加藤翁再審無罪判決に際しての談話

加藤老に対する再審無罪判決によって62年目にしてようやく無実の訴が、裁判で確認された。加藤老が1、2審で死刑を求刑されても屈することなく斗い、無実を訴えとおした活動は、真実と人権をいかにして守るべきか、を教えるものである。氏の苦斗に心から敬意を表し、今日の成果を共に喜ぶ。


検察庁は誤れる訴追のもたらしたいいようのない被害に思いをいたし、この判決に上告を申立てないことを速やかに公表し、その立場を明らかにすべきである。


加藤老の今次再審申立てにあたり、広島を中心に各地から結集された弁護人各位ならびに加藤老を支援してきた多くの人々の、負担をかえりみない努力が本日の判決にみのったものである。わが日弁連より派遣した担当委員が弁護団に参加し、一定の任務を果たすことができたことを喜び、科学の成果のもとに確定判決の誤りを究明された鑑定人の努力に敬意を表する。


惟うに、この長い歳月の間に施行されていた3つの刑事訴訟法が、今回までこの老人を救済しえなかったことは、甚だ重大な問題を含んでいる。


これまでの刑事再審制度とその運用が、無実であっても、それを受け入れて救済するには、その門があまりにも狭く、かたくなであったことを示している。


日弁連の提唱する刑事再審法改正の実現は、いまや、一日も急がねばならぬ緊急の課題であり、正義の要求である。立法府の活動を注目していきたい。


われわれは、刑事再審の分野での日弁連の責任がますます重くなっていることを自覚し、任務の遂行に一層努力する所存である。


昭52・7・7記者発表