日弁連新聞 第546号

第70回定期総会
「宣言・決議の件」など全議案を可決
6月14日 弁護士会館


2019年度予算が議決されたほか、司法修習生の修習期間中に給与及び修習給付金の支給を受けられなかった会員に対する給付金に関する規程(会規第104号)中一部改正などが可決され、2つの宣言・決議が採択された。
来年の第71回定期総会は東京都で開催することを決定した。

 

決算報告承認・予算議決

2018年度の一般会計決算は、収入57億3958万円および前年度からの繰越金44億425万円に対し、54億3200万円を支出し、次年度への繰越金は47億1183万円となったことが報告され、賛成多数で承認された。


546_1.jpg 2019年度の一般会計予算は、事業活動収入58億5010万円に対し、事業活動支出79億8755万円(いわゆる谷間世代の会員を対象とする給付金に充てるための日弁連重要課題特別会計繰入支出20億円を含む)、予備費1億円などを計上し、22億5345万円の赤字予算となっている。委員会費支出に関連する質疑や意見などが出されたが、採決の結果、賛成多数で可決された。



司法修習生の修習期間中に給与及び修習給付金の支給を受けられなかった会員に対する給付金に関する規程(会規第104号)中一部改正を可決

3月1日開催の臨時総会で可決された標記規程について、臨時総会の附帯決議を受け、給付金の申請機会を現行の3回から5回に変更し、現行の申請期間内では受給要件を満たすことができない会員の幅広い救済を図るもの。附帯決議の趣旨に沿った規程の改正であり賛成するなどの意見が出され、採決の結果、賛成多数で可決された。



「グローバル化・国際化の中で求められる法的サービスの拡充・アクセス向上を更に積極的に推進する宣言」を採択

2016年2月に策定した「国際戦略(ミッション・ステートメント)」で掲げた基本目標に沿い、外国人関連案件に対する法的サービスの拡充・アクセス向上などの諸取組を強化し、グローバル化・国際化の中で、国内外で人権擁護や法の支配の実現を追求し、求められる法的サービスの拡充・アクセスの向上を更に積極的に推進することを宣言するもの。討論では、現に中小企業の海外展開支援に携わる立場からの賛成意見などが出され、採決の結果、賛成多数で可決された。



「少年法の適用年齢引下げに反対し、諸団体等と連携してこれに取り組む決議」を採択

法務省の法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会で検討されている少年法の適用年齢の18歳未満への引下げについて、現行少年法の手続や保護処分が有効に機能していること等から改めて反対するとともに、子どもの教育、福祉、医療、少年司法、立ち直り支援などに携わる諸団体や有識者と連携し、少年法の適用年齢引下げに反対する世論が高まるよう一層尽力し、少年法の適用年齢引下げに反対する取組を推し進めることを決議するもの。採決の結果、賛成多数で可決された。



報告
第28会期国連犯罪防止刑事司法委員会(コミッション)
京都コングレスに向けて

5月20日〜24日 オーストリア・ウィーン

2020年4月に京都で開催される第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)まで、残すところ約10か月となった。 京都コングレスに向けた実務的な議論の場であるコミッションがウィーンで開かれた。


コミッションでは、全体会議で政府間の議論が行われたほか、各国政府、国際機関、NGO等の関係者によりさまざまなテーマのサイドイベントが行われた。日弁連は「犯罪防止・刑事司法における市民社会の役割〜京都コングレスに向けて〜」と題するサイドイベントを開催し、日弁連の取り組みについて報告した。当日は、国連薬物犯罪事務所のNGO担当者や犯罪防止刑事司法に関するNGO連合の代表者などもスピーカーに加わり、予想を超える多数の参加者を得て、日弁連の意図を十分に伝える場となった。

546_2.jpg 最終日の全体会議でも意見表明を行い、京都コングレスへの参加を改めて呼びかけた。

京都コングレスの全体テーマは「2030アジェンダの達成に向けた犯罪防止、刑事司法及び法の支配の推進」であり、いわゆるSDGsの実現に向けた広範なテーマとなる。

京都コングレスでは、全体会議での議論に加え、さまざまなテーマでサイドイベントの開催が予定されている。日弁連は、サイドイベントの企画・検討を行うほか、コングレスとは別にシンポジウムを主催することも検討している。さらに2019年4月18日には「第14回国連犯罪防止刑事司法会議における京都宣言に含めるべき事項に関する意見書」を公表するなど、京都コングレスに向けた取り組みを進めている。

