世界人権宣言を具体化した二国際規約の批准に関する件(第一決議)

われわれは、「国際人権年」であるこの年にあたり、人権の尊重を基本原則とする日本国憲法の精神にかんがみ、世界人権宣言を具体化した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(同附属選択議定書を含む)および「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」につき、政府及び国会が速やかに批准の措置をとり、以て人権の分野において国内的にも国際的にも一段の進歩発展に寄与されるよう要望する。


右決議する。


(昭和43年10月16日、於長崎市、第10回人権擁護大会)


理由

本年は1948年(昭和23年)12月10日の国際連合による世界人権宣言採択の年から満20周年にあたり、国際連合は「国際人権年」として「国内的及び国際的に人権の分野での努力と計画を集中すること、またこの分野での成果を国際的に再検討する年」としている。そして国連はこの機械にこれまでに人権の分野で締結された諸条約の批准を加盟各国に要請しているが、そのなかでも前記二規約は世界人権宣言の具体化にため1966年(昭和41年)12月16日第21回国連総会で採択され、その批准を要請しているもので、基本的人権の擁護を使命とするわれわれ法曹としてとくに感心の深いものがある。


両規約は世界人権宣言の各人権条項より具体化するとともに、国際連合がこれからの人権尊重および遵守についての各加盟国による履行の状況を監視する措置を講じ、ことに「市民的及び政治的権利に関する国際規約」では、国際連合に「人権擁護委員会」を設置し人権問題の審査の権限を与えるとともに、附属選択議定書では、権利を侵害されたと主張する個人からの申立てを受理し審査することが定められていることにおいて画期的なものである。


この両国際規約を批准することは国内的にはもちろん、国際的にも人権がより一層尊重擁護せられることとなるのであり、国際人権年に最もふさわしい有意義な企てとなるであろう。


よって本決議をする次第である。


人権に関する国際規約抜粋

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約

(1966年12月16日、国際連合第21回総会において採択)


前文(略)


第一条


  1. すべての民族は、自決の権利を有する。それらの民族は、この権利に基づき、その政治的な地位を自由に決定し、その経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求するものとする。
  2. 民族は、国際的な経済協力から生ずる義務に反しない範囲において、かつ互恵の原則及び国際法に基づいて、その自然の富及び資源を自らの目的のために自由に処分することができる。如何なる場合にも、民族からそれ自身の生存の手段を奪ってはならない。
  3. 非自治地域及び信託統治地域の管理の責任を有する国々その他この規約の締約国は、国際連合憲章の規定に従って自決の権利の実現を促進し、この権利を尊重しなければならない。

市民的及び政治的権利に関する国際規約

(1966年12月16日、国際連合第21回総会において採択)


前文(略)


第二十八条


  1. 人権審査委員会(以下この規約の中では審査委員会という。)を設置する。それは、18名の委員から成り、以下に規定する任務を遂行するものとする。
  2. 審査委員会は、この規約の締約国の国民であって、徳の高い、人権の分野において有能であることの認められた人々をもって構成されるものとし、法律的な経験を有する若干の人々をこれに参加せしめることの有益であることが考慮されなければならない。
  3. 審査委員会の委員はその個人の資格において選挙されかつ任務を遂行するものとする。

市民的及び政治的権利に関する国際規約の附属選択議定書

(1966年12月16日、国際連合第21回総会において採択)


この議定書の締約国は、市民的及び政治的権利に関する規約(以下規約という。)の目的及びそれの規定の実施を更に達成するためには、規約の第4章により設置される人権審査委員会(以下審査委員会という。)が、この議定書の規定に従って、規約に掲げられているいずれかの権利を侵害されたと主張する個人からの申立てを受理し、これを審査することができるようすることが適当であるということを考慮し、以下のとおり協定した。


第一条


規約の締約国でこの議定書の締約国となる国は、その管轄の下にある個人で、規約に掲げられているいずれかの権利を締約国によって侵害されたと主張する者からの申立てを審査委員会が受理し、これを審査する権限をゆうすることを承認する。申立てが規約の締約国でこの議定書の締約国でない国に関するものであるときは、審査委員会は、これを受理してはならない。以上


注(1) 提案会
森川金寿会員(第二東京)


注(2) 要望先
内閣総理大臣、外務大臣、衆・参両院議長