未決勾留の身柄移鑑等に関する件(第二決議)

未勾留の措置は拘置監は拘置所を以て原則とする。然るに捜査当局は代用監獄を乱用し、不当な分散勾留を強行し、また、しばしば身柄の移監行う。これらは、何れも被疑者に過度の苦痛を与え、弁護人との交通を困難にし、歪曲された自白を招く恐れがある。


よって、次の措置を講ずるよう関係当局に要望する。


  1. 検察当局は刑事訴訟法・監獄法の原則を尊重しこの危険を防止するため最大の自粛をなすべきこと。
  2. 裁判所は令状の発行・移監の同意に際しては、人権擁護の立場より、検察当局の恣意を抑止すべきこと。

右決議する。


(昭和41年8月27日、於札幌市、第9回人権擁護大会)


理由

  1. 未勾留の拘置場所は拘置所を以て原則とすべきは監獄法の規定、人権尊重の立場からいって当然のことである。
    監獄法は代用監獄を認めているけれども、これは例外である。然るに実状は原則と例外がふりかわって、被疑者が検察庁に送られた後も長く警察の留置場に拘束されていることが多い。


    留置場は概して狭隘設備施設において不完全なるもの多く、ために拘禁者に不当の苦痛を与えるのみならず、捜査官の圧迫を大にし被疑者の迎合的自白を招来する危険が大である。


  2. 被疑者多数の場合検察当局は必要度をこえて代用監獄に分散し、甚だしきは13ケ所に分散した事実すらあり、かくては、被疑者は遠隔の地に拘禁され、弁護人との交通は事実上不可能となり、その防禦権は甚だしく侵害される。


    のみならず不当に身柄を移監し、弁護人を追って奔命につかれさせられる。これは往時のたらい廻しの弊風の踏襲であって人権擁護の上より看過すべからざることであり、刑事訴訟法の精神に反する。


  3. 令状発行に際し収監すべき場所を明示しなければならないが、裁判所が不当な収監場所を排撃されれば、代用監獄の乱用、不当な分散留置は防止できる筈である。


  4. 更に身柄移監については刑事訴訟規則80条により裁判所の同意を要し、且弁護人に通知すべきことになっている。


    この際裁判所が人権擁護の立場より、移監の同意に後見的抑止をされるならば、不当な移監は防止される筈である。


  5. よって検察当局の自粛を求むると共に、裁判所に対してもその後見的規制を要望するものである。


註(1) 提案会
近畿弁護士連合会
註(2) 要望先
最高裁判所長官、法務大臣、検事総長、警察庁長官