開催することができるか、どうしたら総会の開催場所に来ることができない会員の議決権についても行使できるようになるか等を連日検討しました。


また、コロナ禍への対応を迫られる一方、感染症法や検察庁法の改正問題など、国会で審議されている重要な事項についても同時並行で大きく力を注いだことも印象に残っています。


会員へのメッセージをお願いします

今年もまた大きな課題を背負いながら日弁連は活動していくことになります。とりわけ、法曹人口の検証結果については取りまとめ案が現在検討されていますが、これを年度内の理事会にお諮りするため準備を進めていきたいと思っています。


また、若手チャレンジ基金制度についても、今年度の審査結果や若手会員がどのような公益活動や自己研鑽のための活動をしているのか注目していただきたいと思います。


皆さまのご協力もいただきながら、私たち2021年度執行部は、本年3月末までの任期を全うできるよう、全力を尽くしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


(インタビュアー 広報室長 白石裕美子)



臨時総会開催
一般会費の減額の件など全議案を可決
12月3日 弁護士会館

臨時総会が開催され、一般会費の減額の件など14議案について審議の結果いずれも可決された。


一般会費の減額の件など6議案

2022年4月から、①弁護士会員の一般会費について月額1万2400円を月額1万200円(司法修習を終えてから2年を経過しない者については月額6200円を月額5100円)に減額すること、②弁護士会員以外の会費についても、それぞれ減額することを内容とするもの。


「これまでにない大きな減額幅だが、会員の負担軽減と日弁連の活動維持の双方に十分な目配りがされており妥当である」等の賛成意見のほか、弁護士過疎対策や弁護士会事務のIT化への支出を求める意見なども出された。


採決の結果、いずれも賛成多数で可決された。


少年・刑事財政基金のための特別会費徴収の件など3議案

全議案を賛成多数で可決した

①2019年度の臨時総会で決議した少年・刑事財政基金のための特別会費の徴収期間を2025年6月まで延長すること、②2022年4月から月額1600円の徴収額を月額1300円に減額することを内容とするもので、採決の結果、いずれも賛成多数で可決された。


法律援助基金のための特別会費徴収の件など3議案

①2019年度の臨時総会で決議した法律援助基金のための特別会費の徴収期間を2025年6月まで延長すること、②2022年4月から月額900円の徴収額を月額800円に減額することを内容とするもので、採決の結果、いずれも賛成多数で可決された。


共同法人会員基本規程中一部改正の件など2議案

共同法人においても外国法事務弁護士による不当関与等の疑いがあるときには弁護士会と日弁連に調査権限を与え、その調査への協力義務を会員に課すもので、弁護士・外国法事務弁護士共同法人に係る弁護士会の懲戒の通知に関する規程制定の件と併せていずれも賛成多数で可決された。



第29回司法シンポジウム
民事裁判手続のIT化とこれからの司法
10月30日 オンライン開催

arrow_blue_1.gif第29回司法シンポジウム「民事裁判手続のIT化とこれからの司法」


民事裁判手続のIT化に向けた民事訴訟法改正の動きが急ピッチで進んでいる。この改正により訴訟手続が様変わりし、市民にも大きな影響を与えることが予想される。


今回は「民事裁判手続のIT化とこれからの司法」と題して議論を行った。


第1部
IT化がもたらす訴訟活動の変化と弁護士・依頼者間の関係

1 訴え提起、準備書面等の提出

平岡敦会員(第二東京)が、事件管理システムのデモサイトを用いて、想定される事件管理システムの全体像や、民事訴訟の各手続段階における運用や操作について解説した。デモサイトの作成に関与した内野真一会員(東京)は、当初のインターフェイスはシンプルなものに留め、システムの導入後に弁護士の意見も取り入れながら継続的に改善・改修に取り組むことを提案した。


石原真二会員(愛知県)は、オンラインによる訴え提起や準備書面の提出の実現に備えて、弁護士にはIT環境の整備・技術の習得とともに、情報管理やセキュリティ対策への一層の配慮が求められるとした。


2 口頭弁論、争点整理手続

小野純一郎会員(仙台)は、当事者と代理人とが別の場所から参加する模擬争点整理手続を経験して、期日の場で依頼者と意思疎通を図ることは困難であるため、依頼者の不利益とならないよう事前・事後に十分な打ち合わせをすることが重要だと述べた。