今後はサイドイベント等の企画内容をさらに充実させ、会員の皆さまに京都コングレスへの参加を呼びかける予定である。
 


 (2020年コングレス日本会議対応ワーキンググループ  座長 田邊 護)

 

 

裁判員制度10周年記念シンポジウム
裁判員制度のこれまで、そしてこれから
5月21日 弁護士会館

裁判員制度施行10周年を迎え、法曹三者の共催で記念シンポジウムが開催された。
山下貴司法務大臣、今崎幸彦最高裁事務総長、菊地会長、堺徹次長検事による主催者挨拶に続き、基調講演とパネルディスカッションが行われた。

 

基調講演 裁判員制度と刑事司法

―二人三脚10年の歩み

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裁判員制度の創設に携わった井上正仁氏(法務省特別顧問/東京大学名誉教授)が、裁判員制度の誕生に至る道程、制度の導入と刑事司法制度の改革、制度の受容・定着と刑事司法改革の進展などについて、最高裁の報告書・調査結果に言及しつつ講演を行った。



パネルディスカッション

裁判員制度のこれまでの状況とこれからの課題

川出敏裕教授(東京大学大学院法学政治学研究科)が司会進行を務め、裁判員経験者2人が市民の立場から、法曹三者がそれぞれの立場から発言した。


より多くの市民が参加するための取り組みについて、裁判員経験者は「参加する個人に任せるだけでなく、裁判所等からの働きかけがあると、参加の意義が企業等により伝わるのではないか」「裁判員としての参加にプラスイメージを持つことが大事であり、経験者の声を積極的に伝えていくことが重要である」などの意見を述べた。


伊藤雅人東京地裁刑事部所長代行は、学校・企業などへの裁判官による出前講義や広報活動を実施していることを報告し、引き続き地道な活動にも力を入れ、経験者の96%が良い経験だったとしている裁判員の意義を伝えたいと語った。和田澄男東京地検公判部長は、今後も積極的な広報活動を実施し、分かりやすい主張立証を行って審理期間の短縮に努め、より多くの人に参加してもらえるようにしたいと述べた。宮村啓太会員(第二東京)は、法廷で説得する技術を身に付けるなどして、弁護活動をさらに充実させていきたいと述べた。その上で、多様な知識・経験・常識を反映させたより良い刑事裁判の実現に向けて、広報や法教育などの取り組みを継続する必要があると訴えた。



「民事信託に関する問合せ窓口」開設期間延長


2018年7月から2019年6月までの期間を予定して日弁連信託センター(以下「センター」)が開設していた「民事信託に関する問合せ窓口」の開設期間が2020年6月まで延長された。


この問合せ窓口は、まだなじみが薄い民事信託に関し、会員に対する情報提供の一環として開設されたものである。信託の仕組みに関する疑問、信託法の解釈、信託スキームの適否、民事信託に対する金融機関の実務的な対応などの民事信託に関する問い合わせにセンターの委員・幹事が回答している。これまで全国の会員から、信託法の解釈問題、具体的な信託スキームの相談、信託事務処理の方法などの質問が寄せられている。


センターは、利用されるようになってまだ間もない民事信託に関する正しい情報を会員に提供し、適切なアドバイスをすることによって、民事信託が正しく利用されるようになることを目指している。


民事信託の利用は、今後ますます増えると予想される。民事信託の健全な発展のため、センターとして、これからも会員に対する情報提供を続けていく予定である。


 (日弁連信託センター  センター長 伊庭 潔)


◇    ◇


*問合せ窓口を利用する際の注意事項等については日弁連ウェブサイト内会員専用ページ(HOME≫会務情報≫民事信託について≫民事信託に関する問合せ窓口)をご覧ください。

 


院内学習会
死刑制度は国益にかなうのか
外交関係における死刑の影響を考える
6月4日 衆議院第一議員会館


死刑廃止の外交戦略を立てたオーストラリアからジュリアン・マクマーン氏(オーストラリア弁護士)を招き、国際的な観点から死刑制度の問題点について考えるため、院内学習会を開催した。学習会には約100人が出席した(うち国会議員本人出席7人、代理出席9人)。


