交通機関、炭坑等の事故防止に関する件(第二決議)

最近、交通機関、炭鉱等における事故が頻発して多数の犠牲者を出したことは管理・監督の不備、綱紀の弛緩等によるものといわなければならない。


政府並びに事業主は、人命尊重の憲法の精神に則り、事故防止に万全の措置を講じ、不祥事の根絶を期すべきである。


右決議する。


(昭和43年10月16日、於長崎市、第11回人権擁護大会)


理由

  1. 最近少年自衛官の水死事件は訓練実施に当る上司が事前に検討すべき調査を怠り漫然これを実施した結果発生したる事故であり、かかる訓練実施は旧軍隊時代における人命軽視の風を馴致するものであり、今後厳に戒めるべき問題である。
    防衛庁は今後かかる訓練を実施するに当っては充分なる調査研究の結果に基づいて実施し、災害を再び招かないよう注意すべきである。
  2. 又最近頻発する国電衝突事件は国鉄職員の居眠り運転等によるものが多いが、右は綱紀の弛緩、責任感の欠如、監督の不充分の結果によるものであり、多くの人命を失わないようにするためにも国鉄当局は事故防止に万全の策を講ずるべきである。
  3. 更に炭鉱爆発事件により多くの人命が無惨に失われることは誠に忍び難い処である。かかる事故は炭鉱管理につき細心の注意が払われない結果によるものであり、炭鉱経営者に対し監督官庁は人命尊重の立場から事故防止の対策を講ずべきことを厳重に通達すべきである。
  4. 交通事故にいたっては、その被害は年々激増の一途を辿り、交通安全対策による事故防止の諸施策をもってしても事故の撲滅は期し難い現状であり、勿論事故防止のため更に施策の万全を期するとともに、かたがた交通事故による被害者の救済につき、公害対策の一環として国家的見地から次の措置を講ずべきである。
    1. 事故による損害を補償するに足る強制保険制度および補償基準額の飛躍的増額を計ると共に、保険金受領が容易な手続きで迅速に行われるべきこと。
    2. 国において加害者に代り、一時被害弁償をなし、爾後国が加害者より取立てる制度、立証責任の転換等の立法措置を講じること。

注(1) 提案会
第一東京弁護士会、福岡県弁護士会


注(2) 要望先
運輸大臣、通商産業大臣、厚生大臣、日本経営者団体連盟代表常任理事