日弁連新聞 第543号

臨時総会開催
3月1日 弁護士会館

「司法修習生の修習期間中に給与及び修習給付金の支給を受けられなかった会員に対する給付金に関する規程制定」などすべての議案を可決

 

臨時総会が開催され、代理出席を含め1万793人が出席した。「司法修習生の修習期間中に給与及び修習給付金の支給を受けられなかった会員に対する給付金に関する規程制定」などの議案について活発な審議がなされ、いずれも可決された。なお、令和元年度定期総会は、6月14日(金)に東京で開催される予定である。

 

司法修習生の修習期間中に給与及び修習給付金の支給を受けられなかった会員に対する給付金に関する規程制定など2議案を可決

いわゆる谷間世代の会員を対象に、弁護士としての登録期間が通算して5年経過していること等の受給要件を満たす場合に第2号議案の採決の様子、給付金20万円を支給する規程を制定するもの。2018年5月の第69回定期総会決議を受け、谷間世代の会員が経済的負担や不平等感によって法曹としての活動に支障が生ずることのないよう、日弁連内における施策を実現するものである。

「谷間世代の問題を会員全体の問題として受け止め、さまざまな解決策を検討したことは大いに評価できる」「給付金の支給は会費減額よりも良い制度であり、財務的に給付金の額も適当である」等の賛成意見が多く出され、採決の結果、賛成多数で可決された。

あわせて、受給要件のうち弁護士としての登録期間が通算して5年経過していること(規程第3条第1号)に関し、出産、育児、疾病等その他合理的理由により期間を満たさない場合の救済策を速やかに検討する旨の附帯決議が可決された。


育児期間中の会費免除に関する規程改正など2議案を可決

育児期間中の会費免除に関する規程を改正し、育児期間中の会員の会費および特別会費の免除期間を、現行の6か月以内から12か月以内に延長するもの。あわせて、これに関連する外国特別会員基本規程を改正するものである。

「育児中の会員が業務と子育てを両立するため免除期間の延長は有用である」等の賛成意見が出され、採決の結果、いずれも賛成多数で可決され、一年以内に施行される。

 

定期総会の開催時期の変更に係る会則改正など5議案を可決

定期総会の開催時期を現行の5月から6月に変更するため会則を改正するもの。また、会則および外国特別会員基本規程を改正して、代理権を証する書面の日弁連への提出期限を会日の3日前の日の午後5時までに変更し、あわせて議事規程を改正して、総会議案の通知期限を会日の10日前までに変更するもの。さらに、毎会計年度における4月から6月分までの暫定予算を前年度予算の議決と同時に議決することを常例とするよう会計及び資産に関する規程を改正し、平成31年度(一般会計・特別会計)6月分の暫定予算を議決するものである。

採決の結果、いずれも賛成多数で可決された。なお、令和元年度定期総会は6月14日に東京(弁護士会館2階講堂「クレオ」)で開催される予定である。




マレーシア弁護士会と友好協定締結
共同セミナーを開催

日弁連は2月19日、マレーシア弁護士会と友好協定を締結した。ジョージ・ヴァルギース会長(右)と記念品の交換をする菊地会長
マレーシア弁護士会は1947年に設立された歴史ある弁護士会であり、マレーシアに3つある弁護士会のうち、西マレーシアで活動するすべての弁護士が強制的に加入する「全国包括法曹団体」である。
2016年に開催された第27回アジア弁護士会会長会議をきっかけに交流を開始し、2018年6月には、国際交流委員会を中心とした調査団をマレーシアに派遣して、友好協定締結先としてふさわしいことを確認した。

友好協定締結に際しては、ジョージ・ヴァルギース会長をはじめとする総勢20人のマレーシア弁護士が来日し、友好協定締結記念式典および日弁連とマレーシア弁護士会の共同セミナー等に出席した。
記念式典には、駐日マレーシア大使館からファドリ・アディラ臨時代理大使も参加し、祝辞が述べられた。

記念式典後に開催された共同セミナーでは、ヴァルギース会長から、法の支配と自由と民主主義に関するマレーシア弁護士会の取り組みについて講演があった。マレーシア弁護士のメガット・ヒザイニ・ハッサン氏からは、「マレーシアにおける司法制度と日本企業の経済活動への影響について〜マレーシアのイスラム金融に焦点をあてて〜」と題した講演が行われた。

日弁連は、友好協定締結を機に、マレーシア弁護士会と相互連携・協力を一層深める所存である。


(事務次長 小町谷育子)


