取調べの可視化を求める宣言-刑事訴訟法施行60年と裁判員制度の実施をふまえて-

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刑事訴訟法が1949年1月1日に施行されて、本年で60年を迎える。


当連合会は、長年にわたり、冤罪を断ち、わが国の刑事司法制度を国際人権法の水準に見合ったものに改革していくために、様々な制度改革を提言してきた。とりわけ、わが国の冤罪の歴史に照らすと、代用監獄における長期間の身体拘束、長時間にわたる「密室」での違法・不当な取調べによる自白強要とその結果作成された虚偽の自白調書こそが、冤罪の最も主要な原因であるとの認識のもと、「密室」における違法・不当な取調べを防止するため、取調べの可視化、すなわち、任意取調べを含む被疑者の取調べの全過程の録画を強く求めてきた。


また、本年5月21日に制度実施された裁判員裁判においては、市民に開かれた審理、分かりやすい審理が求められており、裁判員が自白の任意性・信用性の有無を容易に検証できる制度を構築して、この点を巡る審理の長期複雑化を避ける必要がある。したがって、捜査機関は取調べを行おうとする際には事後的に客観的な検証を可能とする措置が求められている。この点からも取調べの可視化は焦眉の課題となっている。


取調べの可視化は、韓国・台湾などの近隣諸国を含めて既に世界各地で実施されている。この2年間のうちにも国連の拷問禁止委員会、同人権理事会、あるいは、国際人権(自由権)規約委員会が、相次いで、日本政府に対し、代用監獄の廃止とともに取調べの全過程を録画するよう勧告している。取調べの可視化は、21世紀の刑事司法にとって、普遍的かつ世界的潮流なのである。


これに対し、最高検察庁及び警察庁は、現在、裁判員裁判対象事件を対象に、全国の地方検察庁及び全都道府県本部において取調べの一部録画を実施している。しかし、これらは、被疑者が自白等した事件において、供述が既になされ、捜査官が調書を作成した後に読み聞かせの場面や署名指印する場面を録画するもの、あるいは、署名指印がなされた後にその作成過程や内容を確認するものに止まっている。このように自白に至る過程が記録化されていないため、裁判員裁判の要請を満たしているとはいえない。一部録画では、「密室」における違法・不当な取調べを抑止することはできない。それどころか、虚偽の自白であっても、あたかも任意に自白がなされたかのような誤った印象のみを与え、かえって危険である。


このように、捜査・取調べの適正化を図り、裁判員裁判が本来の目的を十全に果たしていくためにも、一日も早い取調べの可視化の実現が不可欠である。なお, 近時, 取調べの可視化とともに新たな捜査手法を導入すべきとの議論が見受けられるが, 取調べの可視化は直ちに導入すべきものであり, 新たな捜査手法の検討を理由として導入を遅らせるようなことがあってはならない。


ここに、当連合会は、改めて、身体不拘束の原則の徹底、起訴前保釈制度の創設及び代用監獄制度の廃止等とともに、


  1. 国に対し、一日も早く、任意取調べを含む被疑者取調べの全過程を録画し、これを欠くときは、自白・不利益事実承認の証拠能力を否定する法律を整備すること。
  2. 検事総長及び警察庁長官に対し、前記1の法制化がなされるまでの間、各捜査機関の捜査実務において、被疑者または弁護人がこれを求めたときは、即時に被疑者取調べの全過程の録画を実施すること。

を求める。


当連合会は、被疑者取調べ全過程の録画による可視化を直ちに実現させるため、全力を挙げて取り組むものである。


刑事訴訟法施行60周年と裁判員裁判の施行にあたり、以上のとおり宣言する。


2009年(平成21年)11月6日
日本弁護士連合会


提案理由

1.当連合会の刑事司法改革への取組

刑事訴訟法は、1949年1月1日に施行され、以来60年間が経過した。この間、当連合会は、長年にわたり、自白偏重の捜査・公判のもと、人質司法と調書裁判が生み出す冤罪を断ち、わが国の司法制度を国際人権法の水準に見合ったものへと改革するために、被疑者国選弁護制度の実現、取調べの可視化、代用監獄の廃止、起訴前保釈の創設、陪審・参審等の国民の司法参加の導入、証拠の事前全面開示、公判審理の活性化等、刑事訴訟法の全面的な改正をも視野に入れた改革に取り組んできた。特に、取調べの可視化は、代用監獄の廃止、身体不拘束の原則の徹底及び人質司法の打破と並ぶ刑事司法改革の大きな柱とされた。


