第19回定期総会・沖縄施政権の返還に関する宣言
(宣言)
終戦後20数年を経過した今日、沖縄が、なお米国の施政権下にあり、基本的人権の侵害されている事案が少くないことは、まことに遺憾である。
われわれは、人権侵害の禍根を絶つとともに、沖縄に対する施政権の返還がすみやかに実現されることを期する。
右宣言する。
1968年(昭和43年)5月25日
第19回定期総会
提案理由(議事録より)
提案の理由を簡単に説明しますと、我が日弁連におきましては、かねて人権擁護の見地から沖縄問題に重大な関心を持ち、再三現地に調査団を派遣して実情を調査してきた次第でございます。特に昭和41年度に起りました友利事件、サンマ事件の裁判移送問題を契機といたしまして、再度沖縄問題調査特別委員会を設置し、人権に関するあらゆる問題を取り上げ究明いたしましたところ、人権侵害が沖縄社会のあらゆる分野に及んでいることが明らかになったので、その人権侵害の実相は先に発表いたしました沖縄調査報告書に記載されている通りであります。沖縄におきましては県民の意思とは全く関係なく定められた米国大統領行政命令に基づきまして高等弁務官が強大な権限を与えられており、高等弁務官が必要と認める時には法令を公布し、琉球民政府の立法権を拒否し、或は立法を無効とし、更には合衆国の安全、財産又は権利に影響を及ぼすと認める場合は移送命令によりまして、琉球民裁判所の裁判権を剥奪することができ、或は琉球政府の公務員の人事について介入権を通じて行政に干渉をすることができるとされております。このように琉球政府の立法、司法、行政はあらゆる面からその自主性、独立性を奪われ、沖縄県民の人権を擁護する機能を果していないのが現状であります。高等弁務官による沖縄の施政が軍事優先の政策であります以上、沖縄社会のあらゆる分野において、このような人権侵害が起されるということは、むしろ当然と言えましょう。言い換えますと、沖縄における事実上の軍事占領が継続されている限り、人権の制度的な保障というものはあり得ず、人権侵害からの根本的な救済はあり得ないと考えるのであります。基本的人権と、社会正義の実現とを使命といたします我々弁護士といたしましては沖縄におけるこのような人権侵害の現状は絶対に黙視することはできません。我々は沖縄における人権侵害の禍根を断つとともに、沖縄に対する施政権の返還が速やかに実現いたしますよう関係当局に要望し且つ我々のこの念願を全世界の心ある人々に訴えたいのであります。こういう理由を以ちまして本宣言を提案する次第でありますので、何卒満場一致ご賛同あらんことをお願いいたします。