3 証拠調べ

専門家証人が遠隔地から出席する模擬証人尋問に参加した石原会員は、ウェブによる尋問は、証人の表情や動作が把握しづらく、効果的な反対尋問を行うことが難しいため限定的に用いるべきと主張した。小野会員は、IT化により依頼者が訴訟記録にアクセスしやすくなり、それにより弁護士や裁判官の活動に対する評価が可能となるため、これまでとは異なる依頼者と弁護士との関係が生まれる可能性があると指摘した。


小括

石原会員は、IT化には裁判の迅速化に寄与することが期待されるが、一方で、紛争の根本にある当事者のさまざまな心情をくみ取れるのかという懸念があるため、弁護士も裁判官も可能な限り当事者の生の声を聴く努力をする必要があり、利便性を追求するあまり、リアルな訴訟対応を避けてはならないと締めくくった。



第2部
「司法弱者」を作らない!
~障がい者・高齢者や地域司法の視点からIT化を考える~

第2部では、障がい者、高齢者、地域司法の立場から現状の司法の問題点を考察し、裁判を受ける権利を充実させるためのIT化はどうあるべきか議論した。


1 本人サポートについて

小林孝志会員(宮崎県)が、IT化された裁判を行う場合に必要となる本人サポートの概要を紹介し、利益相反、守秘義務、非弁行為の問題に留意する必要があると指摘した。社会福祉士の木田大輔氏(横浜市保土ケ谷区地域包括支援センター)は、高齢者の本人サポートは高齢者の特性に配慮して行う必要があり、弁護士など法律の専門家と福祉の専門家とが一緒に対応できる体制の構築が必要だと訴えた。


2 障がい者の視点から

竹尾和晃会員(和歌山)は、障がい者へのインタビューや障がいのある弁護士からの聞き取り結果を踏まえ、障がい者がIT化により司法弱者とならないよう、障がい者に対する手続上の配慮を定める法整備を行い、運用の改善を図ることが必須であると主張した。そして、新しい制度をつくる際はどのような人が取り残されるのかという視点からの丁寧な検証が重要であると強調した。


3 地域司法の視点から

猪瀨健太郎会員(札幌)が、現状でも裁判所へのアクセスが不十分な地域住民にIT化がもたらすメリットとデメリットを紹介した。鈴木穂人会員(沖縄)と出村洋介会員(旭川)は、弁護士過疎地域の現状等を報告し、裁判所が市民の紛争解決の場として機能するためには、現実の裁判所が存在する必要があり、IT化により安易に裁判所の統廃合の流れが進むことへの懸念を示した。


小括

浦田修志会員(神奈川県)は、あらゆる人がIT化の利便性を享受でき、IT化が司法弱者を生み出さないよう、国、弁護士会、裁判所などすべての関係者が、さまざまな立場の方の声を丁寧に聞いて制度や運用に反映させる必要があると締めくくった。



第3部
テクノロジーと司法のこれから

1 技術が変えるこれからの司法

高須順一会員(東京)と町田健一会員(東京)は、仮想ドラマを題材に、テクノロジーが裁判にもたらす影響と是非について語った。


―ドラマの舞台は2030年、偽物陶器の売買を巡る相談から始まる。オンライン相談を受けた担当弁護士が訴訟準備支援ソフト「Sympos」(仮名)を起動して事案の概要を入力すると、AIが訴訟物の候補を提案するとともに要件事実を整理し、典型的な証拠を列挙した。会議は音声認識で自動記録され、類似事案の裁判例が画面にマッピングされた。訴訟提起はワンクリックで行われ、Symposと連携する裁判所の争点整理システムが記録をデジタル化し、AIがブロックダイアグラムや時系列表を自動作成した。代理人は感情読み取り機能が付いたスマートグラスで尋問を行い、その様子は音声認識で即時に字幕化され聴覚障害のある傍聴人もタブレットで傍聴した―


仮想ドラマはテクノロジーの利便性を示す一方でその是非を問い掛けた。両会員は、テクノロジーはあくまでも過去の事例に基づく補助的なツールであり、創造的な作業や最終的な判断は弁護士が担うべきであるとし、司法の質を高め国民の権利利益を守るものでなければならないと総括した。


