グローバル化・国際化の中で求められる法的サービスの拡充・アクセス向上を更に積極的に推進する宣言

 

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情報通信技術・運輸交通手段の革新的進化と経済の急速なグローバル化に伴い、情報は瞬時に世界を巡り、物品と資金は大量に国を越えて流通し、人や企業も国境を越えて頻繁に移動し活動している。


日本の在留外国人数及び外国人労働者数は急増している。新たな在留資格「特定技能」の創設に伴い、外国人労働者の就業と人材の多国籍化が大都市圏のみならず全国で飛躍的に拡大することが見込まれる。今後日本においては、在留する外国人の生活をめぐる多様な法的サービスの需要が増大することが予測される。


また、海外進出、海外取引先との輸出入、販売店・代理店取引及び生産委託等のいわゆるアウトバウンド事業に積極的に取り組む企業が規模を問わず全国各地に広がっている。一方、インバウンドの急速な拡大の下で企業の規模を問わず外国企業による対日進出が深化しており、これらの企業との取引や提携に関わる日本の中小企業も全国的に増加している。


以上のとおり、国際化の流れは大都市にとどまらず地方にも波及している。この国際化の中で求められる法的サービスの提供に関し、弁護士会及び弁護士はこれまで以上に国際化を求められることになる。それに応えるためには、当連合会が2016年2月18日に策定した「国際戦略(ミッション・ステートメント)」で掲げた基本目標に沿って、法的サービスを提供できる体制の強化を速やかに進めていく必要がある。


そこで、当連合会は、弁護士会等と連携・協働して、以下の諸取組を強化し、グローバル化・国際化の中で、国内外で人権擁護や法の支配の実現を追求し、求められる法的サービスの拡充・アクセスの向上を更に積極的に推進することをここに宣言する。


1 外国人関連案件に対する法的サービスの拡充・アクセス向上


外国人技能実習生や新たな在留資格による外国人労働者の増加に伴い、外国人労働者の権利を保護し、その救済を図るために、外国人技能実習制度の廃止を訴えながら外国人技能実習生の救済に当たってきたこれまでの取組を強め、新たな在留資格制度の適切な運用のために、制度改善や受入企業の法令遵守に向けた啓発・指導に取り組んでいく。


また、外国人労働者を含む在日外国人が、住居、職場、学校などの様々な生活の場面で差別を受けることなく地域社会で共生できるようにし、そこで直面する在留資格や家族関係の問題に弁護士が適切に法的サービスを提供できるようにするために、弁護士相互及び関係機関等との連携を促進し、また外国人関連案件を担う人材を全国規模で育成する。そして、国の支援により全国の地方自治体や国際交流協会等が設置・運営するワンストップ型の相談窓口(一元的相談窓口)及び日本司法支援センターとの連携を強め、多言語で質の高い法律相談を提供できる体制を全国で構築することにより、全国での法的サービスを拡充する。


さらに、適正な手続の下で家族の統合などの国際人権基準に適った外国人の在留が可能となるよう、国に対し出入国管理制度の改善を求める。


2 ビジネスと人権に関する取組の推進


国連が2011年に採択した「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護、尊重及び救済』枠組実施のために」(以下「指導原則」という。)を契機に、当連合会が、国際人権法規範や各国法規制の動向を踏まえて2015年1月7日に策定・公表した「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)」の内容を、日本企業に浸透させることで適切に事業活動がなされるよう取組を進めていく。指導原則に沿って政府が策定を予定しているビジネスと人権に関する国別行動計画の内容が充実し、効果的に実施されるよう、引き続き積極的に意見表明を行う。また、企業活動がもたらす国内外の人権侵害の被害者に対する実効的な救済へのアクセスのために、司法的及び非司法的なメカニズムのいずれもが拡充されるよう、今後も市民社会と協働して取組を継続する。


3 中小企業の国際化支援の促進


海外展開を進める中小企業への支援を全国各地で促進・普及するため、当連合会が実施する中小企業海外展開支援弁護士紹介制度について、実施弁護士会及び連携機関・利用登録機関を拡充し、中小企業の海外展開に対する法的支援を提供し得る弁護士人材を全国規模で育成するとともに、中小企業に対し弁護士による専門的な法的支援の必要性や効果的なアクセス方法に関する広報・啓発の推進に更に取り組む。また、海外展開先である諸外国の弁護士や弁護士会との協力・連携の可能性や、インバウンド投資対応を含めた中小企業の包括的支援策の検討を進め、中小企業の国際化支援の更なる発展を目指す。


4 国際仲裁・国際調停の振興


国際取引・国際投資に関わる中小企業を含む日本企業及び外国企業に向けて、日本を紛争解決地とする国際仲裁・調停等ADRの振興を図るため、政府、仲裁・ADR機関、公益社団法人日本仲裁人協会等の関連機関と連携して、審問施設の整備を支援するほか、仲裁法を始めとする関連法制の更なる整備を求め、人材育成、広報・啓発活動の取組を深化させる。


