死刑執行に関する会長声明

日本弁護士連合会は、死刑制度の存廃について国民的な議論が尽くされるまで死刑の執行を停止するよう、これまで再三にわたって法務省に対し要請し、本年6月14日には、法務大臣に対して死刑確定者に対し死刑を執行しないよう要請した。しかるに、当連合会の事前の要請を無視して、本日、大阪拘置所において1名、福岡拘置所において1名の死刑確定者に対して死刑の執行がなされたことは、誠に遺憾である。


死刑執行の対象者がどのような考慮の下で決められるかは、これまで明らかにされていない。本日死刑が執行された2名のうち1名は、死刑判決の確定から1年に満たない期間で死刑が執行されたものであり極めて異例である。また、本日の死刑執行も、これまでの多くの例と同様、国会閉会中になされたものであるが、何故このような時期に死刑が執行されるかも不明である。


死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年国連人権委員会は「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけをしている。


また、国際人権(自由権)規約委員会は、1993年11月と1998年11月の二度にわたって、日本政府に対して死刑廃止へ向けての措置を取ること及び死刑確定者の処遇を改善することについて勧告を出している。


さらに、欧州評議会は、2001年6月26日、アメリカと日本に対して死刑執行の一時停止を行い早急に死刑制度を廃止するように促す旨の決議を採択し、2002年6月13日には、日本、韓国、台湾における死刑廃止に関する決議を採択し、早急に死刑を廃止するか、もしくは死刑の執行停止を実現することを要請している。


このように、死刑廃止が国際的な潮流となっている中で、当連合会は、2002年11月「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱した。また、2004年10月宮崎で開催される第47回人権擁護大会で死刑問題をとりあげ議論をする予定である。


当連合会は、政府に対し、死刑制度に関する情報を広く公開することを要請するとともに、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう強く求めるものである。


2004年(平成16年)9月14日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