2 ODRと司法に与えるインパクト

村本耕大会員(札幌)、八木俊則会員(香川県)、矢野領会員(第一東京)、山口裕司会員(第一東京)がODR(Online Dispute Resolution:オンライン裁判外紛争解決手続)の現状と課題について解説した。ODRは、ADRをただオンライン化するのではなく、市民の司法アクセスを向上させ、これまで顕在化していなかった法的紛争を解決することに意義があるとした上で、AI技術を利用した紛争解決の妥当性を担保するためには、AIをサポート的に使いながら人間が判断に関与することが重要であると指摘した。



第4部
パネルディスカッション
裁判手続のIT化のこれから・市民にとって利用しやすい裁判とは

大屋雄裕教授(慶應義塾大学)、別所直哉氏 (紀尾井町戦略研究所株式会社代表取締役)、綿引万里子会員(第一東京/元名古屋高等裁判所長官)、幡野博基会員(東京)が、①IT化が争点整理手続に与える影響、②ウェブ会議による当事者参加の促進や当事者と弁護士の関係への影響、③証人尋問におけるウェブ会議の利用普及などを題材に議論した。


綿引会員は、これまでの裁判官としての経験から的確な争点整理の重要性を説き、IT化によって電子化された主張書面上で双方の主張を対立させるなど、よりよい争点整理の工夫について議論されることに期待を込めた。大屋教授は、行政が保有するデータもオープン化し、あらゆるシステムを連携させることがデジタルトランスフォーメーションの観点からも重要と述べた。


当事者の参加について、別所氏は、立証責任などの理解なしに当事者が手続に参加するとかえって混乱するおそれがあると懸念を示した。幡野会員は、弁護士は依頼者と十分に打ち合わせた上で手続に臨むべきであり、手続では基本的に弁護士が発言し、必要に応じて依頼者に発言を促すなどの対応が必要と述べた。綿引会員は、当事者の参加が増えることは当事者にとって透明性のある手続になる一方で、裁判所と代理人との率直な意見交換がしにくくなる可能性を指摘した。


ウェブ会議による証人尋問の普及の見通しについて、別所氏はウェブでは細かい表情や視線、声のトーンなどの情報量に限界がある点や、カメラの画角の外側を確認できない点を指摘し、証人尋問は原則として出廷して行うべきであり、ウェブ尋問は将来的にリアルと同等の情報量を得られるようになった段階で積極的に取り入れるべきと述べた。綿引会員は、ウェブ尋問には公平性の担保という問題もあるが、司法アクセスの悪い地域や鑑定など専門家のスケジュールが合わず期日が先送りになるケースなどでは、有効な手段となり得ると述べた。



「家事事件手続及び民事保全、執行、倒産手続等IT化研究会報告書」について

2021年4月、公益社団法人商事法務研究会に家事事件手続及び民事保全、執行、倒産手続等IT化研究会(以下「研究会」)が立ち上げられ、同年12月に報告書が公表された。


取りまとめの経緯

民事裁判手続等のIT化については、2022年の通常国会に民事訴訟法の改正法案が上程される予定である。


一方、家事事件手続・民事保全・執行・倒産手続等に関する法律は、民事訴訟法を適用、包括準用または個別準用している。このため、これらの各種手続のIT化に当たっては、改正民事訴訟法を適用、準用する以外に、各手続の特質に応じて別途手当が必要かを個別に検討する必要がある。そこで、2021年4月から研究会が合計12回開催され、同年12月に取りまとめの報告書が公表された。


報告書の概要

報告書では、原則としてインターネット申し立てを可能とすることを前提に、事件記録を電子化すること、期日等を電話会議やウェブ会議で行うこと等が示された。司法アクセスの拡充・審理の充実の観点から、速やかにIT化施策として対応すべき点もあるが、例えばウェブ会議等で債権者集会を行うに当たって意見を聴くべき者の範囲をどうするかなど、各種手続の特質に応じて引き続き検討を要する課題も多い。日弁連においても、利用しやすく頼りがいのある民事裁判手続を実現すべく、引き続き検討を重ねる必要がある。


なお、日弁連では、今回の報告書の公表に合わせて「家事事件手続及び民事保全、執行、倒産手続等IT化研究会報告書に関する会長談話」を公表した。


(民事執行・保全、各種倒産、家事事件手続、非訟事件手続等のIT化に関する検討ワーキンググループ  座長 舩木孝和)