ひまわり法律相談プロジェクト
街かど相談会in広島
3月2日 広島市

日弁連は毎年、「ひまわりお悩み110番」「ひまわり相談ネット」の広報活動として、全国一斉に法律相談会を開催している。本稿では、3月2日前後に全国で開催した「街かど相談会」のうち広島弁護士会が広島市内で行った相談会の様子を報告する。

 

広島弁護士会は、市内のショッピングモール(ゆめタウン広島)で「まちかど無料法律相談相談会の様子会」を開催した。当日はオープンスペースでの相談も含め、60件を超える相談があった。1000人分用意した広報用グッズが午前のうちになくなるなど、大盛況となった。

「街かど相談会」を実施する際に重要なのは、手に取りたいと思うグッズ、思わず足を止めたくなるイベントなどで道行く人の気を引くことである。広島では、以前は透明のビニール製手提げ袋にチラシなどのグッズを入れて配布していたが、昨年からは布製のエコバッグを作成し、チラシなどを入れて配布するようにしたところ、受け取ってもらえる割合が飛躍的に高まった。また、愛知県弁護士会の取り組みに倣い、子ども向けに弁護士や裁判官のコスチュームで写真撮影できるコーナーを設けたところ、思いのほか多くの子どもたちが写真撮影を楽しんだ。

もう一つ重要なのは、弁護士が羞恥心を捨てることであろう。ただでさえ敷居が高いと思われている弁護士が、黙って椅子に座っていても誰も近寄っては来ない。笑顔で朗らかに「弁護士会です! よかったら使ってください」とエコバッグを渡す。足を止めた人にすかさず「無料相談会やっていますよ」と声をかける。最初は恥ずかしがって小さな声しか出せなかった弁護士が、何度かの成功体験を経て次第に大きな声が出せるようになったころには、自然と足を止める人も増え、相談者の列ができているはずである。


(日弁連公設事務所・法律相談センター 広報PT座長 上椙裕章)

 

4月1日から都税の証明等の郵送申請先が変わりました
「都税証明郵送受付センター」に一本化

都税の納税証明や23区の固定資産評価証明書等を郵送にて申請する場合、これまでは所管の都税事務所で受け付けていましたが、4月1日からは郵送による証明書等の発行業務を「都税証明郵送受付センター」で集中して行っています。

今後、都税の証明等を郵送にて申請する場合は、以下の宛先に送付してください。

申請にあたっての手数料や必要書類などの詳細は、日弁連ウェブサイト内会員専用ページ(HOME≫書式・マニュアル≫弁護士会照会・職務上請求≫固定資産評価証明書の交付申請書)に東京都主税局が作成した周知チラシを掲載していますので、ご覧ください。


〒112-8787 東京都文京区春日1-16-21
都税証明郵送受付センター



ひまわり

平成も残すところ1か月を切った。昭和から平成に元号が変わった時、筆者は司法試験受験生であった。当時の合格者数は約500人、合格率1〜2%という時代であり、卒業後も大学の読書室に通う司法試験浪人が多く見受けられた▼筆者が合格した時は、合格者数が700人に増員され一般教養科目が廃止されていたので従前よりは合格しやすくなっていたものの、それでも合格率は3.4%であった。世の中がバブル景気で浮かれているのを尻目に、日中は大学の読書室、夕方は大学の法職課程教室の講義や答案練習会、夜は大学の体育局体育館での管理人兼夜警のバイトという受験生活を送っていたあの頃が懐かしく思い出される▼平成の時代は司法試験改革の時代でもある。筆者の合格後、合格枠制(いわゆる丙案)の実施、合格者数の大幅な増員、法科大学院設置など目まぐるしい改革が行われた。いずれも有為な人材が法曹界を目指せるようにすることを目的としていた▼先般、法学部から法科大学院修了まで最短5年の法曹コースの設置、法科大学院在学中の司法試験受験を認めることなどを内容とする法案が国会に提出された。より多くの有為な人材が法曹界を目指すような魅力があり、受験生に過度な負担を与えない制度になることを望む。


(Y・N)


2019年度役員紹介

3月8日に開催された代議員会(本人出席349人、代理出席226人)において、2019年度役員が選出された。就任に当たり、15人の副会長の抱負と理事および監事の氏名等を紹介する。

 

篠塚 力(東京・36期)

