聴覚障がいを理由とするツアー参加拒否に関する人権救済申立事件(要望)


Y社及び観光庁宛て要望

2019年3月28日

 

 

聴覚障がいを有する申立人夫妻が相手方会社主催のツアーへの参加を申し込み、代金を支払った後、ツアー出発日の9日前に聴覚障がいを有するため、筆談での対応をウェブサイトを通じて申し入れたところ、同社は筆談によるツアー参加の可否について申立人夫妻から全く事情を聴くことなく、直ちに健常者の介助者の同行を求め、申立人夫妻がそれを断ると当該ツアーへの参加を拒否した。


申立人夫妻が求めた筆談の方法を含め、ツアー参加の可能性やその方法等について、協議の機会を設けないまま、直ちに健常者の介助者の同行を要求し、それを申立人夫妻が断るとツアー参加を拒否した相手方会社の行為は、障がいを理由とする不当な差別的取扱いであり、人権侵害に該当するとして相手方会社及び観光庁宛てに要望した事例(相手方会社は、上記事件後に障がい者受付ガイドラインを制定し、聴覚障がい者を含む障がい者のツアー参加を原則として認める方針とした。)。


1 相手方会社宛て要望

障がいを有する者がツアーの参加申込みをしてきたときは、上記ガイドラインを適切に運用し、当該申込者とツアー参加のために必要な合理的配慮の提供について十分な協議の機会を設け、申込者が求める合理的配慮の提供が貴社にとって過重でない限りは、合理的配慮を提供するなどして、当該申込者がツアーに参加できるようにすること。


2 観光庁長官宛て要望  

障がいのある人のツアー参加が不合理な理由によって制限されることのないようにするため、旅行会社の監督官庁である観光庁に対し、相手方会社に要望措置を取ったことを伝えるとともに、観光庁においても、旅行会社に対して、障がい者がツアーの参加申込みをしてきたときは、当事者間でツアー参加を可能にするための十分な協議を行うとともに、当該障がい者が求める合理的配慮の提供が事業者にとって過重でない限りは、当該障がい者が求める合理的配慮の提供を行うよう指導すること。



執行後照会に対する回答

Y社

<Y社・2020月1月9日>


当社は、平成27年12月25日に制定した「障がい者受付ガイドライン」のとおり、聴覚障がい者を含む障がい者のツアー参加を原則として受け付ける方針としており、平成31年3月28日付要望書受領後も、実際に、障がいを有する方からツアー参加の中込みを受けたときは、ツアーの内容に応じた合理的な配慮を提供して一般のツアーヘの参加を受け付けております。


合理的な配慮を超える過重な負担が発生する場合には参加をお断りせざるを得ませんが、当社といたしましては、できる限りの配慮の提供に努める方針としており、社内の研修においても、まずは、どのような配慮があれば参加が可能かを調査し、前向きな提案を行うよう指導しています。


今後も、障がいを有する方からの参加申込みがあった場合には、「障がい者受付ガイドライン」に従い、合理的配慮を提供し、ツアーヘの参加が可能となるように努める所存です。



観光庁長官

<観光庁長官名回答・2020年2月6日>


(照会事項)
4月26日付け通達に「手引きの周知徹底と指導」とありますが、手引きの周知ないし活用状況等に関する調査の有無と、調査を行った場合はその調査結果について

(回答)
平成31年4月26日付観参第119号「障害者差別解消法に基づく適切な対応の推進について」は、貴連合会からの要望書を踏まえ、旅行業関係団体あてに、障害者差別解消法に基づいた障害のある方の旅行参加取り扱いについて、周知を行ったことについて、令和元年5月に貴連合会にご報告させていただきました。

通知を受けた各団体においては、傘下会員あてにメール、ホームページなどで周知を行ったところです。

その後は、観光庁としましては活用状況等について、団体への聞き取り調査を行い、同調査によると、団体主催によるセミナー、フォーラムなどの機会や各種研修の際に、障害者差別解消法の対応等について、参加者に説明しているとのことです。

また、旅行業者数社にも直接聞き取り調査を行いましたところ、旅行業者においては、聴覚障がいのある方の旅行申し込みはすべて受けるとの対応の下、社内において年3回、研修を実施しているとのことです。

その他の旅行業者につきましては、営業現場からの窓口としてユニバーサルツーリズム担当者が相談を受ける、社内eラーニングでの社員教育、新入社員研修時にも研修を行っているとのことです。



(照会事項)
4月26日付け通達発出後の貴庁における障がい者の旅行参加推進のための取組の有無と、取組が行われた場合はその内容について

(回答)
観光庁といたしましては、誰もが旅行を楽しめるよう、観光関係者に対し、障害のある方などをお迎えするための当庁作成の接遇マニュアルや宿泊施設におけるバリアフリー情報発信のためのマニュアルの活用をしております。

また、ホテル・旅館等の宿泊施設によるバリアフリー改修等に対し補助を行うほか、宿泊施設におけるバリアフリー情報発信に関する機能強化を図っております。


(照会事項)
障がい者の旅行参加に関し、貴庁が行政指導若しくはその他の手段により関与した事案の有無と、貴庁が関与した事案がある場合はその内容について

(回答)
当該事案後は、障害者の旅行参加に関し、行政指導若しくはその他の手段により関与した事案は発生しておりません。



(照会事項)
その他、貴庁において改善、対処された事項がありましたら、具体的に、いつ頃、どのような対処をされたのかについて

(回答)
観光庁として、改善・対処した事項は以上1~3でお示ししたとおりです。



icon_pdf.gif 観参第119号平成31年4月26日付け通達「障害者差別解消法に基づく適切な対応の推進について」 (PDFファイル;349KB)