第51回定期総会・司法サービスの全国地域への展開に関する決議

2000年(平成12年)5月26日
日本弁護士連合会


当連合会は、司法改革の一環として「いつでも、どこでも、だれでも良質な司法サービスを受けられる社会」の実現を目指し、各単位弁護士会および全国会員の参加と協力のもとに、弁護士過疎地域における法律相談センターの設置、当番弁護士の全地域での実施、公設事務所の開設等各地域の実情と要請に応じて積極的な取り組みを行ってきた。その成果として、すでに法律相談センターおよび当番弁護士制度は、社会における不可欠の司法システムとして各地域に定着している。


当連合会はこれらの公益的活動をさらに推進するため、「当番弁護士特別基金」および「日弁連ひまわり基金」を設置し、全会員の特別会費拠出により財政面を自ら支えるとともに、全国の会員は、自らの社会的責務を果たすため日夜懸命な努力を続けている。


ところで、本年4月には、民事法律扶助法が制定され、全国均質な司法サービスの実施へ向けての整備が急がれるなかで、新たな法律扶助制度に適応した相談・事件受任等の活動拠点を過疎対策の側面からも拡充して行くなど弁護士による協力体制の充実が求められている。


このような状況を踏まえ、当連合会は、第1に、1996年定期総会における「名古屋宣言」の完全実施に向けて、法律相談センターを全国各地域に設置すること、第2に、当番弁護士活動の一層の質的、量的な充実、さらに必要とされる場所に法律相談センターを設置するとともに、その機能の拡充を図ること、第3に、過疎地域への弁護士の定着を目指すとともに、相談・事件受任がしやすく公益的活動の拠点ともなる公設事務所を必要な地域に設置する活動をより一層強化していくこととする。


弁護士過疎地域は、裁判所が存在しなかったり、存在しても裁判官が常勤していないことなどにより、地域の住民が紛争解決や権利の実現を担うべき司法関係機関を十分に利用できない司法過疎といえる深刻な状況にある。この司法過疎の解消は単に弁護士・弁護士会の努力のみで実現できるものではなく、地域の住民の法的需要に公平に応える立場にある国および地方公共団体が本来有する重要な責務である。国は司法過疎の解消を目指して地域の住民の要望に応えるよう裁判官の増員・裁判所の配置等適切な措置を取るべきである。地方公共団体は司法過疎の解消を目指して、財政的援助を含め、地域の実情に則した支援と協力の施策を早急に進めて行くべきである。


当連合会は、市民のために司法サービスを充実させていくことが司法改革として極めて重要であることを確認し、司法関係各機関並びに国および地方公共団体との協力のもとに、司法過疎地域に生活する市民の権利を護るにふさわしい施策の実現を目指して運動を展開し、もって司法サービスを全国あらゆる地域で展開するために努力を続けることを改めて決意するものである。


以上のとおり決議する。