*研究会の議論状況や資料、報告書の全文は商事法務研究会のウェブサイトでご覧いただけます。


*同送の委員会ニュースに、研究会に参加した4人の委員による報告記事を掲載しています。



弁護士によるマネー・ローンダリング対策に関する全国担当者会議
11月30日 オンライン開催

FATF第4次対日相互審査結果(FATF審査結果)を報告するとともに、会員へのフォローアップ等を行う各弁護士会における取り組みや問題点・疑問点等を共有すべく、全国担当者会議を開催した。


FATF審査結果の報告

司法調査室の今野雅司嘱託が、2021年8月30日に公表されたFATF審査結果の概要について報告した。日本に対する評価結果は「重点フォローアップ」に該当するという厳しいものであり、DNFBPs(指定非金融事業者。ここに弁護士が含まれる)についても比較的厳しい評価を受けた。このため、日弁連・弁護士会、弁護士においても年次報告書の提出やこれに基づくマネー・ローンダリング対策の改善に加え、規程・規則の改正を含むさらなる対応が必要となる可能性もあると説明した。


事前照会に関する結果報告・意見交換

今野嘱託、十時麻衣子嘱託が、開催に先立って行われた弁護士会への事前照会の結果を報告した。年次報告書の回答内容に関する追跡調査の結果についても報告し、年次報告書の未提出者に対する監督について弁護士会担当者と意見交換を行った。


続いて、年次報告書の誤回答防止のための取り組みについて事前照会の結果を報告し、年次報告書の書き方に関する研修を実施しているなどの弁護士会の取り組みを紹介した。


今後想定される規程・規則の改正について

今野嘱託、趙継佳嘱託が、今後想定される依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程・規則の改正概要について、現時点での検討状況を報告した。犯罪収益移転防止法施行規則の改正に伴う改正や、FATF審査結果で指摘された事項に基づく改正を検討していることなどを説明した。



第11回人権関連委員会委員長会議
11月2日 オンライン開催

本会議は、日弁連の人権関連委員会・ワーキンググループ(WG)の代表者が「人権のための行動宣言2019」に掲げられている人権諸課題への取り組み状況を確認し、情報共有と意見交換を行うことにより、日弁連の人権擁護活動を推進することを目的としている。

2010年から毎年人権擁護大会に合わせて開催してきたが、前回会議を最後に隔年開催に変更されたため、2年ぶりの開催となった。今回はオンラインも併用して開催し、46の委員会・WGの代表者等が出席した。


会議では、各委員会・WGにおける人権諸課題への取り組み状況に関して事務局からの報告が行われたほか、次の3テーマについて報告および意見交換が行われた。


被収容施設の医療問題

被収容施設の医療に係る人権問題について、①スリランカ人女性死亡事件を踏まえた入管施設の問題、②刑事収容施設の医療カルテ開示の問題について報告がなされ、各委員会の視点からさまざまな意見が挙がった。


新型コロナウイルスに関する人権問題

新型コロナウイルスに関する人権問題および弁護士会の対応について、①困窮者に対する生活相談、②偏見・差別に関する問題、③国際人権法の観点から見た問題点が報告された。さらに、弁護士会として対応すべき新型コロナウイルスに関連する人権課題について意見交換を行った。


SDGsと弁護士会活動

SDGsと弁護士会活動の関連性や、既に弁護士会で実施されているSDGsの取り組み等が報告された。


本会議では、今後も人権問題について関連委員会が横断的に連携しながら対応することの重要性が確認された。


(人権行動宣言推進会議  事務局長 西山 温)



第19回非常勤裁判官全国連絡協議会
11月20日 オンライン開催

非常勤裁判官(調停官)制度(以下「本制度」)は、調停官が裁判官と同等の立場で調停手続を主宰するものとして創設され、2004年1月に第1期調停官30人が執務を開始した。現在では民事調停官59人・家事調停官61人が各地の地裁・簡裁・家裁において調停手続を担っている。本制度のさらなる活性化に向け、現職の民事・家事の調停官が情報共有や意見交換を行った。


調停手続の充実・活性化と弁護士任官の促進

石井芳明氏(最高裁判所事務総局総務局第一課長)は、調停官が弁護士としての知識や経験を生かして調停手続を主宰することにより、法的見解に沿った紛争解決や当事者に分かりやすい調停運営が図られていると述べた。加えて、調停官としての職務経験を通じて裁判所への理解が深まることで、弁護士の常勤裁判官への任官推進につながることに期待を寄せた。


