弁護人との接見後被害者に対し会談追求に関する件(決議)

われわれは、従来機会ある毎に被疑者と弁護人の秘密交通権が適法に行使されるよう要望してきたが、未だにその実効をみないことは、まことに遺憾にたえない。のみならず、最近、捜査官が接見後の被疑者に対して、弁護人との会談内容を執拗に追及していわれなき恐怖心を起こさしめる事例なしとしない。


よって、当局は、被疑者の人権保障と弁護権の尊重に欠くることなきよう善処せられたい。


昭和39年10月24日
於名古屋市、第7回人権擁護大会


理由

秘密交通権は、憲法第34条を根拠として刑事訴訟法第39条に明定された被告人又は被疑者の基本的人権である。即ち国家権力を背景とする捜査機関の強力なる圧制から被告人又は被疑者の人権を保護する唯一の権利であり、被疑者の弁護権の保障に有力なる武器である。又捜査の段階において弁護人の活動は原則として自由である。


されば、われわれは従来機会あるごとに刑事被疑者の秘密交通権の確立についてしばしば要望し、又厳重なる警告も発して来たのであるが、未だにその効果の挙がらないのはまことに遺憾である。殊に最近捜査当局は接見指定に名を藉りて稍もすれば、この秘密交通権を侵害し被疑者の人権をじゅうりんして省みない事例が非常に多いのである。


斯る事態は捜査当局自ら法の規定を犯しているもので厳重に戒しめる必要がある。又最近は接見後被疑者にその接見の内容を執拗に追及し、被疑者又は被告人に恐怖心を与え不安窮地に陥入れ自白強要の結果を招来する惧なしとしない。


われわれは、捜査当局の斯る違法行為を阻止し憲法に保障する人権を擁護するため重ねて本決議案を上呈した。