一般指定書(秘密交通権に関する様式20号)即時撤廃の件(決議)

弁護人と被疑者との接見は、裁判官といえども禁止することはできない。


しかるに、捜査当局が発行する接見指定書様式第20号と称する一般的指定書は、結果として右接見を禁止する効力を生ぜしめている。しかも、この指定書は検事総長の告示によるものにすぎない。


右様式第20号の指定は憲法第34条に違反するものであるから即時撤廃すべきである。


昭和40年9月25日
於秋田市、第8回人権擁護大会


様式第20号(刑訴第39条)

注意

  1. 本書をもって指定するときは、その謄本を被疑者、弁護人、監獄又は代用監獄の主務者に各一通ずつ交付すること。
  2. 監獄又は代用監獄の長は、移監の際その謄本を移監先に引き継ぐものととする。

接見又は授受に関する指定

被疑者


捜査のため必要があるので、右の者と、弁護人又は弁護を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見又は書類若しくは物の授受に関し、その日時、場所及び時間を別に発すべき指定書のとおり指定する。


昭和  年  月  日


警察署


司法警察員


様式第21号(刑訴第39条)

注意

接見又は授受を希望する者には、本書に所要事項を記入して交付すること。


指定書

被疑者


弁護人


捜査のため必要があるので、右被疑者と、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見又は書類若しくは物の授受に関し、下記のとおり指定する。


昭和  年  月  日


警察署


司法警察員


指定の日時及び時間


昭和  年  月  日


午   時   分から


午   時   分まで


の間に      間


指定の場所


備考

接見又は授受の機会を与えた記録


右指定により接見又は授受の機会を与えた結果は、次のとおりである。


  1. 接見時間  指定の午   時   分から午   時   分まで
  2. 授受物件

昭和  年  月  日


警察署


司法


理由

  1. 刑事訴訟法(以下刑訴法とする)第81条は、被告人に対し裁判所が接見禁止の決定をなし得ることを規定している。但し右接見禁止の決定は弁護人又は弁護人となろうとする者を除外しているから、被疑者、被告人と弁護人との接見交通は、裁判所といえども絶対に禁止することの出来ない基本的人権である。
  2. 然るに刑訴法第39条第3項に於て、捜査官に接見指定権を与えているところより、捜査官は弁護人に接見指定をなすことがある。

而して捜査官は、右接見指定をなす方法として、最高検察庁が、昭和36年6月1日最高検指示第1号として検事総長(清原邦一)より発せられた「司法警察職員捜査書類基本書式例」(第1号より第9号まで)の中、様式第20号、様式第21号によって行っている。


右様式第20号は別紙のとおりである。


してみると様式第20号の指定書は、法律・政令・規則に基かない単なる書式例に過ぎないものであるに拘らず、事実的には接見禁止の効力を実現している結果となっている。単なる書式例がかくの如き絶大な効力を持つとは、まことに驚くべき魔術であって、憲法第34条、刑訴法第39条に違反することは明かであるから、本決議案を提出し撤廃を要請するものである。