5 日本の法情報・法制度についての国際発信


在日外国人の法的サービスへのアクセスの向上、企業間の国際取引の円滑化や対日投資の促進のために、日本の法情報・法制度を英語を始めとする多言語で国際的に情報発信し、国内外で理解を深める取組を進める。また、法務省が実施している日本法令の外国語訳事業の推進と拡充をこれまで以上に支援するとともに、さらに幅広い法情報・法制度の発信等を政府に働きかける。


6 国際法務人材の育成


国際化の中で求められる法的ニーズに応え、国際社会に貢献するために、担い手となる弁護士の拡充と底上げに向けて、外国人関連案件、中小企業の海外展開案件及び国際仲裁・調停等の国際的案件に取り組む弁護士を育成・支援し、さらに、より中長期的な視野で国際分野に関心を持つ人材の裾野を拡大する取組を進める。また、国際分野で活躍できる人材を拡充するための支援制度を充実させ、その利用促進を図る。


7 弁護士会との連携・支援


全国的に展開が求められる法的サービスを拡充するために、弁護士会と連携し、弁護士会が当該地域における外国人や企業に対する法的サービスを拡充するための環境整備を支援するとともに、海外の法曹団体・弁護士と交流を持つ場合や中小企業の海外展開支援の推進を行う場合等に、効果的な支援を行えるよう、当連合会の体制を整備する。


以上のとおり宣言する。

 

 

2019年(令和元年)6月14日


日本弁護士連合会

 

 

提案理由

第1 本宣言の位置付け
―グローバル化・国際化の進展と国際戦略(ミッション・ステートメント)の具体化―

情報通信技術・運輸交通手段の革新的進化と経済の急速なグローバル化に伴い、日本では在留外国人や外国人労働者が急増し、日本の企業は、大企業のみならず中小企業*1も海外進出や国内外で国際取引を行っている。こうした社会の国際化の進展に伴い、当連合会の国際的な取組に関係する諸課題も多岐にわたり、かつ、継続的な対応を要するものとなっている。


こうした状況に鑑み、2016年2月18日、当連合会は国際活動における理念を明確化し、それに基づく基本目標及びそれを実現するための具体的な施策を展開するために「国際戦略(ミッション・ステートメント)」を策定し、公表した。


国際戦略では、冒頭で次のとおり述べている。


「当連合会は、日本における弁護士の強制加入団体として弁護士全体を代表する立場にあり、高度の自治とあらゆる権力からの独立性を有している。当連合会は、日本における弁護士が、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するという使命を有していることを踏まえ、法の支配の実現を目指し、また平和を希求してきた。当連合会は、人々の活動、そしてそれを支える経済がますますグローバル化し、それに伴い、法や法制度もますます国際化する中で、今後も、この使命を自覚し、これまでの歩みを基礎に、国際的な信頼を築き上げるための積極的な活動を行う。


また、当連合会は、グローバル化・国際化の中で、個々の会員が、上記使命に基づき、効果的に、公益活動を行うとともに活動領域を拡充できるよう、制度的な支援を行っていく。


具体的には、以下のものが含まれる。


国境を越えた弁護士活動の職業倫理についての提言・研修、弁護士の独立・法の支配・基本的人権の普遍的実現を目指した諸活動、外国(地域)弁護士会、国際法曹団体、国連等の国際機関との交流・連携、法的サービスの受益者である内外の法人・個人からの国際化の中で生ずる需要への対応、国際的な分野での法的サービス提供の拡充のための基盤強化の支援等。」

 

この冒頭の宣明に続き、国際戦略は国際活動を「1 公益、人権、法の支配の実現等に関わる活動」、「2 弁護士及び弁護士会の役割に関わる活動」、「3 社会における様々な法的ニーズに応える法的サービスを提供できる体制の強化のための活動」の3つに分けて、それぞれ基本目標を掲げている。本宣言は、この基本目標のうちとりわけ、「1 公益、人権、法の支配の実現等に関わる活動」の「(1)国際人権基準及び国際人権機構の強化発展に貢献し、国際人権基準に基づいて国内外における人権課題に関する活動や人権侵害に対する救済活動に取り組む。」、「3 社会における様々な法的ニーズに応える法的サービスを提供できる体制の強化のための活動」の「(1)法人(日本法人及び外国法人)・個人(外国人及び民族的少数者を含む)を問わず、国際化の中で求められる法的サービスに関する日本における弁護士及び司法制度へのアクセスを向上させる。」及び「(2)国際化の中で生ずる法的サービスに係る専門知識と経験を備えた弁護士層を養成し、拡大し、活動領域拡充の基盤強化のための支援を行う。」に関わるものである。


