名古屋刑務所における精神障害者に対する処遇人権救済申立事件 (勧告・要望)
名古屋刑務所宛て勧告、法務大臣宛て要望
2023年3月9日
- 名古屋刑務所における精神障害者に対する処遇人権救済申立事件(勧告・要望) (PDFファイル;373KB)
精神障害を有する申立人が名古屋刑務所において服役していた際、申立人が自らに双極性感情障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)等の障害があることを申告し、人間関係が苦手でトラブルを避けたいので就業を拒否する旨を申し立てる等、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明と認められる行動があったにもかかわらず、名古屋刑務所は、申立人との間で障害の内容や特性等の事情及び申立人が求める合理的配慮の内容等について、真摯に建設的対話をせず、その結果、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を提供しなかった。
このような名古屋刑務所の対応は、憲法第13条及び第14条第1項の趣旨に反し、また、憲法の規定の趣旨を具体化した障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第7条第2項及び障害者基本法第4条第2項、並びに、国連の障害者の権利に関する条約第5条第3項に違反し、申立人に対する人権侵害に当たる。
このため、今後、精神障害を有する受刑者あるいは精神障害が疑われる受刑者等障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある受刑者から、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合はもとより、そのような意思の表明が積極的になされない場合であっても、上記のような受刑者が服役するときには、適切と思われる配慮を提供するために建設的対話を働き掛け、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を提供するよう名古屋刑務所に勧告し、また、その具体的な方法等について、必要な研修・啓発を行い、全ての刑事収容施設に対して周知徹底するよう法務大臣に要望した事例。