海外で死刑に直面しているオーストラリア人の弁護活動を行ってきたマクマーン氏が、「オーストラリアからみた死刑」と題する講演をした。オーストラリアでは、1967年の死刑執行を最後に各州で死刑が廃止され、2010年には死刑廃止についての連邦法が成立した。オーストラリアは、麻薬密輸によりシンガポールで2005年に1人の死刑執行を、インドネシアで2015年に2人の死刑執行を経験した。いずれもオーストラリア以外の国にルーツを有するオーストラリア人であった。死刑囚の出自や更生していく様子をメディアが取り上げたことで、死刑廃止に関する世論が高まった。自国民の死刑執行に対してのみ異論を述べるのは偽善的で人種差別的ではないかとの問題意識を背景に、全世界の全ての死刑に反対することを国の基本方針としたと説明した。

546_5.jpeg 死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部の小池振一郎副本部長(第二東京)は、日本の死刑制度が壁となり、自衛隊とオーストラリア軍の「訪問部隊地位協定」の締結交渉が停滞していること、日本と犯罪人引渡条約を締結する国が韓国とアメリカの2か国にとどまっていることに言及し、死刑制度が外交関係に及ぼす影響等について基調報告を行った。

出席した国会議員からは、「世論の高まりを待つのではなく、政治家が決断して世論を動かしていく問題である」「被害者感情に寄り添いながら、人権や犯罪抑止など多様な面から制度に関する議論を深める必要がある」などの意見が寄せられた。





日弁連短信
就任して4か月が経ちました


546_6.jpg事務次長に就任して4か月が経ちました(原稿執筆時)。元々調査室の嘱託をしていたので日弁連のことはある程度分かっているつもりでしたが、それは全体の一部にすぎず、いろいろなことに気付かされることが少なくありません。あたかも脳のニューロンがどんどん繋がっていくような日々を過ごしています。

主に担当しているのは、人権、国際人権、人権擁護大会、貧困問題、家事法制などであり、今まで直接携わったことがほとんどない分野です。委員会に出席して議論を聞き、意見書や報告書を読む度に委員の方々の誇りや情熱を感ぜずにはいられません。ただ、日弁連の意見について広く国民や政府の理解を得て、それを実現しなければなりませんので、事務次長の職責上、そのような趣旨での調整をせざるを得ないことをご理解ください。

また委員会活動の要として担当職員の存在があります。委員会活動が滞りなく運営できるのも、担当職員が、運営の段取りや会議室の予約調整(会議室不足により結構大変な業務になっています)、資料の作成(委員会数が多いことから印刷機の順番待ちなど時間がかかります)などの内部的なことだけでなく、関係省庁や関係諸団体、弁護士会との対外的な連絡調整などの職務にも身を粉にして従事しているからこそです。日弁連が機能しているのは職員の貢献によるところが大きいことについてもご認識ください。

さて、本年10月4日、第62回人権擁護大会を徳島市で開催します。大会前日には「取調べ立会いが刑事司法を変える~弁護人の援助を受ける権利の確立を~」(第1分科会)、「今こそ、国際水準の人権保障システムを日本に!~個人通報制度と国内人権機関の実現を目指して~」(第2分科会)、「えん罪被害救済へ向けて~今こそ再審法の改正を~」(第3分科会)というテーマで3つのシンポジウムを行います。

いずれも人権擁護の点から喫緊の課題であり、日弁連が力を入れているテーマです。人権擁護大会にぜひともご参加の上、各テーマについて問題の所在を共有し、共に考えていただきたいと思います。


◇    ◇


(事務次長 永塚良知)


旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた方に対する
一時金の支給始まる

4月24日、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下「補償法」)が成立し、即日公布・施行された。旧優生保護法に基づき優生手術等を受けた方に対し、請求により一時金320万円が支給される。


日弁連は補償法の成立にあたり、「本法律が適切に運用されるよう見守るとともに、真の被害回復の実現に向けて、引き続き、被害者を支援していく」との会長声明を公表した。


厚生労働省の調査によれば、旧優生保護法に基づき行われた優生手術の件数は、約2万5000件である。既に補償法に基づく一時金の請求や支給認定が始まっており、今後、一時金の請求手続や国家賠償請求に関する相談が弁護士に寄せられることが予想される。