2009年5月21日、当番弁護士制度の創設から約20年間、司法制度改革審議会発足から約10年を要して、遂に第2段階の被疑者国選弁護制度が実施され、対象事件が必要的弁護事件に拡大されるとともに、戦後初の国民参加である裁判員制度が実施され、捜査機関が密室で作成した自白調書を有罪の決め手とする調書裁判を脱して公判審理の活性化を可能とする状況を生み出してきた。裁判員制度の実施により、従来、法律専門家が独占してきた刑事裁判に一般市民の健全な常識が反映され、市民に開かれた刑事裁判となることで、刑事裁判がより健全なものとなることが期待されている。


しかしながら、起訴前の身体拘束期間も長く、起訴前保釈の制度は未だ成立せず、代用監獄も未だ存在するなかで、公判とともに刑事手続の両輪をなす捜査においては、相変わらず、取調べ時間を厳しく制限する法規制もないままに、自白するまで身体拘束を容易に解かない人質司法が未だに続き、事後的な検証さえをも拒む「密室」という閉じられた状況での取調べが行われている。そこでは、客観的な検証自体、到底できない。


2.取調べの深刻な弊害

このような「密室」における取調べの弊害は、深刻である。


(1) 今日まで止むことのない虚偽自白による冤罪被害

1980年代に、死刑確定者に対して、再審において無罪が言い渡された免田事件・財田川事件・松山事件・島田事件のいわゆる死刑再審四事件は、いずれも、当初、虚偽自白に基づいて有罪認定がなされ、無実の者に死刑判決が言い渡された事件である。2000年代に入っても、2000年に松山地方裁判所宇和島支部において、任意取調べにおいて自白した被告人に対して無罪判決が言い渡された宇和島事件をはじめとし、2007年には、鹿児島地方裁判所において、捜査段階で自白した6名を含む12名の被告人全員に対して無罪判決が言い渡された志布志事件、富山地方裁判所高岡支部の再審公判において、任意取調べにおいて自白し、2年以上服役した男性に対して無罪判決が言い渡された氷見事件、さらに福岡高等裁判所において、任意取調べ中に自白した被告人に対して無罪判決が維持された北方事件などがある。2008年には、いわゆる布川事件の再審開始決定が東京高等裁判所で維持されており、このように、長期間・長時間に及ぶ「密室」における違法・不当な取調べの結果、無実の者が虚偽自白に追いやられた事例は後を絶たない。そしてさらに、2009年6月には、女児殺害事件について任意取調べ中に自白をし無期懲役の刑に服していた事件の再審請求手続において、東京高等検察庁が、受刑者である請求人について無罪であったとして刑の執行を停止するという異例の対応を行い、再審開始決定に至った、足利事件が注目を集めている。


(2) 知的障がいを有する者への密室での取調べの弊害

宇都宮事件においては、無実の知的障がいを有する者が、強盗被疑事件において虚偽の自白調書を作成されて、起訴されて、危うく有罪判決を下されるところを別途真犯人が見つかったため無罪とされた。これに対し当連合会では、2006年3月、警察庁等に対し、知的障がいを有すると疑われる者に対する取調べにおいては、直ちにその全過程の可視化を行うべき旨を含む警告を発している。


このように、知的障がいを有する者については、密室での取調べの弊害はより深刻である。知的障がいを有する者は、被誘導性・迎合性が高く、虚偽の「自白」をしやすいことは明らかである。


(3) 少年への密室での取調べの弊害

少年の場合もまた、密室での取調べの弊害は成人の場合よりも深刻である。少年は成人に比べて、精神的に未熟で知的能力にも劣り、被誘導性・迎合性が高く、虚偽の「自白」をしやすいことは歴史上も枚挙に暇がないが、2008年に冤罪であることが確定した大阪地裁所長襲撃事件が記憶に新しい。この虚偽の「自白」を生みだした警察官による一連の取調べの中には、刑事責任無能力者である13歳の少年に対する実質的な「取調べ」も含まれていた。