篠塚 力(東京・36期)[出身]福岡県
[抱負]法曹養成、民事司法改革、依頼者と弁護士の通信秘密保護、民事裁判手続等のIT化、綱紀・懲戒、日本弁護士政治連盟などを担当します。菊地会長を補佐し、弁護士会と社会との信頼の絆を深めたいと念じています。


 


平沢 郁子(東京・41期)

平沢 郁子(東京・41期)[出身]栃木県
[抱負法律サービス展開本部、研修、労働法制、男女共同参画、両性の平等、リーガル・アクセス・センター、公設事務所・法律相談センターなどを担当します。弁護士会の意思決定における多様性の確保に配慮しながら、全力で会務に取り組みます。


 

佐藤 順哉(第一東京・34期)

佐藤 順哉(第一東京・34期)[出身]東京都
[抱負]財務・経理、国際関係(国際戦略、国際活動、国際交流、国際仲裁、中小企業の海外展開支援、外国法事務弁護士)、会館運営・地代問題などを担当します。会員の皆さまの期待に応え、かつ、市民社会に広くその活動が認められるよう、会長を補佐して頑張ります。


 

関谷 文隆(第二東京・44期)

関谷 文隆(第二東京・44期)[出身]栃木県
[抱負]法科大学院センター、法曹養成、男女共同参画、両性の平等、広報、FATF対応、会則改正、信託センターなどを担当します。弁護士会の会長と兼務ですが、菊地会長の補佐役として2年目の総仕上げのために、全力で諸課題に取り組みます。


 

難波 幸一(埼玉・30期)

難波 幸一(埼玉・30期)[出身]埼玉県
[抱負]憲法問題、情報問題、公害・環境、司法修習などを主とし、副として法曹養成、法科大学院センターなどを担当します。会長を補佐して日弁連の諸課題の解決に取り組み、人権擁護と社会正義の実現のために努力します。

 

 


齋藤 和紀(千葉県・41期)

齋藤 和紀(千葉県・41期)[出身]福島県
[抱負]公設事務所・法律相談センター、中小企業法律支援センターなどを担当します。できる限り議論を尽くし、会員の声に耳を傾ける、そんな副会長でありたい。

 


 

今川  忠(大阪・34期)

今川 忠(大阪・34期)[出身]京都府
[抱負]弁護士倫理、リーガル・アクセス・センター、弁護士費用保険拡大戦略会議、民事裁判手続などを担当します。日弁連が直面する諸課題の解決について、「三方よし」を旨に菊地会長を補佐し取り組む覚悟です。


 


白 承豪(兵庫県・45期)

白 承豪(兵庫県・45期)[出身]韓国ソウル市
[抱負]人権擁護、国内人権機関実現、国際人権問題、国際交流、死刑廃止、憲法問題、総合法律支援本部などを担当します。基本的人権の擁護と国際協調主義の観点から会長を補佐し、日弁連の発展のために全力を尽くします。

 

 


鈴木 典行(愛知県・37期)

鈴木 典行(愛知県・37期)[出身]愛知県
[抱負]刑事弁護センター、取調べの可視化本部、弁護士業務改革、弁護士業務改革シンポジウムなどを担当します。弁護士が基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命を果たし、法の支配が実現するよう努めます。

 

 


近藤 幸夫(岡山・39期)

近藤 幸夫(岡山・39期)[出身]岡山県
[抱負]国選弁護、子どもの権利、国選付添人、人権擁護大会シンポジウム(第1分科会)、法制審少年法・刑事法部会バックアップ会議、弁護士職務の適正化、依頼者見舞金制度、法教育などを担当します。幾多の先達の努力を継いで、皆さまとともに時代と明るく切り結び、ネットワークを広げることに汗をかきます。

 


原田 直子(福岡県・34期)

原田 直子(福岡県・34期)[出身]宮崎県
[抱負]両性の平等、家事法制、若手弁護士サポートセンター、常勤スタッフ弁護士の配置に関する検討ワーキンググループなどを担当します。日弁連の諸活動に多様な視点を取り入れられるよう、会長を補佐して頑張ります。

 



木山 義朗(鹿児島県・35期)

木山 義朗(鹿児島県・35期)[出身]鹿児島県
[抱負]倒産法制、犯罪被害者支援、弁護士業務妨害対策、民事介入暴力対策、業際・非弁・非弁提携問題、弁護士会照会制度などを担当します。会長を全力で補佐し、社会正義の実現に尽力します。

 


 

小池 達哉(福島県・46期)

