被災ローン減免制度運用開始から満2年を迎えての会長声明

 

 

東日本大震災の被災者が抱えるいわゆる二重ローン問題を解決する制度として、2011年8月22日に「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(以下通称に従い、「被災ローン減免制度」という。)の運用が開始されてから、本日、満2年を迎えた。

 

当連合会及び被災地弁護士会は、東日本大震災の直後より、建物等が津波等により滅失したにもかかわらず住宅ローン等が残り、新たなローンを組むことができないという「二重ローン問題」の深刻さを訴え制度構築に取り組み、被災ローン減免制度の運用開始後も、同制度の運用に必要な登録専門家となる弁護士を確保するなど同制度を通じて、被災者の救済のために努めてきた。

 

しかし、当初、1万件を超えると予想されていた被災ローン減免制度による債務整理の成立件数は、2013年8月16日現在わずか483件であり、今後成立する見込みとされる900件を加えたとしても、1383件にとどまっている。


この間、被災ローン減免制度の運用を担う一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会(以下「運営委員会」という。)は、被災者の手元に残すことができる財産の範囲について義援金等を除いて現預金500万円を目安に拡張するなど、運用の改善を行い、被災者にとって利用しやすい制度となったことは評価できるものの、このように、当初の予想を大幅に下回った原因は、運用開始直後に十分な周知がなされなかったことに加え、当初は仮設住宅入居者は利用できないなど、利用要件が限定され、制限的に運用されてきたことが背景にあると考えられる。


また、債務整理成立の要件として全債権者の同意が必要とされており、1社でも同意が得られなければ債務整理が成立しない。これは、同制度が私的整理であることの限界であり、被災者の救済及び迅速な債務整理成立という観点からすれば、当連合会が当初より提言していた立法措置による制度が必要であるといえよう。現段階において立法措置の実現が困難であるとしても、当初の制度趣旨の実現を図るため、運用の改善に努めるべきである。


運用の改善に当たっては、公平中立という観点に立ちながらも、被災ローン減免制度が、住居等を失うという甚大な被害を受けた被災者の負担を減免し生活の再建を図るための制度であるという基本的な視点を忘れてはならない。


現時点での運用の課題としては、利用対象者の範囲が制限されていること、支払不能要件の妥当性及び不明確さ等が挙げられる。被災者にとって制度の利用が可能か否かの見通しがつきにくい状態では、真の意味で被災者にとって利用しやすい制度とはいい難い。


同制度の運用に関しては、2012年8月以降、運営委員会と被災地弁護士会との間で、被災地において定期的に協議会が開催され、今後も継続される見込みである。運用の改善に関しては、被災地の実情を熟知している被災地弁護士会と運営委員会が、十分な協議をすることが不可欠である。協議体制が整い、十分な協議が継続的に行われることにより、被災ローン減免制度が被災者にとってより利用しやすくなることが期待される。


被災地においては、いまだに、被災ローン減免制度を知らず、ローンの支払に苦しんでいる被災者も少なからず存在すると思われる。ここに改めて、当連合会も、関係諸機関と連携しながら、被災ローン減免制度の運用の改善及びより一層の周知を図り、同制度により1人でも多くの被災者が救済されるよう努めたい。

  
    

2013年(平成25年)8月22日

 日本弁護士連合会
 会長 山岸 憲司