原子力の開発利用に関する決議
国及び企業は、公共の利益増進の名のもとに、エネルギー政策の一環として全国各地に巨大な原子力施設を建設し、且つ将来に亘り、膨大な原子力の開発利用を推進しようとしている。
しかしながら、原子力の開発利用は、その一面において人類破滅の危険性をも内包するものである。
原子力施設から日常的に放射される放射線及びその運転により生ずる放射性廃棄物並びに多量の温排水は、地域環境破壊の危険を増大させている。
特に、近時頻発する原子力施設事故は、従業員の生命身体に危険をもたらすとともに、住民を大きな不安におとしいれている。
これらは国及び企業の、原子力開発利用に対する危険性の軽視及び、住民の安全と地域環境の保全に対する具体的施策の欠如に起因するものである。
よって、国及び企業は、原子力の危険性を直視し、原子力基本法における民主、自主、公開の原則を徹底し、完全且つ充分な環境影響事前調査を実施してその資料を公開し、住民参加による住民の安全と環境保全の途を講ずべきである。
そのため、国及び企業は、現に稼働中の原子力施設の運転及び原子力施設建設の中止を含む根本的な再検討を可及的すみやかに行うべきである。
右決議する。
1976年(昭和51年)10月9日
第19回於仙台市
日本弁護士連合会