公害、災害の予防排除の件(宣言)

騒音、悪臭、粉塵、大気汚染、工場廃液等の公害、もしくは爆発事故等の災害により、国民生活の安全がたえず危険にさらされている現状は誠に遺憾である。


よって、憲法が国民に保障する人権の尊重と健康な生活の理念に照らし、速かに、これら公害災害の予防および排除につき、強力な行政監督ならびに適切な立法措置を期待する。


昭和39年10月24日
於名古屋市、第7回人権擁護大会


理由

  1. 最近四日市における大気汚染、悪臭、東京隅田川を初めとする各地河川の工場廃液による魚介類の死滅、更には熊本県水俣市における新日本窒素熊本工場の工場排水による水俣病の発生その他騒音、振動、粉塵、有毒ガス、悪臭等による公害並びに新潟地震に伴う火災と水害、東京都や川崎市に於ける爆発事故等の災害は我々が日常身をもって体験しているところであり、また殆ど毎日のように報道機関によって報ぜられているところでもある。
  2. そしてこれらに対する有効な対策が行われないため貴重な多数の人命を失う事例が多いのみならず、水俣市や隅田川沿岸において漁民が暴動に出る等暴力事件にまで発展する例もあって、国家治安の維持上も一日もゆるがせにすべからざる問題となっている。
  3. われら法曹は、右の現状を直視し、一日も早くこれに対する適切な施策が樹立実行せられることにより、国民の平穏な生活に対する妨害が未然に防止せられるとともに、一旦その生起したときは時を移さず救済措置を講じ、失われた権益を回復させ、正常な生活を取戻させるよう立法による即時万全の方策が実現せられることを念願して本提案に及んだ次第である。