日弁連は、eラーニング講座「旧優生保護法に基づく被害に関する相談対応について」を制作した。これまでの旧優生保護法をめぐる経緯や補償法の概要等を説明するほか、具体的なQ&Aを交えながら相談対応の留意点を解説している。


会員におかれては、広く市民に向けて一時金の制度の周知と請求手続の相談支援をお願いしたい。単に都道府県の窓口を紹介するだけでなく、必要に応じて法律相談や受任事件として対応することも検討していただきたい。


◇    ◇


*請求手続や都道府県の受付・相談窓口は、厚生労働省のウェブサイト(「旧優生保護法による優生手術等を受けた方へ」)でご覧いただけます。
*eラーニング講座「旧優生保護法に基づく被害に関する相談対応について」は、日弁連ウェブサイト内会員専用ページの日弁連総合研修サイトでご覧いただけます。



再審における適切な証拠開示を目指して
「再審における証拠開示の法制化を求める意見書」を公表

arrow_blue_1.gif 再審における証拠開示の法制化を求める意見書


日弁連は5月10日、「再審における証拠開示の法制化を求める意見書」を取りまとめ、21日に公表した。


有罪の確定判決を受けた者が裁判のやり直しを求める再審手続では、近年、捜査機関が収集していた無罪方向の証拠が再審請求段階で初めて開示されたことによって、再審開始・再審無罪となる事件が相次いでいる。


現行刑事訴訟法の再審に関する条文はわずか19か条しかなく、証拠開示についての明文規定もないことから、証拠開示の実現は裁判所の裁量に委ねられ、その運用には個々の裁判所による顕著な格差が生じている。検察官は再審手続における証拠開示には極めて消極的であり、ときには「不存在」としていた証拠の存在が後に発覚するケースもある。このような弊害から立法の必要性が指摘される中、2016年の刑事訴訟法改正では再審における証拠開示規定の創設こそ見送られたが、改正法の附則9条3項では速やかに検討を行うべき項目の筆頭に「再審請求審における証拠の開示」が挙げられた。


日弁連は2014年5月、人権擁護委員会に「再審における証拠開示に関する特別部会」を設置し、多数の再審事件弁護団を対象に証拠開示の実情調査を行い分析した。その結果を「再審における証拠開示に関する実例集」に結実させるとともに、その豊富な実例をもとに、具体的な立法提言である「再審における証拠開示 制度要綱案」を策定した。


今後は、これらの実例集と制度要綱案を内容とする本意見書を携え、再審における証拠開示の法制化の実現に向けてさらなる活動を進める予定である。


(人権擁護委員会再審における証拠開示に関する特別部会 部会長 鴨志田祐美)


*「再審における証拠開示の法制化を求める意見書」は日弁連ウェブサイトでご覧いただけます。



憲法記念行事シンポジウム
あなたは憲法の意味を知っていますか
憲法教育の過去と未来
5月25日 弁護士会館

 

今、憲法の意味が問われている。憲法が社会においてどのようなものとして教えられ、どのような役割を果たしてきたのかを振り返ることで、憲法の現在を見つめ直すとともに、今後どのように憲法が教えられていくべきかを考えるためシンポジウムを開催した。シンポジウムには約550人が参加した。(共催:東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会)

 

基調講演 〜歴史学者の立場から

加藤陽子教授(東京大学文学部)は歴史学者の立場から、「今、憲法を歴史から考える」と題する基調講演を行った。改元という歴史的な瞬間に立ち会う中で、日本国憲法1条が天皇を主語としながら後段で国民主権を明示する複雑な構造になっていることに改めて気付かされたことなど、憲法と天皇の関係について言及した。過去の人間が社会の中で積み重ねてきた貴重なデータの集積である歴史を語ることを通じて、今、憲法が置かれている状況に対する危機感を表現していきたいと語った。



パネルディスカッション 〜憲法教育について考える

佐藤学教授(学習院大学文学部特任教授/東京大学名誉教授)は教育学者の立場から、憲法は公教育の基盤であり、憲法を実現することが公教育の中心的な目的であるにもかかわらず、現行の憲法教育は「社会科・公民科」の教育内容の一部に矮小化されてしまっていると指摘し、子どもたちは「国民主権」の「国民」が自分のことだということも認識できていないと述べた。


