新潟水俣病認定義務付け訴訟東京高裁判決に関する会長談話

 

本年11月29日、東京高等裁判所は、新潟水俣病に関する認定義務付け訴訟(公害健康被害の補償等に関する法律(以下「公健法」という。)上の水俣病認定申請を棄却された患者が水俣病と認定するように求めた訴訟)について判決(以下「本判決」という。)を下した。原審である新潟地方裁判所判決では、原告中2名について請求が棄却されていたが、本判決では、原告全員の請求を認容するというものであった。
 

環境省は、水俣病認定の判断条件について、2014年(平成26年)3月7日に通知(以下「2014年環境省通知」という。)を発した。2014年環境省通知では、有機水銀に対するばく露を判断するための積極的な考慮要素として同居の家族に公健法等に基づく水俣病の被認定患者の存在を挙げているものの、未認定患者への一定の補償がなされたいわゆる平成7年政治解決による一時金の受給者や、水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(以下「特措法」という。)による一時金の受給者の存在を明確に挙げていない。2014年環境省通知のこのような記載内容から、熊本県、鹿児島県、新潟県・新潟市の各認定審査会の場などにおいて、同居の家族に、平成7年政治解決や特措法による一時金の受給者がいたとしても、有機水銀に対するばく露を肯定する事情とはなり得ないかのように運用されているおそれがあった。


これに対して、本判決は、同居の家族に被認定患者がいることのみならず、同居していない親戚に認定患者が複数いることや、同居の家族に特措法による一時金の受給者がいることなどを、有機水銀に対するばく露を判断するための事由として挙げ、有機水銀に対するばく露を肯定する事情になり得ることを明確にした。
 

ところで、当連合会は、2014年(平成26年)10月15日付け「水俣病認定補償制度の是正を求める意見書」において、2014年通知が患者切捨てのための新たな手段ともなり得ることから撤回すべきであることを表明していた。本判決は、水俣病の認定に際して、有機水銀に対するばく露歴や生活歴及び種々の疫学的な知見や調査の結果等を十分に考慮して判断すべきとした水俣病認定義務付け訴訟に関する2013年(平成25年)4月16日最高裁判所判決に基づき、被害者救済のために適切な判断をなしたものと評価できる。
 

よって、当連合会は、環境省に対しては、重ねて2014年環境省通知の速やかな撤回を求めるとともに、熊本県、鹿児島県、新潟県・新潟市に対して、前記最高裁判決や本判決を踏まえ、ばく露時期に、同居親族中に平成7年政治解決や特措法による一時金受給者が存在する場合には、有機水銀に対するばく露を判断するための積極的な考慮要素として判断するよう求める。



  2017年(平成29年)12月27日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