民法900条4号但書前段(非嫡出子に対する相続差別)の無効判決をうけて

民法900条4号但書前段は、非嫡出子の法定相続分につき、嫡出子の2分の1としている。


東京高等裁判所は、本年6月23日、この民法の規定は、社会的身分による差別を禁止した憲法14条1項に違反し、無効であるとの決定を下した。 今回の東京高等裁判所の決定は、誠に時宜を得た画期的判断であり、当連合会としては高く評価したい。


非嫡出子の相続分については、1979年法務省より公表された民法改正要綱試案の中で、平等化が提案されたが、世論の反対が強いとして見送られた経過がある。


しかし、昨今諸外国では嫡出子と非嫡出子の地位の平等化を図る立法が相次ぎ、いわゆる先進諸国で差別を残しているのは日本のみ(フランスも一部差別を残していたが改正中)になっている。


わが国でも1987年に非嫡出子の住民票続柄記載表示をめぐる行政訴訟が提起されたのを初めとして、差別の合憲性を争う裁判が相次ぐようになった。


また、子どもの権利条約批准をめぐって、国会でも議論されるなど差別の廃止を求める声が高まってきている。


当連合会は、1990年5月の定期総会において、子どもの権利条約の早期批准およびこれにともなう国内法の整備を求める決議をしたのに加え、1991年11月に栃木県宇都宮市で開かれた第34回人権擁護大会においても、子どもの権利条約の早期批准を求める決議をし、これにともなうシンポジウム「子どもたちの笑顔が見えますか」の基調報告書の中で、非嫡出子に対する差別を撤廃するよう提言した。


また、昨年12月に法務省民事局参事官室より公表された「婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)」では、この問題に全く触れられていないため、当連合会は上記中間報告に対する意見書の中で、非嫡出子差別の問題もあわせて取り上げるよう求めた。


非嫡出子に対する差別は、憲法14条、13条、すべての子どもにつき出生による差別なしに同等の権利を有することを定めた国際人権規約24条1項や、近く批准される子どもの権利条約2条等に抵触するもので、わが国としてこのまま放置することは許されない。


よって、当連合会は関係機関に対し、すみやかに非嫡出子に対する差別廃止の法令改正作業に着手されるよう強く求めるものである。


1993年(平成5年)7月12日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