基調報告

弁護士任官等推進センターの柳志郎事務局長(第二東京)は、本制度の経緯・経過や、これまで非常勤裁判官経験者から18人が常勤裁判官に任官したことなどを報告した。その上で、本制度のさらなる発展に向け、実施裁判所の数、取り扱い事件の種類や役割(権限)の拡大を検討していく必要があると指摘した。


現職調停官の講演

民事調停官の柴山将一会員(第二東京/東京簡易裁判所)は、話し合いを目的とした柔軟な手続の調停制度においては、調停官の創意工夫によって関係者を含む紛争全体を一挙に解決することも可能であると、そのやりがいを語った。


家事調停官の川本美保会員(神奈川県/横浜家庭裁判所)は、紛争の背景にある事情についての理解や今後を見据えたきめ細やかな解決には弁護士経験が生きるとした上で、当事者双方が納得する形での紛争解決に至った喜びなどを伝えた。


経験交流会

オンライン上で民事・家事のルームに分かれた経験交流会では、現職調停官同士が弁護士業務との両立や調停運営上の工夫など、それぞれの経験やノウハウを共有した。



シンポジウム
コロナ禍における保育・学童保育と家庭支援
11月20日 オンライン開催

arrow_blue_1.gifシンポジウム「コロナ禍における保育・学童保育と家庭支援」


新型コロナウイルス感染症の影響により、保育園や学童保育が家庭支援・子育て支援という本来の役割を果たせず、子育て世帯が孤立しかねない状況が生じている。この現状を克服するために必要な施策や解決すべき課題を議論した。


保育園の現状

林小夜子氏(社会福祉法人名古屋新生福祉会理事長)が、保育環境や職員の処遇などについて報告した。林氏は、コロナ禍によって新たな課題が生まれたのではなく、既にあった問題が顕在化・加速化・深刻化したと指摘し、保育と家庭支援の重要性を改めて強調した。


海外の家庭支援

池本美香氏(日本総合研究所調査部上席主任研究員)は、コロナ禍におけるニュージーランドの取り組みを報告した。日本では、1回目の緊急事態宣言下では保育園の登園自粛や児童館の閉鎖などにより支援が途絶えるとともに情報が不足し、子育ての全責任を家庭が負う事態となった。一方、ニュージーランドでは、国が家庭を支援するという明確な方針の下、保護者・保育者に役立つ情報を集約したウェブサイトを開設するなど的確な情報提供がなされたと指摘し、子どもの権利の実現には家庭支援が不可欠であると述べた。


保育・学童保育の費用負担

丸山啓史准教授(京都教育大学)は、経済的理由から学童保育に入所できないケースや入所していても保育料を負担に感じているケースが多いとした上で、費用負担の問題は子育ての責任を誰が担うべきかという問題であり、社会全体で検討すべき課題であると指摘した。


学童保育の現状と課題

貧困問題対策本部の鈴木愛子委員(愛知県/社会福祉士/放課後児童支援員)は、2020年に学童保育の職員配置基準が「従うべき基準」から「参酌すべき基準」に改正されたことについて、コロナ禍を想定しておらず、配置基準を実質的に撤廃するものとなりかねないことを指摘し、地域間格差や非常時対応などについて3年後見直しでの検討が必要であると述べた。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.165

公益財団法人動物環境・福祉協会Eva

2019年6月、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)が改正され、動物の殺傷・虐待罪の厳罰化を含む規制が強化されました。今回は、動物愛護の精神の普及・啓発を目指す公益財団法人動物環境・福祉協会Evaの杉本彩代表理事、理事の佐藤光子会員(東京)からお話を伺いました。

(広報室嘱託 木南麻浦)


団体設立の経緯

杉本代表理事(右)と佐藤会員(杉本)動物保護活動を始めたのは、20代半ばでした。多くの活動家の方がそうであるように、私も当初は野良猫の保護や譲渡活動など目の前の動物を救うための活動をしていました。活動費はオフの日にご近所のガレージを借りて不要品を売るなどして捻出していました。


地域に支えられながら活動を続けるうちに、動物を取り巻くさまざまな問題や事件を目の当たりにし、社会全体の意識の底上げが必要だと痛感しました。それから個人で署名運動や啓発活動を行うようになったのですが、やはり個人での活動には限界があると感じて組織化を考えるようになりました。


