沖縄県民の人権保障に関する件(第一決議)

沖縄の祖国復帰は、さる6月17日日米両国政府間に調印された「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」により、昭和47年中に実現されることとなったが、なお多くの問題を残している。


沖縄の祖国復帰こそ、戦後26年に亘理り、党閑視されてきた沖縄県民の基本的人権を回復する重要な機会であることに鑑み、日本国政府は、請求権の補償問題、復帰に伴う国内法的諸救済措置、ドル問題の完全対策、米軍基地の撤去等、沖縄県民の人権にかかわる諸問題については、県民の意思を充分にとり入れて善処し、その責務を果たすに遺憾なきを期すべきである。


右決議する。


1971年(昭和46年)10月23日
第14回人権擁護大会、於神戸市


理由

沖縄の祖国復帰は、6月17日日米両国政府間に調印された「琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」によって、昭和47年中に実現されることに決定した。


沖縄の祖国復帰こそ、戦後26年余の長期にわたり、各方面において人権の保障から放置されて来た沖縄県民に対し、日本国憲法の保障する基本的人権を回復うる極めて重要な機会であることに鑑み、沖縄県民に対する軍用地返還に伴う復元補償、米軍の演習等により生じた人的、物的損害、米軍人、軍属による生命、身体、財産等に対する幾多の侵害行為の補償請求などについて、その責任の所在、補償の範囲、方法を明確にして、県民の不安を一掃すべきである。


復帰対策については、長期にわたるアメリカの占領下における軍事基地を撤去の方法で縮小し、経済上並に社会上の諸矛盾を克服して、その繁栄と実現するために、国内法的諸救済の措置を講じ、かつドル問題の完全対策、米軍雇用労務者の処置、社会保障制度の整備など、沖縄県民の意見を充分にとり入れ、日本国政府として責務を果たす遺憾のないよう強く要望する。


日本弁護士連合会は、多年にわたりアメリカの占領下にあった沖縄に対して、同胞としての共感性に立ち、人権問題を中心に多くの調査を行い、その結果を報告書として発表すと共に、日米両国政府に対して適切なる措置を講ずるよう要望してきたのであるが、ここに待望の復帰が実現されるにあたり、日本国政府は、憲法の理念に照し、適切なる諸施設を迅速に施行し、沖縄県民はもとより、日本国民の期待にこたえるべきである。


注(1) 提案会
東京弁護士会、第二東京弁護士会


注(2) 要望先
内閣総理大臣、外務・大蔵各大臣、防衛庁長官、総理府総務長官、衆・参両院法務委員会委員長、衆・参両院沖縄返還協定特別委員会委員長、衆・参両院沖縄及び北方問題に関する特別委員会委員長、各党党首