東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故から2年を迎えての会長声明

 

本日、東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故発生から2年を迎えた。 


当連合会は、東日本大震災に際して、一人ひとりの基本的人権の回復を求める「人間の復興」を基本的な視点に据え、被災者・被害者の方々のニーズをくみ取り、様々な提言を行い、それらの実現のために活動してきたが、いまだ十分な効果を発揮できていない側面もあることから、改めてその課題を示す。


第一に、いわゆる二重ローン問題では、当連合会等の提言により創設された被災ローン減免制度(個人版私的整理ガイドライン)の運営に積極的な協力を行ってきたが、まだまだ十分に活用されているとはいえない。また、事業者の二重ローン問題に関して設立された東日本大震災事業者再生支援機構及び産業復興機構についても同様である。いずれの制度についても、その意義や役割に関する周知、広報が十分でないこと、特に、被災ローン減免制度では、運営委員会に相談しながら要件に該当しないとして振り落とされている案件もあることがうかがわれ、運用の改善が必要であると考えられることから、関係機関と連携の上、これらの制度が被災者にとって更に活用しやすいものになるよう活動していく。


第二に、福島第一原発事故の被害者にとって最も切実な損害賠償の問題であるが、引き続き原子力損害賠償紛争解決センターの運営に積極的に協力し、センターの紛争解決機能の更なる強化のために、今後も全力で取り組んでいく。また、今後、本格化していくことになる不動産を中心とした財物賠償請求については、東京電力が示している基準では、被害者の生活基盤の回復が困難であることから、地域の復興と被害者の生活再建に確実につながるような適切な賠償の方針及び基準を改めて定めることを求めていく。さらに喫緊の課題として、損害賠償請求権の消滅時効の問題につき、東京電力が見解を発表しているが、その内容は不明確であり、救済策として不十分であることから、全ての被害者にとって不利益が生じることのないよう、一律に立法によって、本件事故による全ての損害賠償請求権について、被害が継続している限り時効の進行が開始しないことを確認すること又は時効進行を相当長期間にわたり停止すること等の抜本的な救済措置を講じることを求めていく。 


第三に、多くの被害者が期待を寄せている原発事故子ども・被災者支援法について、当連合会は、被害者、支援者の切実な声をすくい上げ、政府や国会議員に訴え、法の理念に従った早急な施策の実施を求めて活動を行ってきたが、立法からまもなく9か月になろうとしているにもかかわらず、いまだその施策を定める基本方針が策定されていない。このような状況は、法の趣旨及び全会一致で法を成立させた立法府の意思にも反した状況であるといわざるを得ず、一刻も早く法の趣旨に則った基本方針を策定し、被災者の切実な要望に応えた具体的な支援策を早急に実施していくことを求める。


第四に、原子力政策について、福島第一原発事故によって脱原発を求める世論が巻き起こり、原発再稼働に向けたハードルが一段と上がっていると思われたところ、2月28日の衆議院本会議における施政方針演説において、安倍首相は安全が確認された原発は再稼働する旨明言した。福島第一原発事故からわずか2年しか経っていない中、いまだ事故が収束したとは到底いえず、その原因の検証も十分になされたとはいえない状況において、このような動きが強まっていることについて、強く警鐘を鳴らすものである。


第五に、復興まちづくりである。自治体の復興計画には、建築士・弁護士等の専門家による住民のまちづくり支援が重要であることに鑑み、まちづくりをする住民及び被災自治体が当該専門家を円滑適切に利用できるような制度を設けて、国費による専門家の派遣を早急に実現するべきである。さらに、復興計画、まちづくりにおいてその主体である住民の合意形成が十分になされることは、東日本大震災復興基本法の基本理念において明確に求められている一方で、その合意形成が適宜適切になされているかを検証する制度は設けられていないことから、これを検証・是正するシステムを早期に構築すべきである。


以上、ここでは5点に絞り、被災者支援、原発事故被害者の救済に向けた取組と課題を述べたが、これらの課題以外についても、当連合会は、震災からの復興、原発事故の収束、被災者・被害者の救済が完全に達成されるまで、被災者・被害者に寄り添い、その「人間の復興」のために全力で取り組む所存である。

 

2013年(平成25年)3月11日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司