当連合会は一貫して反対していたが、2007年の少年法「改正」において、触法少年に対する警察の調査権限が法定され、警察による14歳未満の少年に対する実質的な「取調べ」が明文で許容されることになった際、参議院法務委員会は、「当委員会における平成十八年六月一日付『刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議』において、『裁判員制度の実施を控え、刑事司法制度の在り方を検討する際には、取調べ状況の可視化、新たな捜査方法の導入を含め、捜査又は公判の手続に関し更に講ずべき措置の有無及びその内容について検討を進める』としていることにかんがみ、この検討の中で、触法少年に対する警察による質問状況の録音・録画の要否についても、刑事司法手続及び少年審判手続全体との関連の中で検討すること。」という附帯決議を行っている。


(4) 事件が明らかにする取調べの弊害

このような事例に照らせば、わが国における冤罪の最も主要な原因は、密室における長期間・長時間に及ぶ違法・不当な取調べによって獲得される虚偽自白であることは明らかというべきである。


刑事手続において最も重要な目的が冤罪の防止であることは改めていうまでもなく、冤罪の温床となっている、このような「密室」取調べを是正することは、刑事司法における最優先課題である。特に、すべての少年事件の捜査・調査及び知的障がいを有する者が対象となる取調べの全過程の可視化は不可欠である。


3.裁判員制度からの要請

裁判員裁判において市民の健全な常識が反映されるためには、市民に開かれた、分かりやすい審理が行われることが求められている。そのためには、客観的かつ直接的で明瞭なる証拠が公判に提出されなければならない。


しかし、既に裁判員制度が実施されているにもかかわらず、自白の任意性・信用性の審理方法が改善される兆しがなく、このままでは、近い将来、裁判員の目の前で、取調べの内容に関する被告人質問・証人尋問が延々と繰り広げられ、違法・不当な取調べの結果虚偽自白に追い込まれたとする被告人の供述と、そのような取調べは行っていないとする捜査官の証言との水掛け論が展開されることとなる。その結果、裁判員は、客観的な証拠が極めて乏しい中で被告人の供述と捜査官の証言の信用性を比較判断するという、職業裁判官でさえも極めて困難と認める事実認定を強いられることとなり、裁判員制度の意義が大きく損なわれることとなる。


裁判員制度が円滑に実施され、定着するためには、その前提としてこのような「密室」における取調べが是正されるべきことは論を待たない。


4.取調べの可視化を求める潮流

世界に目を転じれば、イギリスやアメリカの少なからぬ州、オーストラリア、フランス、イタリアなど、欧米の多くの国と地域で、取調べの全過程の録画・録音が行われている。イリノイ州においてはオバマ現大統領(当時州議会議員)が可視化法案を提出し、捜査機関の反対を排し、さらに、ビデオ録画を自白のみに限定しようとの提案をも押し切り、実現するに至っている。イギリスの法制に通底している香港で可視化がされているのは当然だとしても、歴史的な経緯からわが国の現刑事訴訟法と類似した刑事訴訟法を有する韓国、わが国の旧刑事訴訟法と類似した刑事訴訟法を有する台湾といった、アジア諸国においても、取調べの可視化が実現しているのである。


しかも、これら、取調べの可視化が実現している国・地域においては、捜査官が取調べの可視化を支持しており、取調べを可視化したことによって捜査に支障が生じたという声はほとんど聞かれない。


取調べの可視化は、世界中に広がり、支持されていることから明らかなように、法制度や文化の差異に関係なく導入されるべき、21世紀の刑事司法における普遍的な制度なのである。


なお、近時、取調べの可視化の導入に対し、代替的捜査手法の必要性を唱える議論が生まれている。しかし、取調べの可視化の目的は、密室内における捜査官の違法・不当な取調べにより得られた自白によって発生している多くの冤罪事件を防止することにある。また、その必要性は、志布志事件、足利事件等の最近の事例を見ても喫緊の課題であることは言うまでもない。われわれがまず取り組まなければならないことは、究極の人権侵害と言うべき冤罪の発生防止である。取調べの可視化は直ちに導入すべきものであり、新たな捜査手法の検討を理由として導入を遅らせるようなことがあってはならない。