小池 達哉(福島県・46期)[出身]福島県
[抱負]災害復興支援、消費者問題、高齢者・障害者権利支援センター、全国冤罪事件弁護団連絡協議会などが担当です。小規模弁護士会の視点も大切にしながら、会長を補佐して会員の皆さまのお役に立ちたいと思っています。

 

 


愛須 一史(札幌・44期)

愛須 一史(札幌・44期)[出身]北海道
[抱負]司法制度調査会、弁護士任官等推進、裁判官制度改革・地域司法計画、総合法律支援本部、知的財産などを担当します。弁護士がその使命を果たせるよう、また、活力ある日弁連の実現を目指して、諸課題に取り組みます。

 

 


小早川 龍司(香川県・40期)

小早川 龍司(香川県・40期)[出身]香川県
[抱負]司法修習費用問題対策本部、人権擁護大会、接見交通、刑事拘禁、刑事法制、GPS捜査、法制審少年法・刑事法部会バックアップ会議などを担当します。基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命を果たせるよう、会長を補佐して、日弁連のさまざまな課題に誠心誠意取り組みます。

 

 


理事

  • 津村 政男(東京)
  • 山中 尚邦(東京)
  • 濱田 広道(東京)
  • 寺町 東子(東京)
  • 永島 賢也(東京)
  • 大塚 康貴(東京)
  • 大塚 和紀(東京)
  • 上柳 敏郎(第一東京)
  • 鈴木 啓文(第一東京)
  • 千代田有子(第一東京)
  • 神田 安積(第二東京)
  • 木内 昭二(第二東京)
  • 水上  洋(第二東京)
  • 河本 智子(第二東京)
  • 木村 良二(神奈川県)
  • 伊藤 信吾(神奈川県)
  • 吉澤 俊一(埼玉)
  • 小見山 大(千葉県)
  • 根本 信義(茨城県)
  • 山田  実(栃木県)
  • 紺  正行(群馬)
  • 鈴木 重治(静岡県)
  • 吉澤 宏治(山梨県)
  • 相馬 弘昭(長野県)
  • 齋藤  裕(新潟県)
  • 増市  徹(大阪)
  • 小池 康弘(大阪)
  • 飯島 奈絵(大阪)
  • 三野 岳彦(京都)
  • 安保 千秋(京都)
  • 堺  充廣(兵庫県)
  • 北岡 秀晃(奈良)
  • 石黒 良彦(奈良)
  • 永芳  明(滋賀)
  • 葊谷 行敏(和歌山)
  • 山下 勇樹(愛知県)
  • 服部 千鶴(愛知県)
  • 森田 明美(三重)
  • 鈴木 雅雄(岐阜県)
  • 吉川 健司(福井)
  • 坂井美紀夫(金沢)
  • 菊  賢一(富山県)
  • 今井  光(広島)
  • 野村 雅之(山口県)
  • 小林 裕彦(岡山)
  • 森  祥平(鳥取県)
  • 鳥居 竜一(島根県)
  • 山口 雅司(福岡県)
  • 時枝 和正(福岡県)

  • 奥田 律雄(佐賀県)
  • 森永 正之(長崎県)
  • 原口 祥彦(大分県)
  • 清水谷洋樹(熊本県)
  • 笹川 理子(鹿児島県)
  • 黒木 昭秀(宮崎県)
  • 赤嶺 真也(沖縄)
  • 鎌田 健司(仙台)
  • 鈴木 康元(福島県)
  • 脇山  拓(山形県)
  • 吉江 暢洋(岩手)
  • 西野 大輔(秋田)
  • 山内 賢二(青森県)
  • 樋川 恒一(札幌)
  • 八木 宏樹(札幌)
  • 植松  直(函館)
  • 小門 史子(旭川)
  • 荒井  剛(釧路)
  • 堀井  実(香川県)
  • 篠原  健(徳島)
  • 矢野 公士(高知)
  • 丸山 征寿(愛媛)


監事

  • 鈴木 健二(東京)
  • 大澤 英雄(第一東京)
  • 荒井 雅彦(栃木県)
  • 藤掛 伸之(兵庫県)
  • 三浦 敏秀(三重)

弁護士任官者の紹介

4月1日付で次の会員が裁判官に任官した。

 

廣瀬 一平氏

廣瀬 一平氏

54期(大阪弁護士会)
司法修習終了後、山本次郎法律事務所で勤務し、堂島総合法律事務所にパートナーとして合流。
〈初任地 福岡高裁〉 

 

 

 