本宣言は、この国際戦略の理念及び基本目標に沿って、各活動における現在の状況を整理し、具体的な課題に対する当連合会の今後の活動の方向性を確認するものである。



第2 外国人関連案件に対する法的サービスの拡充・アクセス向上

1 在留外国人・外国人労働者の急増


日本を訪れる外国人数は年々増加し、2018年には年間3,119万1,856人となり、統計開始以来の最高記録を更新し、直近の10年間で約4倍にまで増えている(日本政府観光局)。また、在留外国人数(中長期在留者及び特別永住者の数)も毎年増えており、2018年は過去最高の273万1,093人であった(法務省)。さらに、外国人技能実習生や資格外活動で働く留学生を含めた外国人労働者(特別永住者を除く。外国人雇用状況届出数)が急増しており、2018年10月末で146万463人に達し、ここ数年は毎年約20万人ずつ増えている(厚生労働省)。これに伴って外国人労働者を雇用する事業所数も増加しており、2018年10月末現在、全国で21万6,348か所に上っている(前年から11.2%の増加。厚生労働省)。


こうした状況に加え、2018年に出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)が改正され、国の入管政策は、これまでの専門的・技術的分野に限った就労を目的とする在留資格を認める方針を転換して、在留資格「特定技能」を新設し、より広い分野での外国人労働者の受入れを正面から認める方向に舵を切った。改正入管法は2019年4月1日から施行され、在留資格「特定技能」による外国人労働者は、今後5年間で最大34万5,150人の受入れが見込まれている*2


2 これまでの取組及び今後の展望と実践


(1) 外国人技能実習制度における人権侵害に対する救済


その一方で、外国人労働者を含む外国人に対する人権侵害が跡を絶たない。特に外国人技能実習制度については、原則として転職を認めないという構造的問題や悪質な送出し機関の存在により、多額の借金を抱えての来日や、低賃金・長時間労働、強制帰国等の深刻な人権侵害が発生している。当連合会は、2013年6月20日に「外国人技能実習制度の早急な廃止を求める意見書」をまとめ、さらに2018年の第61回人権擁護大会において、「新しい外国人労働者受入れ制度を確立し、外国にルーツを持つ人々と共生する社会を構築することを求める宣言」(以下「人権擁護大会宣言」という。)を取りまとめるなど、一貫して制度の廃止を求めてきた。引き続き外国人技能実習制度の廃止を訴えるとともに、権利侵害を受ける外国人技能実習生の救済に力を尽くす。


(2) 在留資格「特定技能」の創設をめぐる取組


入管法の改正により在留資格「特定技能」が創設されたものの、送出し国におけるブローカーの規制が十分に機能しないことや、受入企業や受入企業から費用を受領する登録支援機関のみでは外国人労働者への人権侵害を防止できないことが懸念される(人権擁護大会宣言)。


弁護士及び弁護士会が、地方自治体や日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)等と連携しながら、外国人労働者の法的サービスへのアクセスを拡充して権利救済に取り組むとともに、新たな在留資格においても適法な労働環境を整備するよう、受入企業の法令遵守に向けた啓発や指導にも取り組めるよう体制を整備する必要がある。


(3) 多文化共生社会におけるワンストップ型の相談窓口との連携・協力


在留外国人や外国人労働者等の在日外国人のほか、今後さらに、出生後に日本国籍を取得した人や外国籍の親から生まれた日本人等も含めた外国にルーツを持つ人々が地域社会で生活することとなる。しかし、これらの人々が、住居を借り、働き、日本語を学ぶなど、企業や学校等の社会生活の様々な場面で差別を受けずに地域で共生するための環境が整っているとは言い難い。ヘイトスピーチ等による差別を断つための施策も緒に就いたばかりで、外国籍弁護士の調停委員への就任などの様々な社会参画も実現していない。こうした状況の中で、外国人を含む外国にルーツを持つ人々に対して、労働問題、交通事故、住居のトラブル、家族間の問題、在留資格や国籍の問題など、社会生活の様々な場面での法的な支援を行うことも喫緊の課題である(人権擁護大会宣言)。そこで直面する諸問題に弁護士が適切に法的サービスを提供できるようにするため、弁護士相互及び関係機関等との連携を更に促進する必要がある。


また、国は、地方自治体やその委託する国際交流協会などが設置するワンストップ型の相談窓口(一元的相談窓口)の設立・運営を支援することとしている。このワンストップ型の相談窓口の中に法律相談に対応する窓口を全国的に設置する必要があり、弁護士会が同窓口との連携・協力を進められる体制を構築する必要がある。また、当連合会は法テラスや関係省庁に対し、これらの相談窓口と連携しながら多言語での相談体制・対応体制を全国で構築することを求めていく。


