「核兵器禁止条約」の早期実現を求める会長声明

 


本年3月27日から、核兵器のない世界の達成と維持に向けて、核兵器を禁止しそれらの全面的廃棄に導く法的拘束力のある文書(以下「核兵器禁止条約」という。)の制定に向けて交渉を行う国連会議が行われている。この国連会議は、「核兵器のない世界」を国際法規範として確立することを目的に史上初めて開催される画期的なものであり、NGO参加が認められることから、当連合会も代表を派遣している。

第一会期(3月27日から31日まで)を終えて、第二会期が6月15日から7月7日まで行われる予定であるが、この5月には第二会期で検討される「核兵器禁止条約草案」(以下「草案」という。)が公表された。

草案には、次のとおり、核兵器廃絶に向けた当連合会の意見に適合する内容が含まれており、積極的に評価することができる。

1 核兵器の使用は、人間の生命・健康に深刻な被害を与え、地球環境を破壊するものであり、核兵器は人類の生存と繁栄に対する最大の現実的脅威であることから、核兵器は廃絶されるべきである。
この点、草案は、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道上の帰結を認識し(前文第2段)、核兵器使用禁止への努力の必要性と(前文第1段)、核兵器及び運搬手段を除去すべき緊急性を強調しており(前文第9段)、核兵器廃絶への決意を明確に示している。

2 無差別かつ大量な殺戮をもたらす残虐兵器である核兵器の使用は、「無防守都市に対する無差別爆撃」であり「不要な苦痛を与えるもの」として国際人道法上違法である。
この点、草案は、核兵器のいかなる使用も国際人道法上違法であることを明確に宣言し(前文第4段、同第5段)、文民及び戦闘員が、この条約がその対象としていない場合においても、人道の諸原則等に基づく保護の下に置かれることを再確認している(前文第6段)。

3 核兵器による被爆者に対しては、医療の提供だけではなく、後遺障害全般に対する完全な医療措置の実現、生活の保護、社会的偏見の除去、精神的苦痛への補償が必要である。
この点、草案は、核兵器使用の被爆者及び核兵器の実験により影響を受けた者の苦痛に留意し(前文第3段)、これらの者に対して、医療、リハビリテーション及び心理的な支援を含む適切な援助の提供と、これらの者が社会的及び経済的に包容されるようにすることを求めている(第6条1項)。

4 核兵器禁止条約では、核兵器の威嚇や使用に止まらず、開発、実験、保有、配備、移譲などを全面的に禁止し、検証システムのもとで核兵器の廃絶の道筋が示されるべきである。
この点、草案は、厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍縮に向けての効果的な前進を達成する目的をもって行動する決意が明確に示され(前文第11段)、締約国に対して、核兵器等の開発、生産、製造、取得、保有、貯蔵、移譲、受領及び使用並びに核兵器の実験的爆発等の実施等を禁止している(第1条)。

当連合会は、1950年の第1回定期総会で「地上から戦争の害悪を根絶し、平和な世界の実現を期する」と宣言して以降、繰り返し核兵器の廃絶や被爆者の援護を求め、世界の諸国間で核兵器禁止条約が締結されるよう提言してきた。

草案は、締約国に厳重かつ効果的な国際管理の下におけるあらゆる点での核軍縮に至る交渉を誠実に追求しかつ完結させる義務が存在することを確認している(前文第12段)。あわせて、草案は、すべての国がこの条約へ参加することを目標として、締約国が、締約国以外の国に対し、この条約の批准等を行うよう奨励することとしている(第13条)。これらのことは、これまで当連合会が求めてきたものと軌を一にするものである。

当連合会は、「核兵器禁止条約」の早期実現に向けて努力を続けることを誓うとともに、日本政府に対しては、原子爆弾の投下による被害を受けた唯一の被爆国として、「核兵器禁止条約」の実現に向けて積極的な役割を果たすよう求めるものである。



 

  2017年(平成29年)6月6日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