民事司法改革推進の取組に関する
確認事項を承認

日弁連は2月15日の理事会で、「民事司法改革推進の取組に関する確認事項」(以下「確認事項」)を承認した。

民事司法改革に関しては、2014年3月19日付「民事司法改革課題に取り組む基本方針」の中で、改革課題の実現について、①運用改善で対応できるもの、②従来の法改正のプロセスで実現できるもののほかに、③政府に新検討組織を設置して新たな法整備をするなどの方法により実現を目指すべきものがあり、それらを分類、整理した上で、適切な方法によって実現することを目指すとした。このうち③については、改革諸課題のうち「制度改革に相応の予算措置を必要とする課題、また、国際的な観点から検討を必要とする課題、司法の役割とその在り方につき、広く国民的議論を必要とする課題」が新検討組織で取り扱うものとしてふさわしく、これらを検討するために設置される新検討組織における審議に日弁連の意見を反映させて実現することを目指すこととした。そして、会内の議論を十分に行った上で改めて新検討組織の設置に向けた働きかけを行うことを決定するとした。

その後、2018年6月、政府のいわゆる「骨太の方針2018」において「司法制度改革推進法の理念に則り、総合法律支援など利用しやすく頼りがいのある司法の確保、法教育の推進などを含む民事司法制度改革を政府を挙げて推進する」と明記されたことを受け、確認事項において、前記基本方針を踏まえ、今後の日弁連としての取組方針として組織体制・権限、取り上げるべき課題、検討期間、事務局体制、準備室の設置、日弁連の役割等について明確にしたものである。

政府内に民事司法改革の検討組織が設置される見込みであり、日弁連としては、確認事項に沿って働きかけを行うこととしている。

とりわけ、この検討組織において具体的にどのような課題に取り組むかが重要であり、民事司法改革総合推進本部に課題整理チームを組織して検討を行っている。

 

(民事司法改革総合推進本部本部長代行 小林元治)

 

日弁連短信

成年後見制度利用促進への対応


 

事務次長 奥 国範

新年度になりました。

東京では、3月21日に開花日を、27日に満開日を迎えたとのこと。霞が関では外務省前の桜がきれいに咲いていました。
全国に目を向けると、那覇ではすでに1月10日に開花し、釧路では5月17日に開花日を迎える予定とのことです。

改めて、南北に長い日本列島における四季の妙を感じさせられます。
新年度にあたり、日弁連も15人の副会長が就任し、新たな執行部体制でスタートしました。
副会長は、去る3月8日開催の代議員会における選任直後から綿密な引き継ぎを行っていますが、会務の継続性を保持し、より円滑な意思決定と会務執行を実現するため、事務次長として力を尽くしたいと思います。

私の担当業務の中から一つ、喫緊の課題に関する取組をご案内します。
平成28年5月に成年後見制度の利用の促進に関する法律が施行され、政府は平成29年3月に成年後見制度利用促進基本計画(以下「基本計画」)を閣議決定しました。

基本計画では、①利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善、②権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり、③不正防止の徹底と利用しやすさとの調和という3つのテーマが掲げられています。

①に関連し、最高裁が提案する成年後見人の新しい選任モデルと報酬の在り方について最高裁と協議を続けてきました。政府の専門家会議の席上で最高裁が言及したため、新聞各社が報道しており、目にされた会員も多いことと思います。

最高裁の提案はあくまでも方向性の提案であり、家裁が具体的にどのような運用に変更するかは、今後の弁護士会との協議に委ねられ、弁護士会の取組が重要です。


③に関しては、日弁連は2月の理事会で、弁護士後見人等の不正行為等によって被害が生じた場合にこれを填補する保証機関型信用保険の導入を検討する旨の方針を確認しました。直後に開催した各ブロックでの協議会で会員からいただいた多くのご質問やご意見をしっかりと踏まえて、導入に向けた制度設計を詰めていきたいと思います。

本年度は基本計画の中間年にあたり、政府や各自治体も取組を加速させると思います。日弁連もしっかりと対応していきたいと思います。


(事務次長 奥 国範)


第15回
全国弁護士会ADRセンター
実務懇談会
2月22日 弁護士会館

ADRセンターを設置する弁護士会は徐々に増えているが、利用件数の低迷など悩みを抱えている弁護士会もある。各地からADRに関わる弁護士と事務局職員が集まり、実務対応に関する意見交換や、利用件数の増加に向けた取り組みについての検討を行った。

 