石川健治教授(東京大学法学部)は憲法学者の立場から、憲法教育では、三大原理をあたかも「憲法の基本セット」のように漫然と教えるのではなく、デモクラシーに歯止めをかけるために憲法をつくるという立憲主義の基本的な考え方を事実に基づいて教えることこそが重要だと強調した。



会社法改正要綱に関する研修会
要綱から読み解く会社法改正
5月27日 弁護士会館


本年2月14日の法制審議会総会で会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱(以下「本要綱」)が採択された。本要綱を踏まえた改正法案は、今秋の臨時国会への提出が見込まれている。本要綱の概要や実務上の留意点についての研修会を開催し、会員や企業関係者など200人以上が出席した。


546_10.jpg 法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会(以下「法制審部会」)の部会長を務めた神田秀樹教授(東京大学名誉教授/学習院大学大学院法務研究科教授)が、本要綱が答申されるまでの経緯を説明し、本要綱の概要について、①株主総会資料の電子提供制度や株主提案の制限をはじめとする「株主総会に関する規律の見直し」、②社外取締役の活用、取締役の報酬等に関する開示や手続、補償契約、役員賠償責任保険(D&O保険)などの「取締役等に関する規律の見直し」、③その他の事項として、社債管理補助者制度、株式交付制度などを内容とする3部構成であると述べた。株主総会資料の電子提供制度に関しては、上場会社には電子提供制度の採用が義務付けられ、改正法の施行日に電子提供制度を採用する旨の定款変更決議がされたものとみなされること、電子提供措置の開始日が株主総会の日の3週間前の日とされることや、株主の書面交付請求権を定款によっても排除できないことなどの詳細を説明した。さらに、上場会社等に社外取締役の設置を義務付ける規定、社外取締役に業務の執行を委託することができる規定の新設について、法制審部会における議論状況などを交え説明した。

法制審部会の委員を務めた沖隆一会員(東京)は、株主総会資料の電子提供制度は会社側であらかじめ準備が必要になると改正後の実務対応について注意を促した。法制審部会の幹事を務めた梅野晴一郎会員(第二東京)は、社外取締役設置の義務付けについて、社外取締役が欠けた場合の決議の効力や補欠社外取締役の選任など実務上の問題点を指摘し解説した。

 


行政不服審査法シンポジウム
行政不服審査会の取組と諸課題、5年後見直しに向けて
5月23日 弁護士会館


簡易迅速かつ公正な手続を目指し、審理員による審理手続や行政不服審査会(以下「審査会」)等への諮問手続などを内容とする改正行政不服審査法の施行から3年が経った。審査会の取り組み・実践について情報を共有し、施行から5年後の見直しに向けた課題について検討した。

 

行政訴訟センターの水野泰孝事務局長(東京)は、本年4月に実施した審査会の実施状況に関する都道府県へのアンケート結果について報告した。調査審議手続における口頭意見陳述(法75条)が16都道府県での実施にとどまること等を説明し、請求件数と意見陳述の実施件数との乖離が運用見直しの糸口になり得ると説明した。


湯川二朗副委員長(京都)は、不服申立てが少ないのは市民に制度が周知されていないことが一因であるとし、施行から5年後に見直すべき課題の一つとして、総務省や各地方公共団体に行政不服審査案内所を設置することを挙げた。


パネルディスカッションでは、審査会委員経験者が審査会の充実や活性化に向けた議論を展開した。髙橋滋教授(法政大学法学部/東京都行政不服審査会会長)は、行政不服審査手続は運用が重要であると述べ、代理人弁護士が請求すれば事案が整理され説得的な内容になる、東京では本人請求が多いので、請求に弁護士が関わるよう運用を見直すべきと提言した。


水地啓子会員(神奈川県/神奈川県行政不服審査会委員)は、審査基準・処分基準に該当しないという理由だけで内容の詳細を検討していない事案があることから、法令の趣旨に立ち返って審査を行い、必要なことは処分庁にフィードバックして、行政全体であるべき方向性を模索することが肝要であると述べた。


中川元会員(大阪/元大阪府行政不服審査会委員)は、審理の迅速性を維持するためには時間を要する事案とそうでない事案で取り扱いを変えるような工夫も重要だが、これには限界があるとして、人的資源だけでなくさまざまな資源を投入することを念頭に置くべきと説いた。