2014年2月に一般財団法人を設立し、1年後に公益法人の認定を受けました。活動の主軸の一つが政策提言ですから、団体としての信用力を高めるため、当初から公益法人化する必要性を感じていました。


Evaだからできる活動とは

(杉本)主な活動は、講演や啓発ポスター・チラシの配布、動画配信等を通じた啓発活動、国や地方公共団体に対する政策提言、動物愛護管理法や虐待などさまざまなテーマでのセミナーやシンポジウムの開催、動物虐待事例の告発、小中学生を対象としたいのちの授業「いのち輝くこどもMIRAIプロジェクト」の実施などです。


犯罪であることを知らずに動物の赤ちゃんを山や川に捨ててしまう人もいますし、動物虐待を目撃しても通報をためらってしまう人はまだまだ多いと思います。動物の遺棄や虐待が重い犯罪であることが啓発活動を通じて少しずつ広まることで社会全体が変わっていくと信じています。


代表理事である私が、俳優としての活動により多くの方に顔や名前を知っていただいていることは、啓発活動を行う上でEvaの強みになっていると感じています。


法改正を意義あるものに

(杉本)2021年1月に大阪府で発生した飼い猫に大やけどを負わせたという虐待事件について、Evaは大阪地検に告発状を提出しました。その時点で事件は検察官に送致されていましたが、被疑者がやけどを負った猫を動物病院に連れていったという事情が考慮されて不起訴になる可能性がありました。動物愛護管理法の改正により、動物殺傷罪の法定刑はそれまでの「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に引き上げられました。それにもかかわらず、これだけの重大な虐待事件が不起訴になるのでは法改正の意義が失われかねないと考え、不起訴になった場合に検察審査会に審査申し立てをするために告発を行ったのです。この件は実際に不起訴となったため、Evaは審査申し立てを行い、これに対し起訴を相当とする旨の議決がされました。議決を受け起訴された結果、罰金10万円の略式命令となりました。これらの手続の過程はEvaの活動内容とともに全てウェブサイト上で報告しています。私たちの立場から見ると刑があまりに軽いという気持ちはありますが、それでもこうして手続の過程を一つ一つチェックし発信していくことで、動物虐待に対する社会の意識を変えていくことが大切だと感じています。


動物を守るため弁護士にできること

(佐藤)私はもともと動物愛護の活動に関心があり、修習生時代から殺処分の現場の視察やパネル展の企画などを個人的に行っていました。弁護士登録後は、動物虐待案件の告発の代理人を務めるほか、動物愛護団体が動物関係の法改正に関する意見書等を公表する際のサポートや改正法の勉強会の講師等をしています。


Evaの理事に就任してからも、例えば、ペットビジネスの規制強化の態様や、その際に営業の自由に対する公共の福祉による制約をどのように考えるべきかとの視点、動物虐待事案の厳罰化のために刑事手続の中でとるべき手段などについて、動物愛護団体や国会議員に法的アドバイスをしています。


この分野に関心を持つ弁護士は以前と比較して増えている印象がありますが、今後さらに増えてほしいと思います。


(杉本)私は社会の中で一番の弱者が動物だと思っています。動物を守るため、また動物を守るために人生を懸けて活動している人たちのため、弁護士の皆さんの力をぜひ貸していただきたいと思います。



日弁連委員会めぐり113
弁護士業務妨害対策委員会

日弁連は、弁護士業務妨害(以下「業務妨害」)の対策に力を入れています。今回は、弁護士会が行う業務妨害事案の解決に関する諸活動の援助や指導を担う弁護士業務妨害対策委員会(以下「委員会」)の湊信明委員長(東京)、森川紀代副委員長(第一東京)、関口和正副委員長(埼玉)、宮嵜文恵副委員長(群馬)、恒川元志副委員長(福岡県)にお話を伺いました。

(広報室 田中和人)


妨害態様の多様化・巧妙化

デジタル化の進展等の社会変化に伴い、業務妨害の態様も多様化・巧妙化が進んでいます。同時に委員会への報告事例件数も増大していて、中でもインターネット上の誹謗中傷等の事案が多く寄せられています。また、弁護士名義の冒用といった、会員本人が全く関係しないなりすまし事案も報告されています。