5.一部録画の弊害

ところで、最高検察庁及び警察庁は、現在、「取調べの一部録画」を実施している。しかし、検察・警察が行っている一部録画は、到底、「可視化」と評価しうるものではあり得ないのみならず、「取調べの録画」と呼ぶにさえ値しない。それは、「密室」取調べの弊害を除去するものでは全くない。


最高検察庁は、2006年8月から、大規模な地方検察庁を中心に取調べの一部の録画を試行し、2009年4月からは、全国の地方検察庁において、裁判員裁判対象事件を対象に、取調べの一部録画を本格的に実施している。一方、警察庁は、2008年9月から、取調べの一部録画の試行を開始し、2009年4月からは、全都道府県警察において取調べの一部録画を試行している。


現在検察庁が実施している一部録画は、被疑者が自白ないし不利益事実承認の調書に署名・指印し終わった後に、その作成過程と内容を確認する場面のみを録画する、いわゆる「レビュー」方式か、せいぜい、自白調書が概ね作成された後の読み聞かせの場面から録画をするに止まる。警察が試行している一部録画も、「捜査が一定程度進展した時点において」「供述調書を作成する場合」に、主として「供述内容を被疑者に読み聞かせ、閲覧させ、署名指印を求めている状況」を録画するものにすぎない。検察・警察が行っている一部録画は、捜査官が被疑者に質問し、被疑者がこれに答えるという取調べの核心部分を録画するものではなく、一通り取調べが終了した後の調書の作成場面のみを録画しているのである。すなわち、検察・警察の行っている録画は、本来の意味での「取調べ」を録画しているものではなく、せいぜい、取調べ終了後の「供述調書の作成場面」を録画しているに過ぎない。


このような「一部録画」では、違法・不当な取調べを防止することは全くできない。虚偽自白に追い込まれた被疑者は、往々にして取調べの初期の段階で捜査官に完全に迎合する心理状態に陥り虚偽の自白をするものであるが、このような被疑者においては「一部録画」がなされる場面でも、ひたすら捜査官に従順であろうとするのであり、従前の虚偽自白を翻して無実を主張することができる者は極めて少数にとどまる。したがって、取調べの「一部録画」では、本来任意にされたのではない虚偽自白があたかも任意にされたかのような印象のみを与える危険性は極めて高いというべきである。


氷見事件において虚偽自白に追い込まれた男性は、捜査官に対する恐怖心や諦めの気持ちから、公判においても一貫して虚偽自白を維持していた。仮に、氷見事件で「一部録画」が実施されていたとしても、被疑者の無実を発見することはできなかったのである。これは、足利事件及び宇都宮事件でも、見られる事象であり、違法・不当な取調べを抑止するには、被疑者が自白に至る経緯とその瞬間の録画を欠くことができない。これを担保する方策は、取調べの全過程を録画するほかはない。


また、前記の一部録画では、自白の任意性・信用性の審理を適正化することに全くつながらず、合理化することにさえ結びつかない。既に作成されてしまった調書の作成過程や、その内容を確認する場面、あるいは、その調書に署名・指印する場面を録画していても、被告人が自白するに至る過程の捜査官の言動が録画されていない限り、結局、延々と被告人質問・証人尋問が繰り返される従来型の審理を行わざるを得ない。


6.国際人権機関からの勧告

さらに、検察・警察の一部録画は、国際的にも疑念を投げかけられている。


国連の拷問禁止委員会は、2007年、「警察拘禁ないし代用監獄における被拘禁者の取調べが、全取調べの電子的記録及びビデオ録画、取調べ中の弁護人へのアクセス及び弁護人の取調べ立会いといった方法により体系的に監視され、かつ、記録は刑事裁判において利用可能となることを確実にすべきである。」と、取調べの全過程を録画すべきことを勧告している。