(4) 外国人関連案件を担う人材の育成


外国にルーツを持つ人々の諸問題に取り組む弁護士側の体制強化を急ぐ必要がある。そのために、これまで研鑽や情報交換の場として、外国人事件全国経験交流集会と外国人関連部会・委員会連絡協議会を開催してきたが、eラーニングなどによって、入管関係、渉外家事関係、労働関係などの研修を更に充実させ、相談に対応できる弁護士を全国規模で育成する。


(5) 出入国管理制度の改革


外国人の在留に関する手続には広範な行政裁量が存在し、退去強制手続には司法も関与しない期限の定めのない収容などの問題があり、在留外国人の増加にもかかわらず、これらの制度改革はなお進んでいない。日本が国際社会から信頼され、外国人から「選ばれる国」となるためにも、適正な手続の下で、家族の統合などの国際人権基準に適った在留が可能となるよう、出入国管理制度の改革が必要であり、引き続きこの課題にも取り組む。


 

第3 ビジネスと人権に関する取組の推進

1 国連におけるビジネスと人権の国際的枠組み


企業活動のグローバル化・国際化に伴い、企業におけるビジネスと人権をめぐる問題は速やかな対応を要する課題となっている。


ビジネスと人権の関係性は、従来国際的に注目されてきた。2011年に国連人権理事会は指導原則を全会一致で決議し、これがビジネスと人権に関する国際的枠組みとなった。指導原則は、①企業を含む第三者による人権侵害から保護する国家の義務、②人権を尊重する企業の責任、③救済へのアクセスという3つの柱で構成されている。そして指導原則は、「国際的に認められた人権」を尊重する企業の人権尊重責任を「国内関係法令の遵守義務の上位概念」と位置付けた上で、企業に対し、重大な人権侵害を引き起こす又は助長することのリスクを「法令遵守の課題」として扱うことを要求している。指導原則策定を機に人権課題が中核的な経営課題として浮上し、企業はこれに真摯に取り組まざるを得なくなってきている。国連総会が2015年に採択した、17の目標と169のターゲットから成る「持続可能な開発目標(SDGs)」を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実施においても指導原則が言及されている。また、国連責任投資原則におけるESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した投資において求められているESG課題への企業の対応の在り方においても、企業に対して指導原則の遵守が求められている。


指導原則における第1の柱である前述①の「企業を含む第三者による人権侵害から保護する国家の義務」の実行方法の一つとして、各国に対して国別行動計画の策定が奨励されている。国別行動計画は、既存の法律と人権問題のギャップを特定し、国家としての対応策のロードマップを示すもので、2019年4月現在、20か国以上で策定されている。日本も2016年11月に国別行動計画を策定する旨を公表し、政府において2020年半ばをめどにその公表を目指している。


2 ビジネスと人権に関する取組


(1) 「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)」の策定


当連合会は、指導原則の第2の柱である前述②の「人権を尊重する企業の責任」に関し、2015年1月7日に、「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)」を策定・公表した。同ガイダンスは、日本の企業が国内外の経営管理として、指導原則にどのように従って人権課題に取り組み、また、それを、企業の事業活動及び法令コンプライアンス実務にどのように統合させるかについて、日本企業及び企業に助言を行う弁護士向けに作成したものである。さらに当連合会は、2018年8月23日に、「ESG(環境・社会・ガバナンス)関連リスク対応におけるガイダンス(手引)」(以下「ESGガイダンス」という。)を策定・公表した。ESGガイダンスは、企業が人権を含むESG(環境・社会・ガバナンス)に関するリスク対応状況を非財務情報として開示するための実務的指針や、機関投資家及び融資金融機関がインベストメントチェーンを通じた人権尊重を図るために、投融資先企業のESGリスクを管理して働きかけを行うための実務的指針であり、企業・機関投資家・融資金融機関及びこれらの組織に助言を行う弁護士向けに策定したものである。


(2) 国別行動計画の策定に対する提言


こうした企業を対象とする活動に加え、当連合会は日本政府に対し、2016年9月、2017年7月及び2019年1月の3回にわたり意見書を提出し、国別行動計画の策定と国別行動計画における優先事項について提言している。国別行動計画の策定の準備のために行われた現状把握調査においても、政府との意見交換会に継続的に参加し、日本企業・社会が直面する人権課題や法制度のギャップ等に関する情報を提供している。


3 今後の展望と実践


企業活動のグローバル化・国際化の中で、当連合会は「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)」の内容を、企業の規模を問わず企業活動に浸透させることにより、日本企業が人権リスクを評価し、負の影響を回避・軽減するための内部統制システムを構築するとともに、取引先(調達先、業務委託先、販売先、融資先、業務提携先、買収相手等)と取引を行う際に、投資やサプライチェーン等を通じて関係を持つ企業が人権に配慮した適切な活動を行っているか否かを評価し、適切な事業活動に誘導するといった企業活動がなされるよう取組を進めていく。