事務局の悩みはさまざま

3つのグループに分かれ、ADRセンターを設置する弁護士会の事務局職員を中心にディスカッションを行った。相談前置でない弁護士会では、ADRの理解が十分ではない相談担当弁護士もいるため申立て前の問い合わせに事務局が対応する場面が増えがちであり、相談者にADRを勧めてよいのか、他の手続の説明をしてもよいのか悩ましいとの報告があった。申立て後も問い合わせに誰がどこまで対応すべきか、中立性の観点から判断が難しいとの意見があった。メールの添付ファイルへのパスワード設定や記録廃棄などについて、規則があると運用しやすいとの意見も出された。


弁護士会の広報活動の在り方

ADR(裁判外紛争解決機関)センターの三輪貴幸委員(埼玉)は、埼玉弁護士会で契約紛争に関する申立てや本人申立てが増えた理由としてウェブサイトの効果を挙げた。ウェブサイトで7つの具体的事例を取り上げたほか、調停との違いを詳しく説明し、期日設定の柔軟性や迅速性などのメリットをアピールし、申立書のひな型や記載例を掲載したことを報告した。

江口伸介委員(長野県)は、相談前置としている長野県弁護士会では、弁護士が多数出席するイベントなどでADRを宣伝し、これを受けた弁護士が法律相談でADRを勧める流れができたことが、利用件数増加の要因だと分析した。また、弁護士向け・申立人向けの説明書、申立書のひな型・記載例、紹介状、重要事項説明書の「申立てセット」を弁護士に送付したことも、利用件数の増加に寄与していると述べた。



第2回
少年法の適用年齢引下げ問題に関する各界懇談会
3月11日 弁護士会館

少年法の適用年齢引下げ問題について、子育てや教育・福祉・非行少年の更生などに関係の深い市民団体等に呼びかけ、第2回目の各界懇談会を開催した。

 

子どもの権利委員会の山﨑健一幹事(神奈川県/法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会委員)から、1月30日の法制審議会部会の議論状況および4月以降も部会で議論が続けられる見通しであるとの報告があった。その後、参加団体から議論状況についての報告がなされ、日本児童青年精神医学会子どもの人権と法に関する委員会および主婦連合会から、それぞれ、適用年齢引下げに反対する意見を公表したことが紹介された。

参加者からは、「厳罰化が問題解決に繋がるわけではない。非行が発生する仕組みを把握して対策を講じることが大切であり、適用年齢はむしろ引き上げるべき」「非行少年に対する丁寧な調査や教育こそが、新たな加害者・被害者の発生を防ぎ、社会全体の安心・安全につながる」など、改めて適用年齢の引下げに反対する意見が出された。

これらの問題点を多くの国会議員に知ってもらう必要性が確認され、懇談会に参加した団体の一部の共催により、4月9日に参議院議員会館において、院内集会を開催することを決定した。


 

国際シンポジウム
揺さぶられっこ症候群(SBS)を知っていますか
2月16日 弁護士会館

arrow_blue_2.gif国際シンポジウム「揺さぶられっ子症候群(SBS)を知っていますか」

 

揺さぶられっこ症候群(以下「SBS」)と診断され保護者が虐待の疑いで訴追される事例が注目を浴びている。硬膜下血腫・網膜出血・脳浮腫の三徴候があれば揺さぶり行為を推定する、いわゆる「SBS仮説」の問題点を科学的観点から議論し、今後取り組むべき課題の発見につなげるためシンポジウムを開催した。(主催:日弁連・龍谷大学犯罪学研究センター、共催:東京三弁護士会ほか)


講演するエリクソン教授

ウェイニー・スクワイア博士(元オックスフォード大学ジョン・ラドクリフ病院医師・神経病理学)は、SBSの「特異」な特徴は、通常分娩後の乳幼児や、事故による落下などさまざまな自然原因を持つ乳幼児にも広く見られるものであり、SBS仮説に科学的根拠はないと述べた。その上で、頭部外傷が虐待によるものであるかを判断するのは、医師ではなく裁判所の仕事であると指摘した。


アンダース・エリクソン博士(ウメオ大学教授・法医学)は、スウェーデン医療技術評価局が実施したSBSに関する先行研究の文献調査に関与した経験を語り、ほとんどの研究はSBS仮説を循環論法的に用いる、用語の定義をしないなどの問題を抱えた、科学的に質の低いものであったと指摘した。今後は、研究対象となるべき症例を確保するために国際協力などの工夫を重ね、より良い研究を行っていく必要があると訴えた。