シンポジウム
来週施行!事例で学ぶ改正消費者契約法
6月7日 弁護士会館


消費者契約法は、2016年に引き続き2018年にも改正され、改正法は本年6月15日から施行された。日弁連は、改正法の施行を目前に控え、具体的な事例をもとに活用法を検討するシンポジウムを開催した。

 

取り消し対象類型の追加

546_12.jpg 消費者庁消費者制度課で任期付公務員として法改正に携わった消費者問題対策委員会の増田朋記委員(京都)が、改正法の概要を解説した。消費者契約法は、事業者が消費者契約の締結を勧誘するにあたり、消費者が困惑したことによりした申し込みまたは承諾を取り消すことができると規定しているが(法4条3項)、改正により、①願望の実現への不安をあおる告知(同項3号)、②判断力低下による不安をあおる告知(同項5号)、③霊感等の知見によって不安をあおる告知(同項6号)の3類型と、④恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用(同項4号)、⑤契約前の債務内容の実施(同項7号)、⑥契約前に実施した行為の損失補償請求(同項8号)の6類型が困惑類型に加えられたことについて事例を交えて説明した。

その他、不利益事実の不告知について故意要件に重過失が追加されたこと、不当な契約条項の無効に対象類型が追加されたこと、事業者の努力義務が追加されたことにも言及した。



具体的事例の検討

後藤巻則教授(早稲田大学大学院法務研究科)、石田幸枝氏(公益社団法人全国消費生活相談員協会理事)らによるパネルディスカッションでは、3つの具体的事例を取り上げ、改正法がどのように適用されるかを検討した。後藤教授は、困惑類型が加えられた改正を評価する一方で、つけ込み型不当勧誘の取消権の創設も必要であると指摘した。石田氏は、相談員が改正法を積極的に活用できるよう周知していきたいと語った。



より良い改正に向けて

大高友一幹事(第一東京)が、第3次改正に向けて、これまでの改正で積み残された問題について、その理由を冷静に分析し、より良い改正の方向性を消費者や実務家の立場から提言したいと意気込みを語った。



シンポジウム
ニッポンの身体拘束
それ、恣意的拘禁ではありませんか?
6月4日 弁護士会館


国連恣意的拘禁に関する作業部会(以下「WGAD」)は、その拘禁が恣意的なものであるかについて個人の通報に基づき審査している。WGADは2018年、日本国内の3件の事案について恣意的な拘禁であるとの意見書を採択した。日本における拘禁の実態を知り、本制度をどう活用していくべきかを考えるためシンポジウムを開催した。


WGADの目的と役割

ホン・ソンピル氏(WGAD委員・元部会長)は基調講演で、WGADでは「拘禁」よりも広い意味で「自由の剥奪」という言葉を使用していると述べ、恣意的な自由剥奪を①およそ法的根拠に基づかない場合のほか、②表現や集会の自由の行使に起因する場合、③公正な裁判を受ける権利に関わる場合、④移民の場合、⑤国籍・宗教・政治的意見・障害その他を理由とする差別に起因する場合の5つに類型化していると述べた。通報事案が恣意的な自由剥奪であると判断した場合、WGADはその旨の意見書を採択すると説明した。



あらゆる分野の拘禁について本制度の活用を

精神科病院における強制入院、未決拘禁を巡る諸問題・無期懲役受刑者の仮釈放の拒否・独居拘禁・刑の執行停止の厳格な運用、入管収容問題など、日本における拘禁の実情が報告された。


パネルディスカッションでは、WGADが恣意的な自由剥奪だと判断した事案の当事者である山城博治氏(沖縄平和運動センター議長)が登壇した。山城氏は、未決拘禁中は常に取調べの恐怖から逃れることができず、つらく心細い日々を過ごしたが、本制度の存在を知り非常に勇気づけられたと語った。ほかのパネリストからは、あらゆる分野で本制度を積極的に活用することが人権問題解決の糸口になるとの趣旨の発言が相次いだ。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.143

草野耕一 最高裁判事を訪ねて


2月13日付で就任した草野耕一最高裁判事を訪ね、現在の執務状況や今後の抱負等を伺いました。

(広報室嘱託 本多基記)


