被拘禁者の処遇に関する件(第三決議)
被拘禁者についても、その基本的人権は尊重されなければならない。しかるに、被拘禁者に対して、しばしば拘禁の目的を逸脱した処遇がなされている。とりわけ、拘置所における新聞・雑誌等の全部または一部の抹消、接見の回数および時間の不当な制限、鎮静衣・防声具等の戒具の使用、軽屏禁等の懲罰の執行など、不当な処分により、その基本的人権を侵害している事例が今もなおあとを絶たないことは甚だ遺憾である。
よってわれわれは当局に対し、被拘禁者に対するこのような不当な侵害の行われる事の内容強く警告する。
右決議する。
1972年(昭和47年)11月25日
第15回人権擁護大会、於那覇市
理由
被拘禁者であっても憲法が国民に保障する基本的人権が侵されてはならない。当局は被拘禁者に対し、その基本的人権が十分に守られるよう常に戒心していなければならない。被拘禁者の処遇は、その拘禁の目的に適合したものでなければならず、殊に刑事被告人に対しては、罪証湮滅および逃亡防止の目的の範囲を超える制限をしてはならない。
しかるに近時、しばしば大きな社会的事件や刑務所内での事故を掲載した新聞・雑誌等の記事の抹消、一日1回のみ、それも僅か5分以内の接見というが如き不当な制限、極度の苦痛を与える鎮静衣、窒息死の危険のある防声具等の戒具の使用、運動・入浴の禁止をともなう非人道的かつ残虐な軽屏禁の執行など、人権を不当に侵害している事件が存するのであってはなはだ遺憾である。
そもそも明治41年に制定された現行監獄法は、憲法の法の精神に照し、基本的人権を不当に侵害することのないようこれが運用に当っては特段の配慮がなされなければならない。われわれは現行監獄法の改正についてかねて決議と要望を重ねて来たのであるが、この際当局は速やかに憲法の精神と現代刑事政策の進展に即した監獄法の改正の実現を期すべきである。
注(1) 提案会
第二東京弁護士会
注(2) 要望先
法務大臣、警察庁長官