刑事公判中の偽証嫌疑による証人逮捕に関する件(第四決議)

最近数件の刑事事件公判中、偽証嫌疑による証人の逮捕が行われ世人の注目するところとなった。これらは、いずれも無罪を主張する事件であり、証言の内容が有罪、無罪を決定する上に、きわめて重要な影響を与える案件である。


よって、かかる事件の公判手続中には、検察官は公訴事実の立証につき証人逮捕という権力的な方法をとらず、他の合理的手段によるべきである。


右決議する。


(昭和43年10月16日、於長崎市、第11回人権擁護大会)


理由

最近八海事件など刑事事件公判中、偽証嫌疑による証人の逮捕が行われたが、これらの事件は無罪主張の事件であり、証言の内容が有罪、無罪を決定する上に、きわめて重要な影響を与える案件であるだけに慎重でなければならないし、むしろ証人逮捕という権力的な方法をとらず他の合理的手段によるべきである。


公判手続中の立合検察官としては、あくまでもその訊問権を活用して証人の虚偽性を撃破し、証言の信用性を喪失させるかたわら、偽証の予防に努めるべきである。


また、よくある例であるが、証人が公判で警察調書と違う証言をした場合、偽証容疑ありとして検事室へ呼出し、取調べをなすことは権力を示唆、証人を圧迫するものであり、公判中心の原則を無視すること甚だしいので厳に戒められたい。


注(1) 提案会
東京弁護士会


注(2) 要望先
法務大臣、検事総長