第51回定期総会・司法改革に関する宣言

2000年(平成12年)5月26日
日本弁護士連合会


21世紀における司法制度はいかにあるべきか、内閣に設置された司法制度改革審議会の審議は、いよいよ重大な局面をむかえようとしています。私たちは、憲法と世界人権宣言の定める個人の尊厳と人権の確立を求めて、わが国の司法について、これまでの行政主導型の社会における「小さな司法」から、わが国の社会の隅々まで「法の支配」がゆきわたる「大きな司法」へと転換をとげる抜本的な改革運動を進めてきました。今こそ、市民の参加をうけ、市民に身近で役立つ「市民の司法」が実現されなければなりません。


「市民の司法」を担う裁判官は、人権感覚を身につけ、司法の救済を求める人々とともに裁かれる立場から幅広い経験を積んできた人から選ばれる必要があります。また、市民も参加する民主的選考手続を経た人が任命される制度にするべきです。さらに、昇任・昇給など官僚的な人事制度を伴わないものでなければなりません。このようにして、弱者に優しい心と権力にたじろがない勇気をもった裁判官を実現することが、私たちが求める法曹一元制です。その基盤は既に整備されつつあります。その条件が未だ達せられていないとして再び先送りすることは許されません。


また「市民の司法」の実現のためには、市民が直接司法に参加して裁判を行う、陪審制度の導入が必須の課題といわなければなりません。市民は、陪審員として裁判を担うことにより、司法の役割を理解し、民主主義を実践して、統治の主体として目覚めるのです。既に戦前に行われていた陪審制度の実施が、国民主権の憲法の下で市民の権利意識も高まった現在において困難であるはずがありません。


市民に身近で役に立つ司法を実現するためには、市民が必要とするだけの量の弁護士が、社会の隅々にまで存在し、「社会生活上の医師」として気軽に利用できる存在となることが必要です。その弁護士は、市民の信頼に応え、人権の国際的な保障、伸長などが求められる21世紀にふさわしい法律実務家としての能力と高い職業倫理を身につけていなければなりません。そのために私たちは、法曹人口の適正な増加、弁護士偏在の解消、公設事務所の設置、弁護士情報の提供、業務及び倫理研修の強化など弁護士の自己改革の課題に全力をあげて取り組みます。


以上のとおり決議する。