日台複数籍者の国籍選択に関する人権救済申立事件(勧告)
内閣総理大臣・法務大臣宛て勧告
2021年9月24日
- 日台複数籍者の国籍選択に関する人権救済申立事件(勧告) (PDFファイル;572KB)
日本国籍と台湾籍を有する者(日台複数籍者)の国籍法上の国籍選択手続きに関して、① 台湾籍の選択は一切認められておらず、日本国籍の選択の方法としても日本国籍の選択宣言しか認められていないこと、② ①については説明や周知もなく、法律の定める期限までに国籍選択をしなければ義務違反であるとした2016年当時の法務大臣の発言及びそれに関する報道、③ ①の事実を明らかにしないまま日台複数籍者に対し日本国籍の選択宣言を誘導するかのような法務局の指導は人権侵害であるとして、申立てがなされた。
日本弁護士連合会は、過去の意見書等において、国籍選択制度が人権侵害のおそれの強い制度であるから、国籍選択義務の適用がないよう国籍法を改正することや、国籍の得喪要件を見直すことを求めており、かかる立場を前提に、国籍選択制度が廃止されるまでの間、以下の措置をとることを内閣総理大臣及び法務大臣に対し勧告した事例。
1 台湾籍を選択する方法が認められておらず、日本国籍の選択宣言を行うことしか認められていない日台複数籍者に対して、国籍法14条が規定する国籍選択を求めてはならない。
2 日台複数籍者に対して、日本国籍の選択宣言を行わなかったとしても、国籍法上の義務違反に当たらないことを周知徹底するべきである。
措置後照会に対する回答
内閣総理大臣
回答なし。
法務省民事局第一課長回答・2023年1月24日
勧告の趣旨1について
台湾出身者で日本国籍を有する者について、届出内容から日本国籍以外の国籍を有していることが総合的に確認・判断できる場合には、国籍法13条の趣旨を踏まえ、届出により日本国籍の離脱を認める取扱いに変更した(令和4年8月8日付け法務省民一第1688号民事局民事第一課長回答参照)。
なお、法務省ホームページの「国籍Q&A」について、上記取扱いの変更を踏まえ、該当部分を修正している。
勧告の趣旨2について
国籍法第14条第1項に規定する国籍選択義務のある重国籍者に、日本国籍の選択義務があるわけではないことは明らかである。
日弁連再照会・2023年5月8日
- 再照会事項 (PDFファイル;266KB)
法務省民事局民事第一課長回答・2023年6月30日
照会事項1
(1)取扱いを変更した理由について
国籍法第13条において、日本国籍を離脱するための要件として、届出人が「外国の国籍」を有していることを定めているのは、日本国籍を離脱した者が無国籍状態となることを防止するためである。
これを踏まえ、台湾出身者で日本国籍を有する者について、届出内容から日本国籍以外の国籍を有していることが総合的に確認・判断できる場合には、届出により日本国籍の離脱を認める取扱いに変更したものである。
(2)取扱いの変更に係る周知について
法務省ホームページの「国籍Q&A」において周知している。
(3)取扱いの変更に係る周知に関する見解について
法務省ホームページの「国籍Q&A」における周知のほか、法務局又は地方法務局には、令和4年8月8日付け法務省民一第1688号民事局民事第一課長により周知しており、台湾出身者で日本国籍を有する者から日本国籍の離脱に係る相談等があった場合には、各法務局において適切に対応しているものと認識している。
照会事項2
(1)国籍法第13条の趣旨について
上記照会事項1の(1)のとおり。
(2)台湾出身者の場合に求める複数の書類・資料について
届出人が日本国籍以外の国籍を有していることを確認・判断できる複数の資料が必要である。
照会事項3
貴見のとおり。
照会事項4
台湾出身者で日本国籍を有する者について、届出による日本国籍の離脱を可能とする取扱いの変更の前後を問わず、国籍法第14条第1項に規定する国籍選択義務のある重国籍者に、日本国籍の選択義務があるわけではないことは明らかである。