また、政府が策定するビジネスと人権に関する国別行動計画の内容が充実するよう、引き続き積極的に意見表明を行う。


さらに、指導原則の第3の柱である前述③の「救済へのアクセス」について、国には企業活動の下で人権侵害を受けた人々が実効的な救済にアクセスできるよう適切な措置を採ることが求められていることから、国はOECD多国籍企業行動指針に基づき設置されている日本連絡窓口(日本NCP)を活性化させるほか、企業・業界団体に対し苦情処理制度の構築を奨励する必要がある。当連合会は指導原則に基づく効果的な救済へのアクセスを確保するべく、かねてから求めている国内人権機関の設置や個人通報制度の導入について、市民社会と協働して政府への働きかけを継続していく。



第4中小企業の国際化支援の促進

1 中小企業の国際化
      

2004年以降、輸出を行っている中小企業の数は総じて増加基調にあり、2015年には4,544社が輸出を行い、輸出企業割合についても上昇傾向で推移し、2015年は21%となり、15年間で1.3倍となっている。中小企業の輸出額、売上高輸出比率ともに年々増加しており、輸出額は2001年度には2.6兆円であったところ、2015年度にはおよそ2.5倍の6.2兆円まで推移し、売上高輸出比率については、2001年度には2.3%であったところ、2015年度には4.1%まで割合が増加している。また、中小企業が海外に子会社を保有する割合も年を追うごとに増加傾向にあり、直接投資企業*3のうち中小企業は2014年には6,346社と、直接投資企業全体の72.4%を占めるに至っている(2018年版中小企業白書)。2013年の政府の中小企業政策として、5年間で新たに1万社の海外展開の実現という目標が掲げられた背景もあり、中小企業の海外展開は今後も確実に広がり、積極的に海外の需要を取り込んでいくことが見込まれる。


また、近年のインバウンドブームにより外国企業の対日進出が活発化しており、海外からの投資受入れや対日進出した外資系企業との取引・提携等、渉外的な国内事業に関わる中小企業も増加している。


2 海外展開を行う企業への法的支援の必要性
   

外国で行う企業活動や外国企業との取引には、文化、慣習、法令及び市場環境が異なるために様々なトラブルが生じることも多く、海外展開を行う中小企業に対する法的支援の必要性は高まっている。法的紛争に発展した場合には、海外での高額な訴訟費用を負担したり、国によっては訴訟制度の信頼性に懸念があるなど、国内よりも法的リスクが高い場合もあるなど、予防法務とトラブル発生時の初期対応が重要である。


 しかし、中小企業はこれらの法的問題に対応することのできる法律専門家に相談していないケースが非常に多い*4。また、法的支援を受けたいと考えた場合であっても、国際的な法律業務を扱う弁護士の探し方は必ずしも明らかではない上、このような弁護士は現在のところ都市部に偏在する傾向があり、法的サービスへのアクセス障害が存在している。

 

3 中小企業に対する国際化支援
  

(1) 中小企業海外展開支援弁護士紹介制度
    

こうした実情を踏まえて、当連合会は2012年から海外展開に関して法的支援を必要としている中小企業に対し、一定の経験要件を充たした支援弁護士を紹介し、比較的低廉な費用により相談に対応する事業を行っている(当初は試行、2016年4月から正規事業化)。現在では、独立行政法人日本貿易振興機構、株式会社日本政策金融公庫、東京商工会議所、株式会社国際協力銀行、信金中央金庫、公益財団法人全国中小企業振興機関協会と提携し、複数の地方銀行からも利用機関登録を受けて、これら諸団体が支援する中小企業等への支援弁護士の紹介に応じているほか、国土交通省の中堅・中小建設業海外展開推進協議会や独立行政法人中小企業基盤整備機構とも連携している。2012年の事業開始から実施地域を徐々に拡大し、2019年4月1日時点で全国13の都道府県*5で制度を運用し、相談に当たる国際的な企業法務・取引法務の豊富な経験を有する支援弁護士は約260名となっており、同時点で、累計約340件の紹介実績がある。


(2) 法的支援を担う人材育成


中小企業の海外展開の法的支援を担う人材育成について、当連合会は実務に即した各種の研修を実施し、海外展開に関する法的留意点や英文契約書作成の実務から現地法の基礎知識に至るまで多数のeラーニング講座を提供している。さらに、2017年以降は人材の拡大を目指し、渉外業務経験がない弁護士を対象とする基礎的な導入講座を実施している。


4 今後の展望と実践


今後は、まず実施弁護士会及び連携機関・利用登録機関を拡大し中小企業海外展開支援弁護士紹介制度の拡充を図る。次に、中小企業の海外展開に対する法的支援を提供し得る弁護士の人材を全国で育成していく。さらに、中小企業に対する、中小企業の海外展開の法的支援の必要性、弁護士が提供する海外展開支援業務の内容、紹介制度の効果的な利用方法等を中小企業に広報し啓発する取組を推進する。そして、海外展開先である諸外国(地域)の弁護士会とりわけ当連合会と友好協定を締結した弁護士会を対象として、業務的協力関係の可能性を探り、インバウンド投資対応を含めた中小企業の国際化への包括的支援策の検討を進めていく。



