最高裁判所「下級裁判所裁判官指名諮問委員会規則」制定に関する会長声明

最高裁判所は、本日、「下級裁判所裁判官指名諮問委員会規則」を制定し、裁判官の任命過程に国民の意思を反映させるために、最高裁判所に下級裁判所裁判官指名諮問委員会を設置することを正式に決定した。


今後、最高裁判所は、裁判官の指名を行う前に、すべての任官希望者についてこの指名諮問委員会に諮ることとなり、委員会は、自ら任官希望者についての資料情報を収集した上で、その適否についての意見を最高裁判所に対して述べることとなる。最高裁判所がこの意見と異なる措置をとった場合にはその理由を委員会に説明しなければならないことなどにより、委員会の意見を事実上尊重する仕組みが取られている。


これまで、裁判官の指名過程は、最高裁判所の完全な裁量のもとに密室で行われ、再任拒否や新任拒否が行われて来たが、その多くが思想信条や団体加入を理由とする不当な差別的処分ではないかとの批判を招いてきた。また、指名過程の不透明さのゆえに、このような任官拒否が裁判官や司法修習生を萎縮させ、裁判の独立を危うくさせていると指摘されてきた。


このような経過に照らせば、委員の過半数を法曹以外の学識経験者が占める指名諮問委員会が設置され、さらに全国8カ所にその地域委員会が設置されて、裁判官の指名過程の透明化が確保され、国民の意思が反映される仕組みが創設されるに至ったことは、わが国の司法が国民の身近な存在となり、国民の司法に対する信頼を回復するうえで、きわめて重要な意義を有するものである。


当連合会は、今後、この指名諮問委員会が、その期待される歴史的役割を実質的に果たし得るよう、運営その他に関して力を尽くすとともに、最高裁判所が、幅広く、公正に委員を選任し、委員会の適正な運営を確保するように求めるものである。


2003年(平成15年)2月12日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