その後、家庭内での転倒事故にもかかわらず虐待を疑われ、親子分離の末に逮捕された経験を持つ2組の家族からのビデオメッセージが紹介された。


パネルディスカッションでは、小児脳神経外科の専門医として多数の症例を経験している埜中正博氏(関西医科大学附属病院小児神経外科診療科長・診療教授)、日弁連刑事弁護センターSBS仮説に基づく虐待訴追研究・対策チームの秋田真志座長(大阪)、岩佐嘉彦会員(大阪/大阪市児童虐待防止体制強化会議委員)がそれぞれの立場から、病院の警察に対する通報基準、児童相談所の対応と警察の捜査の関係、医師の意見書・鑑定書が捜査に与える影響等についてコメントした。



シンポジウム
死刑、いま命にどう向き合うか ~京都コングレス2020に向けて~
3月2日 龍谷大学

arrow_blue_2.gif死刑、いま命にどう向き合うか ~京都コングレス2020に向けて~

 

2020年4月に京都で国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が開催される。2020年までに死刑廃止を目指すとした福井宣言を踏まえ、死刑や命の問題を考えるため京都弁護士会とシンポジウムを開催した。(共催:龍谷大学犯罪学研究センター・近畿弁護士会連合会ほか)

 

第1部では刑事裁判や死刑を取り扱う映画「三度目の殺人」(是枝裕和監督)が上映された。

 

第2部の基調報告「京都コングレス2020~日弁連がめざすもの~」では、コングレスは国際レベルでの法の支配を目標としており、日本にも国連の勧告を真摯に検討することが求められるとの報告があった。

 

ゲストスピーチでは、遠山清彦衆議院議員、藤野保史衆議院議員からのメッセージの後、前田万葉氏(ローマカトリック教会枢機卿)が、教皇フランシスコが「カテキズム」の死刑に関する項目の書き換えを命じ、死刑を許容しないとしたことを紹介した。アリスター・カーマイケル氏(英国国会議員)は、英国における死刑廃止の経緯を説明し、被害者遺族への共感を欠く死刑廃止は成功しない、死刑廃止は簡単ではないが正しい道であると訴えた。

 

ジャーナリストの安田純平氏と堀川惠子氏による対談では、安田氏がシリアでの過酷な拘束経験などを語った。

 

ヘルムート・オルトナー氏(ドイツ人ジャーナリスト)は講演で、コングレスに向けて人権活動家や刑法学者がイニシアティブを発揮すべきと説いた。

 

パネルディスカッションでは安田氏、堀川氏、浜井浩一教授(龍谷大学)がパネリストとして登壇した。浜井教授が日本の死刑はその執行の実情が伝わらず社会の反応が薄いとの問題を提起し、安田氏からテロリスト、堀川氏から永山則夫氏、浜井教授から長期受刑者の実像について報告があった。堀川氏からは、犯罪被害者遺族の多くが絶望的な状況にいることについて説明があった。また、浜井教授から国が犯罪被害者や遺族を手厚く支援しているノルウェーの制度の紹介もあった。

 

京都コングレスまであと一年、福井宣言の実現に向けてさらなる取り組みが必要である。


(死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部 事務局長代行 辻 孝司)

 

 

「カンドゥー法律事務所」 オープン!

3月13日、千葉市のイオンモール幕張新都心にある仕事体験テーマパーク「カンドゥー」に、日弁連の協賛で新アクティビティが誕生した。子どもたちが弁護士の仕事を体験できる「カンドゥー法律事務所」である。カンドゥーは親子三世代で楽しめるテーマパークであり、幅広い世代の方々に弁護士の仕事への理解を深めていただくことを目指している。


子どもたちが体験するのは刑事弁護活動。

オープニングのクイズにはカンドゥーのキャラクター「イゴー」とジャフバも登場した――ある日、研究所で働く助手のジョッシュが、研究用の貴重な木の実を大事に抱えて運んでいると、時を同じくして発生した木の実窃盗事件の犯人と間違われ、逮捕されてしまう。「弁護士さん、ぼくは盗んでなんかいないです!」訴えるジョッシュのために、子ども弁護士たちが立ち上がった! 子どもたちは、ジョッシュのえん罪を晴らすため、人的・物的証拠を求めてテーマパーク内を探し回る。そして迎えるジョッシュの公判。子どもたちは、ジョッシュを救うことができるのか…。
子どもたちは、特大サイズの弁護士バッジ型ワッペンのついた青いジャケットを着て、子ども弁護士として活動する。本稿で詳細を記すことは避けるが、アクティビティは、弁護士に求められる「聞く力」や「証拠に基づいて判断する力」を子どもたちに意識させる構成となっている。また、参加者だけの特典として弁護士手帳と弁護士缶バッジのお土産(本紙第542号4面参照)も用意されている。


