大阪・泉南アスベスト国家賠償請求第2陣訴訟大阪地方裁判所判決に関する会長声明

大阪地方裁判所は、2012年(平成24年)3月28日、大阪・泉南アスベスト国家賠償請求第2陣訴訟において、国の規制権限不行使の責任を認める判決を下した。



本判決は、大阪・泉南地域における石綿紡織業の100年間にわたる発展の陰で、早くから石綿肺や肺がんなどの深刻な石綿被害が工場内外で発生してきたことについて、国が適時適切な規制権限行使を怠った結果深刻な健康被害が生じたものであるとして、2010年(平成22年)5月19日の第1陣訴訟の大阪地方裁判所判決に続き、再び国の責任を認めたものである。



昨年8月25日の第1陣訴訟の大阪高等裁判所は、工業技術の発達や産業社会の発展を優先し、原告逆転敗訴の判決を下したが、本判決は、「経済的発展を優先すべきであるといった理由で労働者の健康を蔑ろにすることは許されない」と判示して、国がその責務を十分に果たしてこなかったことを再び明らかにした。国民の生命と健康を守る責務は国にとって最も重要かつ基本的な責務であり、最高裁判所は上記高裁判決を見直すべきである。また、国は本判決を真摯に受け止め、原告らの救済に取り組むべきである。



アスベストによる健康被害は、本件にとどまらず全国広範囲に及んでおり、今後も発生し続けることが懸念され、建設作業従事者のアスベスト被害については全国6地方裁判所でも損害賠償請求訴訟が提起されている。当連合会では、2006年(平成18年)1月18日付けで「『石綿による健康被害の救済に関する制度案の概要』に対する会長声明」を公表し、被害救済制度の創設に当たり、実効性のある被害救済を提言したが、現行の制度は今なお不十分なものにとどまっている。



当連合会は、国が、本判決を受けて、現行の石綿健康被害救済法の全面的な見直しを行い、全てのアスベスト健康被害の全面的救済を行うことを強く求めるものである。

 

2012年(平成24年)4月4日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児