第5 国際仲裁・国際調停の振興

1 国際紛争の解決手段としての国際仲裁・国際調停の有用性


経済がグローバル化し、所在する国が異なる企業間の国際的紛争が増える中、紛争当事者の合意に基づいて選任された仲裁人の仲裁判断により紛争を解決する国際仲裁が、国際紛争の解決手段の主流になりつつある。


もっとも日本では、これまで日本企業と外国企業との契約締結において、紛争解決条項は必ずしも交渉の重点には置かれてこなかったことが示すように、国際仲裁や国際調停が活性化しているとは言い難い。主要な仲裁機関が取り扱う国際仲裁の件数に目を向けると、日本はアジアの各国にはるかに水をあけられている状況にある。例えば2017年の国際仲裁の新規受理件数は、中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)の476件、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)の374件、香港国際仲裁センター(HKIAC)の217件、韓国の大韓商事仲裁院(KCAB)の78件に比較して、日本は一般社団法人日本商事仲裁協会(JCAA)の17件にとどまる。また、ハーグ条約事件等の家事分野はともかく、商事分野の国際調停に関しては、日本はその緒に就いたばかりである。


裁判と異なり、国際仲裁は実施国の裁判手続に縛られない国際的な標準に則った手続で紛争を解決することができ、条約に基づき約160か国において仲裁判断を執行することができるなどの特質がある。また、企業間の紛争以外にも利用されており、企業と国家、国家間の国際的な紛争では、国家と地域当事者との結び付きから離れた中立的な解決手段として捉えられている。企業の経済活動のグローバル化を背景に、今後は企業間の紛争解決制度として国際仲裁が活用される傾向が一層加速すると予想される。国際仲裁の増加に平仄を合わせる形で、司法的な判断に代え、話合いにより紛争を解決する国際調停のニーズも増えていると言える。


2 国際仲裁の活性化に向けて進む体制整備


中小企業を含む日本企業の海外進出が進む中、日本で仲裁及び調停を行うことができれば、他国の裁判手続により他国の地で紛争解決を行う負担や、経済的な負担を軽減することが可能となり有益である。このため、2017年2月16日に当連合会が公表した「日本における国際仲裁機能を強化することに関する意見書」において提言したとおり、国際仲裁の実施に適した物的施設の整備、仲裁法制の整備、仲裁機関の拡充、仲裁に携わる法律実務家の確保、養成等の物的・人的インフラ整備のための取組、及び民間によるこれらの取組の支援等、日本における国際仲裁機能を強化するための施策及び体制整備が速やかに講じられる必要がある。


折しも、日本政府は2017年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」(同年6月9日閣議決定)において国際仲裁の活性化を掲げ、同年9月に設置された「国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議」は、2018年4月に「国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策(中間とりまとめ)」を公表し、国際仲裁を、経済・金融の中心地として日本が整備すべき不可欠な国際紛争解決のためのインフラとして位置付け、官民連携による総合的な基盤整備に取り組むことを挙げており、国際仲裁活性化のための環境は急速に整ってきたと言える。


3 今後の展望と実践


当連合会は、①物的施設の整備、②法制整備、③人材育成の3つを柱として、国際仲裁の活性化のための取組を行っている。


第1の柱である物的施設の整備については、2018年5月に一般社団法人日本国際紛争解決センター(以下「JIDRC」という。)が、関係省庁の協力を得て大阪の中之島に日本初となる国際仲裁・ADR専用施設を開業した*6。当連合会は、公益社団法人日本仲裁人協会(以下「JAA」という。)と共に、JIDRCの取組の支援を続けていく。また、東京においても審問施設が2020年のオリンピック・パラリンピックの開催までに開設されるよう、JAA等とともに関係省庁にその整備を求めるなど協力・支援していく。


 一方、国際調停についてはJAAが同志社大学と協働して「京都国際調停センター」を2018年11月に設立しており、こちらも物的施設の整備等が進んでいると言える。


第2の柱である法制整備については、当連合会は、日本の国際仲裁を国際標準のものとするために、仲裁法を始めとする関連法制の更なる整備が必要と考え、仲裁法に国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)2006年改正モデル法を反映させるための法整備要綱試案の検討を行っており、今後、関係省庁に対し仲裁法の改正を求めていく。さらに、国際仲裁・調停振興に向けて総合的な施策と国や関係機関の責務を示す国際仲裁・調停振興法の制定に向けた検討を始めている。


