日本司法支援センター予算の確保・増額を求める会長声明

平成23年度予算の「元気な日本復活特別枠」に関する評価会議は、12月1日、各省庁の要望事業に対する評価を発表した。


同評価会議の評価では、「セーフティネットとしての日本司法支援センターの事業の維持・強化」がB(事業の「内容」は積極的に評価できるが、「改革の姿勢」等の問題がある。)と判定され、「国民の負担増なき持続的経営を維持する視点から大幅な削減を図ることが条件」とされた。


日本司法支援センター(以下、「司法支援センター」という。)の事業の中心は、国選弁護業務と民事法律扶助業務であるが、前者については事件数に応じて義務的に予算が支出されるものであるから、仮に、「大幅削減」が実行されるとすれば、その対象は、民事法律扶助業務予算とならざるを得ない。


民事法律扶助は、国民の裁判を受ける権利(憲法32条)を実質的に保障し、資力の乏しい国民の正当な権利の実現と生活再建を図るための、不可欠な法的セーフティネットである。昨今の経済情勢の下、雇用問題の解決や生活再建のために、民事法律扶助を必要とする国民は急増しており、代理援助および書類作成援助の実績は、平成20年度8.6万件、21年度10.8万件、22年度12.6万件(見込み)と大幅な伸びを示している。23年度もこの傾向は変わらず、14万件を超えることが予想される。当連合会は、法務省の司法支援センターにかかる前記特別枠要望額322億円は、この国民の権利救済に必要不可欠な事件増に対応するためのものと理解している。


しかるに、民事法律扶助予算が要望額から大幅に削減されれば、要件を満たし民事法律扶助の利用を希望する国民が多数存在するにもかかわらず、来年度途中で予算に不足を来たし、司法支援センターが民事法律扶助事業を事実上停止する事態が生じるおそれが大きい。


そうなれば、民事法律扶助の有する法的セーフティネットとしての機能は失われ、資力の乏しい国民は司法手続を利用して権利の実現を図ることを実質的に断念せざるを得なくなる。そのような事態を断じて招いてはならない。


また、司法支援センターは、民事法律扶助業務のほかにも、情報提供業務や司法過疎対策業務等を行っているが、これら事業も国民の司法アクセスを向上させるために必要不可欠なものであり、民事法律扶助と同様、財政上の困難を理由にその取組を後退させることは許されない。


政府は、国民の生活と雇用を最重視する立場に立ち、国民の切実なニーズに応えるべく、民事法律扶助業務を中心とする司法支援センター予算を減額することなく確保し、その増額を図るべきである。


当連合会も、償還制度の改善等、前記評価において指摘されている事項については、司法支援センターと連携を図って適切に対応し、国民の需要に応えるべく民事法律扶助等の拡充に尽力する決意である。


2010年(平成22年)12月3日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児