業務妨害に関する啓発と情報提供

前列右から湊委員長、宮嵜副委員長、後列右から恒川副委員長、関口副委員長支援要請を難しくする要因として、「弁護士だから」、「自分がミスをしたから」という意識により一人だけで対処しようとしたり、周囲への相談等をためらったりということがあります。しかし、一人で抱え込まず、ためらわずに早い段階で支援要請をすることが大切です。


委員会では、会員への情報提供や啓発のため、収集した情報を分析して対策のノウハウをまとめた「弁護士業務妨害対策マニュアル(五訂版)」、「インターネットにおける弁護士業務妨害 現状と対策(第二版)」(いずれも会内資料)などの対応マニュアルを作成しており、今後も改訂していく予定です。日弁連会員専用サイトに掲載していますので、ご活用ください。


セーフティネットの整備

弁護士会の業務妨害対策は、会員のセーフティネットの役割を担います。業務妨害事案が埋もれることなく支援要請につながるよう、委員会では各地の支援窓口が十分に機能するための体制整備に取り組んでいます。昨年度は初めて、弁護士会の委員長が集まる全国会議を開催したほか、今年度は日弁連と弁護士会の連携を図るべく、全国担当者メーリングリストを開設するとともに、2月には第2回全国会議を予定しています。


また、業務妨害事案は時に重大な凶行につながります。警察との連携は実効的な対策の一つであり、その強化にも力を入れています。


何かあれば躊躇せず相談を

弁護士は時に孤独になることがあります。しかし、会員の皆さんに寄り添い、守るための組織があります。不安を感じたときは遠慮なく、弁護士会の担当事務局等に相談してください。支援要請に至らなくとも、早期に助言を受けることで深刻化を防ぐことができます。業務妨害では事務職員も被害者になり得ることも忘れないでください。


現実に起こった痛ましい事件の教訓を会員全体で受け継ぎ、業務妨害を根絶するため、委員会は今後も対策に取り組んでいきます。



ブックセンターベストセラー (2021年11月・手帳は除く)
協力:弁護士会館ブックセンター


順位 書名 著者名・編集者名 出版社名・発行元
1

訟廷日誌 合冊 2022 付・訟廷便覧

大阪弁護士協同組合出版委員会/編集 全国弁護士協同組合連合会
2

模範六法 2022 令和4年版

判例六法編修委員会/編 三省堂
3

訟廷日誌 分冊 2022 付・訟廷便覧

大阪弁護士協同組合出版委員会/編集 全国弁護士協同組合連合会
4 携帯実務六法 2021年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム/編 東京都弁護士協同組合
5

即解330問 婚姻費用・養育費の算定実務

松本哲泓/著 新日本法規出版
6

遺言執行者の職務と遺言執行の要否

片岡 武/著 日本加除出版
7

有斐閣判例六法Professional 令和4年版

長谷部恭男、佐伯仁志、酒巻 匡、大村敦志/編集代表 有斐閣
8

若手弁護士・パラリーガル必携 委任状書式百選

第一東京弁護士会若手会員委員会委任状研究部会/編集 新日本法規出版
9

弁護士会照会制度〔第6版〕

東京弁護士会調査室/編集 商事法務
10 家庭裁判所における監護者指定・保全の実務 片岡 武、村松多香子、萱間友道、馬場絵理子/著 日本加除出版



日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング 2021年11月~12月

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順位 講座名 時間
1 遺言・相続全国一斉相談会 事前研修~相続法改正を踏まえて~ 98分
2 2019年12月改定版標準算定方式養育費・婚姻費用算定の実務(基礎と応用への展開) 137分
3 改訂「社外取締役ガイドライン」の解説~会社法改正と社会変動への対応~ 114分
4 死亡逸失利益の算定方法 85分
5 はじめての障害年金法律相談~弁護士が知っておくべき基礎知識~ 91分
6 コーポレート・ガバナンスに関わる弁護士のための連続講座(中級編)~社外役員、企業内弁護士等が押さえておくべきポイント~第1回「昨今のコーポレート・ガバナンスの動向と独立社外取締役の役割」 88分
7 できる!インターネット被害対応2020-入門編- 113分
8 多角的に性犯罪弁護の現在地を知る

211分

9 遺言書作成におけるトラブル予防と遺言執行トラブル対応 120分
10 LAC制度の概要 12分

お問い合わせ先:日弁連業務部業務第三課(TEL:03-3580-9927)