さっそく体験した子どもたちに話を聞いてみると、「ジョッシュは『やっていない』って言っていたから、絶対助けなくちゃって思ったの」「裁判で話をするのは緊張したなぁ」などと、達成感あふれる笑顔で感想を聞かせてくれた。


シナリオは、日弁連広報室が刑事調査室の協力を得ながら作り上げたものである。機会があれば、ぜひ足を運んでいただきたい。



第97回国際人権に関する研究会
条約機関強化国連総会決議レビューについて
3月8日 弁護士会館

arrow_blue_2.gif第97回国際人権に関する研究会「条約機関強化国連総会決議レビューについて」

 

国連総会は2014年、条約機関制度の効果的機能の強化・向上に関する決議を採択した。2020年4月9日までに、同制度の持続性を確保するために取られた措置の効果をレビューし、効果的機能の強化・向上のためにさらなる行動を決定することとされている。
条約機関制度を巡る最新の国際的動向などについての講演会を開催した。


国連子どもの権利委員会の委員で国際人権問題委員会の大谷美紀子委員(東京)が講演を行い、過去の条約機関改革議論について、2014年の決議に結びついたピレイ人権高等弁務官報告書など4つの報告書や提案を紹介し、概要を説明した。大谷委員は、ピレイ報告書は統計などの客観的な情報と、条約機関の委員やNGOその他多くの関係者の意見に基づく検討を経た、具体的な課題と説得力のある改革案を数多く提示しており、今日においても参考になると評価した。さらに、Geneva Academy report が条約機関による審査のスケジュールなどについて具体的な改革案を示したことを契機に、条約機関による議論が本格化してきたこと、2月に条約機関の代表がコペンハーゲンで会合を持ったことなど最近の状況にも触れた。大谷委員は、条約機関の現状について問題点を指摘し、審査のスケジューリングに規則性を持たせるべきなどの意見を述べた。また、勧告の実施についても議論を深めるべきであると力を込めた。


講演後の質疑応答では、複数の条約機関による同じ課題についてのオーバーラッピングの問題などについて、有益なやり取りがなされた。


条約機関とは

国連で採択された各人権条約について、締約国による条約の履行状況を国際的に監視するために各条約に基づいて設置された個人専門家から成る委員会。条約の締約国は履行状況について定期的に報告を提出する義務があり、その報告等をもとに履行状況について審査を行う。



ブックセンターベストセラー
(2019年1月・手帳は除く) 協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 模範六法2019 平成31年版 判例六法編修委員会 編 三省堂
2 民事反対尋問のスキル−いつ、何を、どう聞くか? 京野哲也 編著 ぎょうせい
3 詳解 相続法 潮見佳男 著 弘文堂
4 相続道の歩き方

中村 真 著

清文社
5 Q&A 改正相続法のポイント 日本弁護士連合会 編 新日本法規出版
6 有斐閣判例六法Professional 平成31年版 宇賀克也・中里 実・長谷部恭男・
佐伯仁志・酒巻 匡 編集代表
有斐閣
7 新制度がこれ1冊でわかる Q&A 改正相続法の実務 東京弁護士会法友会 編 ぎょうせい
8 会社法[第2版] 田中 亘 著 東京大学出版会
9 携帯実務六法2018年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
10 相続実務が変わる!相続法改正ガイドブック 安達敏男・吉川樹士・須田啓介・
安重洋介 著
日本加除出版




eラーニング人気講座ランキング 2018年12月~2019年2月

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順位 講座名 時間
1 中小企業向け弁護士費用保険について 9分
2 LAC制度の概要 12分
3 交通事故を中心とした偶発事故対応弁護士費用保険について 38分
4 交通事故刑事弁護士費用保険について 22分
5 業務妨害行為対応弁護士費用保険について 12分
6 早わかり 相続法改正1~配偶者保護・特別の寄与 40分
7 早わかり 相続法改正2~遺産分割・遺言・遺留分 46分
8 2017年度ツアー研修 第4回 実践!労働審判・労働事件の実務 150分
9 労働問題の実務対応に関する連続講座 第5回 労働審判ほか労働事件の手続 217分
10 交通事故の実務に関する連続講座 第1回 交通事故をめぐる保険と損害賠償 148分

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