社会の役に立ちたいと思って志した弁護士

546_14.jpg 高校生の頃は、数学が得意で好きでした。大学3年の頃、論理的に思考し表現することが得意であるという自分の能力をいかして、社会の役に立ちたいという思いから、弁護士になろうと心に決めました。弁護士は法律を用いて論理的な仕事ができる職業だと考えたのです。

企業法務の世界で過ごした弁護士時代

弁護士登録後は、都内の法律事務所で企業法務を中心的に扱う弁護士として、M&Aの案件に多く携わりました。弁護士になった当初は、依頼者の利益のために最善を尽くすことを第一に業務に取り組んでいました。経験を重ねるうちに、より広く社会全体の利益も考えて業務にあたるようになり、依頼者のためだけでなく社会的にも意味のある事案の解決ができました。交渉相手は優秀な弁護士やインベストメント・バンカーでしたが、相手方とも信頼関係を築いて業務を進めることで、より良い解決につながったと思います。


1日10件から20件の事件処理

判事に就任して約3か月(取材当時)が経ちますが、現在は1日に10件から20件程度の事件記録を検討し、評議に加わっています。評議の効率化のため、あらかじめ自分の意見をまとめた上で、各判事に配っています。事件記録の検討にあたっては調査官が作成したメモを参考にしています。判事に就任して、最高裁に係属している多種多様な事件を検討・整理する調査官の果たす役割の大きさを再認識しました。


豊かで公正で寛容な社会を形成するために

最高裁の判決は、当該事案を超えて社会に影響を与えることがあります。労働契約法などは最高裁判例の集積ですし、昨年改正された民法にしても、これまでの判例での議論が条文に反映されています。判決は立法にも影響するので、判事は極めて重大な責任を負っていると感じます。


判事として、国民が世界に誇れるような、人権に手厚い法制度の構築に力を尽くしたいと考えています。企業や経済分野との関係では、起業意欲にあふれた人たちが安心してリスクを取ることができ、たとえ失敗しても再挑戦できるような、豊かで公正で寛容な社会を形成するために役に立ちたいと思います。特に、私のバックグラウンドである企業法務の分野や、法と経済学の分野などでは、個別意見を述べることもいとわず、知見を生かした判決を書きたいと考えています。


「日々学び、日々反省し、以って向上し続ける」ことを信条としています。私が尊敬するオリバー・ウェンデル・ホームズ・ジュニア判事は90歳を超えても法律家として活躍しました。日本の判事には定年がありますが、日々学び、反省しながら、法律家として力を尽くしたいです。


読書・勉強から音楽まで多様な関心

昔から本を読むことが好きで、時間を見つけては歴史の本などさまざまなジャンルの本を読んでいます。勉強は今でも好きで、趣味といえるかもしれません。朝5時に起床し、勉強してから登庁するのが日課です。以前から数学の勉強は続けていますが、語学の勉強もしています。フランス語を学んだり、最近では改めて英語を学んだりしています。そのほか、自宅でエレキギターの練習もしています。


既存の枠組みにとらわれない弁護士活動を

事件記録を読んでいると、私だったらこの点も主張するだろうと思うことがあります。民事訴訟では弁論主義の下、当事者が主張した内容に基づき審理が進み、判決がなされます。的確に主張立証ができないと、それを前提に裁判が行われてしまいますので、弁護士の役割は非常に重要だと感じています。


弁護士の活動領域は広がっています。特に若手の弁護士に対しては、活躍できる場を自ら限定しないで活動することを期待します。例えば通商、宇宙、エネルギーの分野などには法的問題が山積しており、立法に関与することも含めて活躍できる可能性が大いにあります。起業家が「ビジネスオポチュニティ」を探すように、「リーガルオポチュニティ」を探し出し活躍してほしいと思います。


日弁連・弁護士会はさらなる広報を

弁護士の仕事は、社会のあらゆる問題を法律に基づいて解決に繋げることができる、社会にとって不可欠な仕事です。日弁連や弁護士会には、弁護士の仕事が社会にとっていかに有益かをもっと多くの人に伝えられるよう積極的な広報活動をしてほしいと思います。


