核および生物、化学兵器の開発、製造貯蔵、実験使用等即時停止に関する件(宣言)

われわれは、世界人権宣言および日本国憲法の精神にのっとり、世界のあらゆる国々に対し、平和と人権を脅かす核および生物、化学兵器の開発、製造貯蔵、実験、使用等の即時停止とその製造設備の完全廃棄を要求する。


われわれは、わが国政府および国会に対しこの切実な人道上の要求を現実の外交、国政において具現し、あわせて、身近な犠牲者たる原爆被曝者等に対する医療、生活保障などについて、万全の措置をとるよう強く要望しその実現を期する。


右決議する。


(昭和44年10月18日、於広島市、第12回人権擁護大会)


理由

今日における世界の不安と混乱は、強大国による、核兵器の大量保有、事件の反履に加えて、大量殺りくと徹底した生活破壊をもたらす細菌および毒ガス類の急速な開発、貯蔵等による平和と人権に対する脅威に由来している。


われわれは人類最初の被曝国の法曹として、これら科学の非人間的利用による新たな脅威に対し人道上これを黙過することはできない。


よって、われわれは世界の国々に対し、核兵器とともに右のような生物、化学兵器による平和と人権に対するあらゆる脅威の排除を要求する。沖縄の本土復帰を目前にして、あらためて核兵器の徹底排除と、右のような生物、化学兵器の絶滅に向って、わが国の政府および国会は積極的に取組むべきものである。一方身近なわが国の原爆の被曝者等に対する医療、生活保障等の現状は憂慮に耐えないものがあるので、早急のこれら犠牲者の救済措置をとることをつよく要望しその実現を期するものである。ともすれば、原爆被害を忘れ去ろうとするむきがある。しかし核兵器の脅威は、今日において飛躍的に増大しつつあることに想を致し、敢えてこの宣言をし、世界人類の永遠の繁栄を期するものである。


注(1) 提案会
第二東京弁護士会


注(2) 要望先
アメリカ合衆国大統領、ソビエト社会主義共和国連邦首相、イギリス連邦首相、フランス国大統領、中華人民共和国主席、右各国弁護士会会長、国際法律家協会会長、国際民主法律家協会会長、内閣総理大臣、外務大臣、厚生大臣、衆・参両院議長