難病医療費助成制度における重症度分類の撤廃を求める会長声明

 


2015年1月に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下「難病法」という。)は、医療費助成の対象疾病の数を増加させる一方、軽症者を助成対象から原則外すこととした。ただ、同法施行前から助成を受けてきた患者については、2017年末まで病状の軽重にかかわらず助成を続ける3年間の経過措置がとられてきた。今般、厚生労働省による集計の結果、経過措置適用者約72.7万人のうち、引き続き認定を受けたのは約57.7万人(79.4パーセント)に留まり、約15万人が不認定もしくは申請なしであることが明らかとなった。


難病法は、疾患ごとに定められた重症度分類という基準を満たした重症者のみを医療費助成の対象とする。しかし発症初期の段階から、症状の維持改善のため高額な医療費を要することもあるため、難病者の医療費の多寡は、症状の軽重とはさほど関係がない。そのため、軽症であっても、医療費助成が受けられないことで、有効な治療法の断念を余儀なくされ、症状の重症化を招き、生活の質を著しく低下させ、かえって治療費を増大させ、長期的には財政負担をより増加させる要因ともなる(当連合会2015年7月16日付け「難病者の人権保障の確立を求める意見書」。以下「意見書」という。)。


報道によれば、実際軽症と認定されて打ち切られたことにより、難病者の生活に以下のような深刻な悪影響が生じている。軽症であるとして一度助成が打ち切られると、後に重症化した場合であっても、医療費の負担の大きさのために再度の受診を躊躇してしまい早期の治療につながらない。毎年の受給者証の更新時期に行政から送られてくる更新書類には、各疾患の患者会情報などが同封されており、難病者にとって病気などの貴重な情報源だった。しかし、助成が打ち切られるとこうした情報も届かなくなり、難病者は孤立を深めることになる。指定難病に罹患していれば障害福祉サービスの対象となるところ、医療費助成の受給者証が発行されなくなるために、それまで利用していた障害福祉サービスも同時に打ち切られるケースも生じている。このような不利益を被る難病者が約15万人も生じる事態は、「難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保及び難病の患者の療養生活の質の維持向上を図り、もって国民保健の向上を図る」(難病法1条)という法の目的に逆行する事態であるといわざるを得ない。


難病法は、その附則において、法律の施行後5年以内を目途として、法の施行の状況等を勘案しつつ、必要な見直しをするとしている。かかる施行後5年以内の見直しにおいては、国は難病者に対し、症状の軽重にかかわらず等しく尊厳ある個人として生きることを保障する観点から、意見書記載のとおり、重症度分類の撤廃を含めた抜本的な法改正を行うとともに、従来医療費助成を受けていた難病者に深刻な悪影響が及ばないよう、難病法の運用を見直し、早急に適切な救済措置がなされるべきである。



2018年(平成30年)8月9日

日本弁護士連合会      

 会長 菊地 裕太郎