名古屋刑務所豊橋刑務支所事件に対する会長声明

本日、名古屋地検は、名古屋刑務所豊橋刑務支所の男性看守部長を特別公務員暴行陵虐罪で起訴した。この事件は、看守部長が同支所に勾留中の女性被告人と性的関係を持ったというものであり、女性が他の刑務所への移監後に妊娠していることがわかったことで、同看守部長の犯行が発覚した。


国連被拘禁者処遇最低基準規則第53は、女性被収容者の性的虐待防止と尊厳の保障のため、女性の収容区域(女区)は、鍵の保管を含めて女性職員の管理下におかれなければならないこと、男性職員は、女性職員の同伴がなければ女区に立ち入ってはならないこと等を定めており、男性職員の女区への立入り自体を厳格に規制している。


また、監獄法施行規則29条は、独居拘禁に付された女性被収容者を、男性職員が単独で巡視することを禁じている。しかし、拘置所においては、職員不足を理由に、男性職員による女区での巡視や、男性職員による女区の鍵の管理が行われてきた。


当連合会は、この問題に関し、2003年1月21日に、法務省矯正局長に対し「拘置所においては、女区に勤務する職員は女性であることが原則である」、「災害・緊急医療その他のやむを得ない場合を除き、女性職員が同伴の上であっても男性職員が女区に立ち入ることのないよう、指導を徹底されたい」旨の勧告を行った。法務省が当連合会の上記勧告を真摯に受け止め、男性職員による女区立入りの原則禁止に向けた取り組みを行っていれば、今回の不祥事はあり得なかったと考えられ、当連合会の上記勧告に基づいて改善を行わなかった法務省の責任は大きいと言わざるを得ない。


現在、法務省は、未決被収容者の処遇を含めた監獄法の全面改正を進めようとしている。これに関して、当連合会は行刑改革会議と同様の審議機関を設け、諸外国の実情なども調査・検討して、新しい時代の必要性に見合った改革提言をまとめるべきであると主張しているところである。


当連合会は、法務省に対し、国際水準に見合った未決被収容者処遇の実現のために、抜本的な改革のための議論の場を設置するよう改めて求めるとともに、今回の事件を機に、二度と同種の事案が起こらないよう対策を講じ、職員への指導の徹底を図ることを強く求めるものである。


2004年(平成16年)7月14日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