寡婦控除における非婚母子に対する人権救済申立事件(要望)

総務大臣、東京都知事、新宿区長、八王子市長、沖縄県知事、那覇市長宛て要望

2013年1月11日


 

申立人らはいずれも「非婚の母」、すなわち、法律婚を経験したことのない女性として子どもを扶養している者であるが、現在、「非婚の母」に対しては所得税法の定める「寡婦控除」は適用されない(同法2条1項30号)。



この寡婦控除規定により算出された所得が、地方税、国民健康保険料、公営住宅入居資格及びその賃料、保育料等算定のための基準とされている結果、「非婚の母」である申立人らは、「寡婦控除」規定が適用されないことにより、「寡婦」と比較すると上記各種金額算定に当たり著しい不利益を受けている。これは、「非婚の母」を合理的な理由もなく差別するものであり憲法14条等に違反するとして、「非婚の母」に対し、「寡婦控除」をみなし適用することにより、国民健康保険料、公営住宅入居資格及びその賃料等の算定に当たって、非婚の母子世帯の経済的苦境を救済するよう適切な措置をとることを要望した事例。 

 

執行後照会に対する回答

総務大臣

<総務省自治税務局市町村税課長名回答・2013年5月22日>



寡婦控除のみなし適用については、まずは国民健康保険制度、公営住宅制度を所管している関係省庁において検討すべきものと考えております。



東京都知事

<東京都主税局総務部総務課からの回答・2013年6月14日>



貴殿より2013年(平成25年)4月26日付日弁連人1第76号にて東京都知事あてに送付いただいた文書「寡婦控除における非婚母子に対する人権救済申立事件について(照会)」について、関係局の一つとして当主税局に対応依頼がありました。



今回の照会文書で回答を求められている「要望の趣旨」は、国民健康保険料、公営住宅入居資格及びその賃料等の算定に関することであり、地方税に関する事項は含まれておりません。



地方税に関する事項については、昨年5月に貴殿から主税局へ送付された照会文書(2012年(平成24年)5月29日付日弁連人1第224号)への回答のとおり、当局所管の個人都民税について、寡婦控除規定を非婚の母子世帯に適用したとみなして算定を行う制度は実施しておりません。また、そうした制度の実施の検討も行っておりません。



なお、今回の照会文書で要望されている国民健康保険料や公営住宅入居資格及びその賃料等の算定に関しては、関係局に照会文書の写しが回付されていると聞いております。



今後要望書等を送付される場合には、貴殿にて要望事項に係る所管部門をあらかじめご確認いただいた上で、当該部署あてに送付していただければと存じます。 

 

<東京都都市整備局都営住宅経営部経営企画課管理制度担当課からの回答・2013年7月3日(受付日)>


公営住宅法における収入の算定に当たって、控除の対象とする寡婦は、公営住宅法施行令により、所得税法に定める寡婦としています。 



新宿区長

<新宿区長名回答・2013年5月22日>


貴会から要望のあった「非婚の母」に対する「寡婦控除」のみなし適用については、子どもの貧困への対応という観点に立ちながら、区の事業への影響等を十分に整理したうえで導入する必要があると考えています。



このため、現在、導入する場合の課題の調査及び検討を行っているところです。



八王子市長

<八王子市長名回答・2013年6月10日>



八王子市としましては、貴会からの要望書を契機として具体的に検討を進め、非婚のひとり親家庭の自立支援、子どもの置かれた経済的に不利益な状況の改善を図るため、保育料等の算定において、寡婦(夫)控除をみなし適用することとしました。



具体的には、ひとり親家庭が生活していく上で影響の大きい保育料、幼稚園就園奨励費等補助金及び市営住宅家賃について、低所得のひとり親家庭(保育料・幼稚園就園奨励費等補助金は児童扶養手当の受給者、市営住宅家賃は市営住宅入居収入基準額以下世帯)を対象として寡婦(夫)控除のみなし適用を実施することにより、負担を軽減するものです。



なお、本市においては、未婚の父子家庭についても同様の取り扱いとすることから、「寡婦(夫)控除」と表記しています。



実施時期については、保育料及び幼稚園奨励費等補助金は平成25年4月分から適用し、市営住宅は平成25年6月から家賃の減額申請を受け付ける予定です。



沖縄県知事

<沖縄県知事名回答・2013年6月13日>



沖縄県は、日本弁護士連合会からの要望書を受け、寡婦控除が適用される事業について、全庁的な調査を実施しました。



児童保護措置事業等、事業の多くが法律に基づき、国による財政措置がなされており、県や市町村において寡婦控除をみなし適用する場合、国庫負担相当額を含めて地方自治体が負担することになり、財政規模が小さな自治体にとって、非常に大きな負担となります。



沖縄県としましては、国が法律を改正し、財源措置を行うべきであると考えており、日本弁護士連合会におかれましては、非婚の母子世帯に対しても寡婦控除の適用がなされるよう法律を改正し、非婚の母子家庭の救済ができるように、国に働きかけていただきますようお願いいたします。



那覇市長

<那覇市長回答・2014年2月20日>


本市では、ひとり親世帯の自立・子育て支援を目的として、平成24年4月から保育所保育料に寡婦控除のみなし適用を実施しております。また、平成25年6月から市営住宅家賃について、寡婦控除を受けたときと同様の家賃となるよう家賃減額措置を行い、負担の軽減を図っております。