第3の柱である人材育成については、日本に国際仲裁・国際調停を担う仲裁人・調停人、代理人が少ないことが指摘されている。当連合会は、JAA及びJIDRC、そして関係省庁等と連携して、国内外でシンポジウム等を開催するなどして広報し、国際仲裁・国際調停への意識を啓発するとともに、実務的なセミナーや研修を全国各地でこれまで以上に実施し、人材の裾野を広げていく。



第6 日本の法情報・法制度についての国際発信

前述した昨今の更なる国際化の進展に鑑みれば、在日外国人及び企業への法的サービスの拡充・アクセスの向上のために、法令並びに裁判、調停及び仲裁といった紛争解決手段や立法の仕組み等の法制度に関する情報の国際発信をこれまで以上に広げる必要がある。


国際発信に関し、法務省は10年前から法令外国語訳推進事業を進めており、同事業に対し、これまで当連合会は優先的に翻訳すべき法令に関する照会回答や、日本法令外国語訳推進会議構成員の推薦等を通じて協力してきた。


2018年12月に「日本法令の国際発信に向けた将来ビジョン会議」(以下「将来ビジョン会議」という。)が法務省に設置されたことを受けて、当連合会は2019年1月18日に「日本法令の国際発信に向けた将来ビジョンに関する意見書」を公表し、日本法令外国語訳推進体制の改善(AI翻訳の積極的活用を含む。)、法情報のコンテンツの充実(法令アウトライン情報の翻訳等)、法情報のアクセス・発信向上の必要性等について指摘した。同年3月29日に将来ビジョン会議が策定した「日本法令の国際発信ビジョン2019」は、意見書と同様の方向を志向していると言える。当連合会は、これら法務省が実施する日本法令の外国語訳事業の推進と拡充をこれまで以上に支援していく。


もっとも、国際化の視点からは更なる取組が必要であり、法令の解釈に大きな影響を及ぼす裁判例の英訳を進めたり、中国語その他英語以外の多言語に法令情報を翻訳することの検討を急ぐべきであり、当連合会はこれらを関係各所に働きかけていく。


さらに、法情報・法制度の情報発信は英語を始めとする多言語で省庁横断的に行われるべきであり、政府に対し、これらの情報を集約するポータルサイトの設置を求めていく。


あわせて、これまでと同様に、国際仲裁や国際家族法等、国際法務における主要なテーマに関するシンポジウム・セミナーの外国(地域)弁護士会との共同開催等を通じ、日本の法情報・法制度を国際的に情報発信し、国内外で理解を深める取組に努めていく。



第7 国際法務人材の育成

国際化の中で求められる法的ニーズに応え、国際社会に貢献していくためには、これを支える担い手となる人材全体の底上げと拡充が喫緊の課題であり、国際法律業務に関する専門知識と経験を備えた弁護士を養成し拡充する必要がある。このため当連合会は、外国人関連案件、中小企業の海外展開案件及び国際仲裁・調停等の個別の国際法務分野に関する知識・ノウハウの提供を目的としたセミナー等を実施してきた。このほか、当連合会はより中長期的な視野で国際分野に関心を持つ法曹界の人材の裾野を拡大していくために、弁護士の国際業務について紹介する「弁護士の国際業務シンポジウム」を各地で開催し、また、関係省庁・団体の協力を得て、国際的なキャリア形成を目指す大学生以上の法曹志望者にも対象を拡げた「国際分野で活躍するための法律家キャリアセミナー」等も実施している。


前述のセミナー等については、内容の充実を図りつつ、ビジネスと人権の視点を意識したものとするとともに、全国の弁護士が参加の機会を得られるよう配慮するなど、より効果的な情報提供を行い、弁護士を育成・支援する取組を進めていく。


これらセミナー等の開催に加え、当連合会では英語研修教材としてeラーニング講座「English for Lawyers」を開設し、渉外業務への関心はあるものの経験の乏しい弁護士や語学能力を向上させたいと考える弁護士等に向けて、渉外業務に役立つ実践的な英語を始めとする外国語及びコミュニケーションスキル等の基礎的な能力向上のための取組を行っている。


また、渉外的な要素のある案件で依頼者に対してより実務的で有益なアドバイスをするためには、関連分野についての国際的な動向、現地の法制度や法文化についての最新の知識や情報が欠かせない。そのような知識や情報を得る機会としては、国際会議への参加、海外の法律事務所での研修、海外留学等が有用であり、また、これらによって培った現地の法曹関係者とのネットワークが重要となる。当連合会では、国際会議に参加する若手弁護士に対する参加費用の一部補助、香港の弁護士会である香港律師会とのインターンシップ交換プログラム、海外のロースクールへの推薦留学制度といった支援制度を設けているが、弁護士の国際化に向けた支援の充実に引き続き力を入れていく。


これらの支援制度については、限られた予算で効果的な人材育成ができるよう最適化を継続的に検討していく。さらに、支援制度について弁護士への周知がまだ十分でないため、適時に必要な情報を届けられるよう広報手段の拡充に取り組み、制度の利用を促進する。



