保釈の条件に関する件(決意)

近時、裁判所によっては、実務経験の浅い判事補をして保釈を担当させ、又は刑事訴訟法第89条第4号第5号に藉口し、或は事実否認を理由として保釈を許可せず、若しくは保釈金額を過重して、事実上上訴を不可能ならしむるが如き事例が尠くない。


よって、裁判所に対し、保釈について基本的人権尊重の精神と、刑事訴訟法の原則に基き善処されるよう要望する。


昭和37年10月20日
於京都市、第5回人権擁護大会


理由

近時、裁判所の異なるにより保釈の条件に大なる差等を有することあり、又第1審における権利保釈の許否につき、実務経験の浅い判事補をして担当せしめるため、審理裁判官の都合のみを考慮し、刑訴法第85条第4号又は第5号に藉口して許可せざること多く、仮りに許可するとしても保釈金額其他被告人の負担にたえぬ条件を付して、恰も許否に等しい決定をなす事例少くない。また、上訴審における保釈についても第1審当時と事情の変更が認められないにかかわらず、保釈条件を加重し、事実上上訴を不可能ならしめる結果におちいらしめ、其他否認事件については保釈を許さない方針の如きは其理由の理解に苦しむものである。裁判所は保釈について基本的人権尊重と、当事者訴訟主義の刑事訴訟法の精神を容れて善処せられることを望む。