交通反則金通行制度の運用に関する件(第三決議)

警察当局は、道路交通法の改正に伴い新設された「交通反則金通告制度」の実施運用に当り、いやしくも運転者の人権を侵害することのないよう捜査、通告、納付の諸手続に関し、細心の注意を払うべきである。


右決議する。


(昭和42年11月11日、於松山市、第10回人権擁護大会)


理由

本制度は、本来司法権に属する道路交通法違反事件の処分の一部を行政機関たる警察の長の権限に委ね、以って違反者に一定の処分を科さんとする制度である。


しかし、同制度は当該違反事実が取締機関たる警察の長の事実認定のみによって確定され、且つこれを前提として科せられる処分が実質的には刑罰に均しい処分である点において制度自体憲法違反の疑いを残すものであり、従ってその運用に当っては国民の人権に不測の侵害を与える危険性を内包している。すなわち警察の長の事実認定に不服ある自動車運転者は正式裁判申立の道は開かれているが、正式裁判申立の後無罪の確信が持てない限りにおいては、右事実確定が多少の喰違いがあっても不本意ながら右認定に服する気持となり誠に危険であるといわざるを得ない。


よって、運用を預る警察当局においては、その取扱いにおいて、いやしくも運転者の人権を損うことのないよう慎重を期し、捜査、通告、納付の各手続において細心の注意を払われるよう要望する。


注(1) 提案会
名古屋弁護士会


注(2) 要望先
法務大臣、警察庁長官、衆・参両院法務委員会委員長、同地方行政委員会委員長