第8 弁護士会との連携・支援

全国的に展開が求められる法的サービス拡充のために、弁護士会と連携し、国際的な視点から、日本の法制度及び法的サービス提供の現状に関する認識を共有するよう努めることが必須である。その1つの試みとして、当連合会は、2018年3月及び2019年2月に「今、地方で国際化」と題し、全国52の全ての弁護士会に呼びかけて国際活動に関する交流会を開催し、弁護士会における国際化を進める上での課題について意見交換を行った。2018年の交流会の際に全ての弁護士会に対して実施したアンケートでは、「在留外国人に対する法的支援が必要との意見がある」と回答した弁護士会は29会、「国内企業による海外進出案件への対応が必要との意見がある」と回答した弁護士会は18会、「国際関係事項を扱う委員会がある」と回答した弁護士会は32会、「過去5年間に諸外国の弁護士会と交流を行ったことがある」と回答した弁護士会は25会に上った。一方で、国際化に対する障壁を感じる弁護士会の現状も浮き彫りとなった。


そこで、当連合会は、各地の弁護士会における国際活動の意義と必要性の認識、国際活動に関する情報・ノウハウを全ての弁護士会と共有し、各地の弁護士会及び弁護士が、当該地域における外国人や企業に対する法的サービスを拡充できるよう環境の整備を支援する*7。そして、弁護士会が海外の法曹団体・弁護士と交流を持つ場合や中小企業の国際化支援を推進する場合に、各地の実情や法的ニーズに応じた効果的な支援を進められるよう、当連合会の体制を整備する。



第9 結論

本宣言は、グローバル化・国際化の中で求められる法的サービスの拡充・アクセス向上に焦点を当てたが、国際戦略の基本目標に掲げたとおり、国際司法支援(法整備支援)の継続・推進、国際公務人材の育成、国際社会における弁護士業務、弁護士会の在り方の検討及び国際的なルール・メーキングへの積極的な関与など、国際戦略の課題は山積している。


当連合会は、弁護士会等と連携・協働して、本宣言に挙げた諸取組を強化し、グローバル化・国際化の中で求められる法的サービスの拡充・アクセスの向上を更に積極的に推進し、国際戦略に掲げた基本目標の達成を目指し活動を続けていく決意である。




[脚注]


*1 本宣言では,「中小企業・小規模事業者」をまとめて「中小企業」と略称する。中小企業基本法に「中小企業者の範囲」及び「小規模企業者」の定義があるが,各法律や支援制度において「中小企業者」の定義は異なることがある。(参考:中小企業庁FAQ「中小企業の定義について」)


*2 法務省入国管理局パンフレット「在留資格『特定技能』が創設されます」の「特定産業分野と受入れ見込数等」の受入見込数を合計した人数(なお,同局は2019年4月1日から出入国在留管理庁に組織改編。)。


*3 ここでいう直接投資企業とは,海外に子会社(当該会社が50%超の議決権を所有する会社。子会社又は当該会社と子会社の合計で50%超の議決権を有する場合と,50%以下でも連結財務諸表の対象となる場合も含む。)を保有する企業(個人事業所は含まない。)をいう。


*4 「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」(2017年8月日本弁護士連合会)より。調査は無作為抽出で全国の中小企業1万5,000社にアンケートを送付し,3,887社から回答(回答率25.9%)。中小企業の海外進出への対処法については,「顧問弁護士に相談して対処した」10.4%,「顧問弁護士以外の弁護士に相談して対処した」7.5%,「弁護士以外の社外の方に相談して対処した」35.8%,「外部には相談せず社内で対処した」22.4%,「対処していない」23.9%という回答状況となっており,海外トラブルの対処法についても,「顧問弁護士に相談して対処した」25.5%,「顧問弁護士以外の弁護士に相談して対処した」17.6%,「弁護士以外の社外の方に相談して対処した」23.5%,「外部には相談せず社内で対処した」11.8%,「対処していない」21.6%という回答状況。


*5 東京都,神奈川県,愛知県,大阪府,福岡県,新潟県,札幌地域,香川県,広島県,京都府,宮城県,兵庫県,奈良県(以上,設置順)。


*6 JIDRCは,当連合会とJAAが共同事務局を務めた民間団体を中心とする「日本国際仲裁センター(仮称)設立検討協議会」における検討を経て,2018年2月に設立された。同協議会は同年3月より「日本国際紛争解決センター運営協議会」に名称を変更し,当連合会とJAAが引き続き事務局を務めている。


*7 例えば,省庁との協議・折衝のほか,日本における少数言語を母国語とする外国人への法的サービス提供のための通訳人の確保のための環境整備等は,当連合会が主体的に活動することが求められており,当連合会は弁護士会との間の具体的な活動の振り分けを速やかに行う必要がある。