アフガニスタン人難民認定申請者の収容に関する声明

政府は、2001年10月3日、難民認定申請中の、アフガニスタンの少数民族であるハザラ人8名を含む合計9名のアフガニスタン人について、出入国管理及び難民認定法に基づく退去強制手続に着手し、同人らを東京入国管理局に収容した。


しかし、これら9名は、本国においてタリバンに迫害されたとして、自らの住所を明らかにして日本に難民認定申請を行っていた者である。


難民認定申請中の者について退去強制を行えば、難民認定制度の趣旨が没却されることは言うまでもない。これら9名はいずれも不法入国ないし不法滞在の疑いを理由に収容されたものであるが、難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という)31条の解釈に関する、国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)執行委員会の結論第44の「難民申請者の拘禁」及び1997年7月付「庇護希望者の拘禁に関してのUNHCRガイドライン」は、難民認定申請者に対しては、たとえ不法に入国ないし滞在する者であっても、原則として拘禁を行うべきではないとしており、当連合会も、本年1月29日付クルド人難民人権救済事件において、その旨法務大臣に勧告したところである。政府も、近年は、難民認定申請中の者について、原則として収容を控える運用を行ってきた。従って、今回のアフガニスタン人難民申請者の収容は、難民条約に反した違法なものであり、極めて異例の処分といわざるを得ない。


また、今回の一斉収容は、タリバンによる迫害を理由として日本に庇護を求める人達をタリバンの支配地域に送還する結果となる手続を進めることとなり、迫害を受ける危険のある地域への送還禁止(ノン・ルフールマンの原則)を定める難民条約33条に反し、人道上も到底許されない。


なお、これら9名の難民認定手続の中で、本年9月のアメリカ合衆国におけるテロ事件に関係する事情聴取が行われ、その直後に今回、異例の一斉収容がなされた。これは、捜査等の目的のために行政手続である退去強制手続等を用いた疑いがあり、適正手続上問題がある。


政府は、これらアフガニスタン人難民認定申請者の身体拘束を直ちに解くべきであり、今後、難民認定申請中の者を収容するべきではない。


政府は、アフガニスタンの被災民・難民に対する人道的支援を行うことを明らかにしているのであるから、そうした立場から在日アフガニスタン人に対しても、難民認定をすすめるなど積極的な保護・援助に取り組むべきである。


2001年(平成13年)10月19日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