また、国際人権(自由権)規約委員会は、2008年、「取調べに弁護人が立ち会うことが、真実を明らかにするよう被疑者を説得するという取調べの機能を減殺するとの前提のもと、弁護人の立会いが取調べから排除されていること、取調べ中の電子的監視方法が散発的、かつ、選択的に用いられ、被疑者による自白の記録にしばしば限定されていることを、懸念を持って留意する。」と、一部録画という手法に対して明確な懸念を表明している。同委員会は、日本政府に対し、「代用監獄を廃止すべきであり、あるいは、(自由権)規約第14条に含まれるすべての保障に完全に適合させることを確保すべきである。」としたうえで、「虚偽自白を防止し、(自由権)規約第14条のもとの被疑者の権利を確保するとの観点から、被疑者の取調べの時間に対する厳格な時間制限や、これに従わない場合の制裁措置を規定する法律を採択し、取調べの全過程における録画機器の組織的な利用を確保し、取調べ中に弁護人が立会う権利を全被疑者に保障しなければならない。締約国は、また、刑事捜査における警察の役割は、真実を確定することではなく、裁判のために証拠を収集することであることを認識し」なければならないとの勧告を行っており、取調べの全過程の録画を行うべきことを勧告するとともに、取調べの可視化が実現すると取調べの真相解明機能が害されるという検察・警察の主張に対して痛烈な批判を行っている。同人権理事会でも、同様の議論がなされたところである。


7 可視化への取組と世論の高まり

当連合会は、2003年7月14日、「『取調べの可視化』についての意見書」において、取調べの全過程を可視化する制度を確立すべきとの意見書を採択し、同年10月17日の第46回人権擁護大会では、取調べの全過程の可視化を求める決議を採択した。そして、2007年5月25日の第58回定期総会でも、取調べの可視化を求める決議を採択した。


この間、志布志事件や氷見事件等によって、今なお「密室」において自白の強要がなされ、無実の者が容易に自白に追い込まれるという取調べの実態が広く国民の知るところとなった。また、裁判員制度への関心の高まりから、市民の間でも取調べの可視化の必要性が広く認知されるようになり、その結果、約112万人分もの取調べの可視化の実現を求める署名が当連合会に寄せられ、これを、裁判員制度の実施に先立ち、2009年5月、衆議院に提出した。


裁判員制度が実施され、やがて半年を迎えようとする現在、取調べの可視化は、一日も早く実現されなければならない。取調べの可視化が実現することによって、裁判員裁判を通じ、「密室」という閉じられた空間で行われていた取調べにも市民の健全な良識に基づく視線が及ぶことにもなり、初めて、わが国の刑事司法は、十分な民主的基盤を獲得し、真の意味で市民に開かれた司法となるといえるのである。


8 結語

以上のとおり、もはや、「密室」での取調べを容認することは許されない。違法・不当な取調べを根絶し、自白の任意性・信用性の審理を裁判員制度にも適合するように、適正化し、開かれたものとするためには、任意取調べを含む被疑者取調べの全過程を録画すること、即ち、取調べの可視化を実現する以外にない。


取調べの可視化が実現すれば、取調べ全体が直ちに記録されてしまうこととなるから、違法・不当な取調べ自体が激減し、取調べの適正化が実現する一歩となる。同時に、自白の任意性を争う事態も、激減するであろう。


仮に、公判において自白の任意性・信用性が争いとなった場合でも、どのような取調べが行われたかは、録画された記録を再生すれば疑問の余地なく明らかとなる。自白の任意性・信用性の審理は、客観的かつ直接的で明瞭なる証拠に基づいた適正なものとなるのである。


したがって、当連合会は、身体不拘束の原則の徹底、起訴前保釈制度の創設及び代用監獄の廃止等とともに、裁判員裁判制度も実施された現在、一日も早く実現すべき最優先課題として、国に対し、直ちに、被疑者取調べの全過程を録画し、これを欠くときは、自白ないし不利益事実承認の供述調書の証拠能力を否定する法律を整備するよう求める。併せて、検事総長・警察庁長官に対し、その法制化がなされるまでの間、各捜査機関の捜査実務において、被疑者または弁護人がこれを求めたときは、即時に被疑者取調べ全過程の録画を実施するよう指導を徹底することを強く求める。


刑事訴訟法施行60周年と裁判員裁判の施行にあたり、当連合会は、被疑者取調べ全過程の録画による可視化を直ちに実現させるため、全力を挙げて取り組んでいくことを改めて決意し、ここに宣言する次第である。


以上