外食メニュー虚偽・誤認表示に関する会長声明

 

本年10月22日以降、旅館・ホテル・百貨店等が提供する料理等の外食メニュー表示に関して、実際に使われていた食材と異なる食材の表示が行われていたことが連日報道され、社会問題となっている。食材を含め食品表示は、消費者の食品を摂取する際の安全性の確保、自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保に関し重要な役割を果たしており、過去7、8年間にもわたり外食メニュー虚偽・誤認表示を常態化させていた外食に携わる事業者は、食品表示を甚だしく軽視し、消費者を欺き続けてきたものといわざるを得ず、極めて遺憾である。


牛脂注入牛肉には、乳、小麦といったアレルギー物質が含まれていることがあり、アレルギー情報が消費者に全く伝わらないという安全上軽視できない問題もある。


消費者の信頼を存立基盤とすべき大手ホテル・百貨店等の企業においても、長期にわたり広く虚偽・誤認表示問題が発生していたことは、当該企業のコンプライアンスの在り方にも大きな問題があったことを示すものである。


この問題に対し、政府は、本年11月11日、消費者庁、農林水産省及び国土交通省等11の関係省庁を集めた緊急会議を開催し、各省庁は今後、管轄する業界に、業界団体を通じるなどして調査をさせ、本年11月末までに調査結果をまとめた上で、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)のガイドラインを策定する方向性を示し、現行の景品表示法で対応するとしている。


しかし、外食メニューの虚偽・誤認表示が蔓延していたのは、明確なルールと日常的な監視体制が用意されている食品表示規制が外食に適用されていなかったことが原因の一つであるといえ、単にガイドラインを策定するだけでは再発防止策として不十分である。実際、牛脂注入加工肉をステーキと表示してはならないとの景品表示法に関するQ&A(ガイドライン)が公表されていたが、今回の外食メニューの虚偽・誤認表示では、牛脂注入加工肉をステーキと表示する例が圧倒的に多いことからも、ガイドラインによる対応では不十分であることが明らかとなった。


また、外食メニュー表示に従来から適用されていた景品表示法について、不当表示を防止するための諸制度が不十分であったことも、外食メニュー表示において虚偽・誤認表示を蔓延させた原因といえる。


さらに、これまで、不正競争防止法等に定められている刑事罰が外食メニューに適用されてこなかったことも、原因としてあげられる。


この点、食品表示規制について、当連合会は、「新食品表示制度に対する具体的な提言についての意見書」(2013年2月14日)において、新たに制定される食品表示法においては、従来義務化されていなかった外食、中食に対しての食品表示を義務化することを提言していたところである。


こうした当連合会の提言が実現されることにより、外食メニュー表示に明確なルールが設定されるとともに、食品衛生監視員や地方農政局職員らによる日常的な監視指導体制が外食メニュー表示にも及ぶことになる。


ところで、食品表示法の施行は2015年6月頃をめどとしており、法施行を待っていては遅きに過ぎる。現行の食品衛生法の食品表示基準、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(以下「JAS法」という。)における品質表示基準等を直ちに改定すべきである。


また、景品表示法について、当連合会は、「不当景品類及び不当表示防止法の抜本的改正等に関する意見書」(2011年8月18日)において、課徴金制度等の導入、都道府県知事に対する措置命令権限の付与、一般私人の措置請求権新設、適格消費者団体の差止請求権の実効性を高める制度の整備、消費者庁の地方支局等の体制強化といった景品表示法の執行力を高めるための抜本的改正を求めていた。さらに、当連合会は、「不当景品類及び不当表示防止法の改正に関する意見書」(2013年3月22日)においても、再度、課徴金制度等の導入及び消費者庁における景品表示法の執行力を高めるための抜本的改正を求めていた。それにもかかわらず、上記各提言に基づく改正の動きはみられない。


これらの制度が充実することにより、外食メニューの虚偽表示は抑制されることとなる。


外食メニューの虚偽・誤認表示の問題は、企業がその信頼に乗じて消費者を欺く許し難い行為であり、再発を防止するためには、直ちに食品衛生法の食品表示基準、JAS法の品質表示基準等(法施行後は食品表示法の食品表示基準)を外食にも適用するなどして、外食メニュー表示についての明確なルールを策定し、日常的な監視指導体制を整備すること、景品表示法について上記の執行力強化策を実施することが必要である。また、不当表示と不正競争とは重なる部分も多く、不正競争防止法違反等の適用を視野に入れた対応も併せて必要である。
   

 

2013年(平成25年)11月15日

  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司