「松橋事件」再審開始に関する会長声明

 

本年10月10日、最高裁判所第二小法廷は、宮田浩喜氏に係る再審請求事件、いわゆる「松橋(まつばせ)事件」について、検察官の特別抗告を棄却する決定をした。  


本件は、1985年(昭和60年)1月6日、宮田氏が、熊本県下益城郡松橋町(現在の熊本県宇城市)所在の被害者宅において、切出小刀で被害者を殺害したとされた事件である。宮田氏は、長時間にわたる任意取調べの末、否認から自白に転じて逮捕、起訴されたものの、一審の途中で明確に否認に転じ、その後は一貫して無罪を主張してきた。  


昨年11月29日、福岡高等裁判所は、宮田氏の犯人性を示す証拠は自白以外にはないとした上で、①宮田氏は、自白において、小刀に布片を巻きつけて、犯行後にこれを燃やしたと供述しているところ、この燃やしたとされる布片が実際には燃やされずに残っていた事実が認められ、②自白において、巻き付けたとされる布片を明確に特定していて、これを他の布片と取り違えて供述したとは考え難いこと、③凶器とされた小刀と被害者の創傷が矛盾していることなどから、新旧証拠の総合評価により、自白全体の信用性を否定して、熊本地方裁判所が2016年(平成28年)6月30日に行った再審開始決定を維持した。  


今回の決定は、これをそのまま維持し、検察官の特別抗告における主張は、いずれも刑事訴訟法433条の抗告理由に当たらないとして、裁判官の全員一致で特別抗告を棄却したものであり、当連合会はこれを高く評価する。  


宮田氏は、現在85歳の高齢である。検察官が特別抗告を行って、時間が経過したことも踏まえると、再審公判で無罪判決を得て権利救済を果たすには、もはや一刻の猶予も許されない。  


当連合会は、今後も、宮田氏が再審公判で無罪となるための支援を続けるとともに、取調べ全過程の可視化、再審請求事件における全面的証拠開示をはじめとした、えん罪を防止するための制度改革の実現を目指して、全力を尽くす決意である。


       

 2018年(平成30年)10月18日

             日本弁護士連合会
           会長 菊地 裕太郎