草野耕一最高裁判事のプロフィール


1978年 東京大学法学部卒業
1978年 司法修習生
1980年 弁護士名簿登録(第一東京弁護士会)
1986年 ハーバード大学修士(LL.M.)
1994年 株式会社小糸製作所監査役
1999年 楽天株式会社社外取締役
2004年 東京大学大学院法学政治学研究科ビジネスローセンター客員教授
2005年 京都大学大学院法学研究科講師
2007年 東京大学大学院法学政治学研究科客員教授
2013年 慶応義塾大学大学院法務研究科教授
2014年 ハーバード・ロー・スクール客員教授
2018年 東京大学博士(法学)
2019年 最高裁判所判事



第21回
弁護士業務改革シンポジウムのご案内

「伝統の都から未来を視る〜新たな弁護士業務の展開〜」をメインテーマに、11分科会と1セミナーを開催します。複数の分科会に参加いただきやすいように半日開催の分科会も設定しました。皆さま奮ってご参加ください。

(第21回弁護士業務改革シンポジウム運営委員会委員長 橋本賢二郎)


【日時】2019年9月7日(土)
 9時30分〜10時00分 全体会
10時15分〜13時15分 第1分科会〜第6分科会
14時00分〜17時00分 第4分科会〜第11分科会、セミナー(第4〜第6分科会は通しで開催)
17時15分〜17時45分 総括会
【会場】同志社大学今出川キャンパス(京都市上京区今出川通り烏丸東入)


10時15分〜13時15分

第1分科会法律事務所の事業承継について

第2分科会やっときた!もうすぐ実現、e裁判。次はAI考えよう。

第3分科会自動運転の普及と弁護士費用保険の拡大



10時15分〜13時15分(前半)・14時00分〜17時00分(後半)

第4分科会eスポーツの現状と法的課題

第5分科会行政手続における弁護士の関与業務の展開〜健康保健医療、税務、生活保護の現場で〜

第6分科会「事業承継」その先へ〜弁護士による事業承継の対応や承継後の事業の維持・発展に向けた弁護士の役割〜



14時00分〜17時00分

第7分科会 事務職員活用の新展開

第8分科会 真の企業競争力の強化に向けた企業内外の弁護士実務の在り方

第9分科会 公金債権管理における弁護士の関与と福祉的配慮

第10分科会 民事信託の実務的課題と弁護士業務

第11分科会 「おひとりさま」支援における弁護士の役割

セミナー 国際調停の最新潮流〜なぜ解決できるのか、京都で何ができるのか、世界で何が起こっているのか〜



*会員は7月31日までに申し込みをお願いします。詳細は、日弁連ウェブサイト内会員専用ページにてご覧ください(HOME≫イベント・研修情報≫2019年≫第21回弁護士業務改革シンポジウムのご案内)。



ブックセンターベストセラー
(2019年4月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 平成30年度重要判例解説 有斐閣
2 新注釈民法(6)物権(3) §§295~372 道垣内弘人 編/道垣内弘人・大村敦志・山本敬三 編集代表  有斐閣
3 一問一答 新しい相続法 堂薗幹一郎・野口宣大 編著 商事法務
4 最高裁に告ぐ 岡口基一 著 岩波書店
5 概説 改正相続法 堂薗幹一郎・神吉康二 編著 きんざい
6 法律事務職員研修「基礎講座」テキスト 2019年度 東京弁護士会
刑事弁護Beginners(ビギナーズ) ver.2.1[季刊刑事弁護増刊] 現代人文社
8 模範六法2019 平成31年版 判例六法編修委員会 編 三省堂
9 交通賠償のチェックポイント[実務の技法シリーズ4] 髙中正彦・加戸茂樹 編著 弘文堂
10 裁判官は劣化しているのか 岡口基一 著 羽鳥書店



日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング(連続講座編) 2018年10月〜2019年5月

サイトへ日弁連会員専用ページからアクセス

順位 講座名
1

成年後見実務(全5回)

2

2018年度ツアー研修 債権法改正(全4回)

3

交通事故の実務(全5回)

4

コーポレート・ガバナンス(基礎編)(全3回)

5 労働問題の実務対応(全5回)
6

離婚事件実務(全5回)

7 消費者問題(基本法編)(全3回)
8 知的財産(全3回)
9 事業承継の実務(全6回)
10 2013年度ツアー研修 相続分野(全4回)

お問い合わせ先 日弁連業務部業務第三課(TEL 03-3580-9927)