刑事施設における性同一性障がい者の取扱いに関する人権救済申立事件(勧告)
静岡刑務所長/東京拘置所長宛勧告
2010年11月9日
- 刑事施設における性同一性障がい者の取扱いに関する人権救済申立事件(勧告)(PDF形式・162KB)
性同一性障がいを有する申立人(収容以前に性同一性障がい(MtF)との診断を受け、名も女性名に変更していたが、性別適合手術前の者)が、 静岡刑務所、東京拘置所収容中に受けた処遇は申立人の性自認に反する処遇であり、かかる処遇を行うことは人権侵害であるとし、性同一性障がいに関する理解を深めるとともに、申立人に対しては性自認を尊重する処遇を行うよう両施設に勧告した事例。
執行後照会に対する回答
静岡刑務所長
<静岡刑務所長名回答・2011年6月21日>
1 カウンセリングの機会を与えるなど、性自認と選択可能な処遇と乖離によって生ずる苦痛を可能な限り緩和するための措置をとることについて
必要に応じ、鑑別技官によるカウンセリングを実施した。
2 女性被収容者に認められている着衣を認めること
認めていない。
3 調髪を行う場合、女性被収容者に認められている髪型の選択を認めること
認めていなかったが出所前5か月においては本人の意思をもって髪を伸ばすことを認めた。
4 入浴の立会い並びに本人が全裸となる身体及び着衣の検査は、女性職員が行い、男性職員が補助を行う場合も性同一性障がいを有する者の人権を侵害しないよう十分配慮すること、併せて、運動時の立会いについても、配置上可能な限り、女性職員が中心に行うこと
入浴の際は浴場前に衝立を設置し、本人が陰茎を有しており、また、本人に粗暴性があり、危険であることから、男性職員が対応していた。
5 性同一性障がいを有する者の苦痛緩和のために必要な医療的な措置について、その機会を保障するため、性同一性障がいに関して治療可能な医師による診察の機会を与えること
勧告後も医務診察を受付けていたものの、本人からの申出はなく、実施していない。
東京拘置所長
<東京拘置所長名回答・2013年2月25日>
本件勧告書については、平成22年11月9日に受領しているところ、当該人権救済申立事件の申立人であるXについては、平成21年3月5日に当所から静岡刑務所に既に移送しており、したがって同人に対する処遇について特段の措置は講じていない。