刑事訴訟法における上告理由の拡張要望の件(決議)

現行刑事訴訟法の上告理由を拡張すべきことは、かねて、われわれの主張してきたところである。殊に、死刑言渡の判決に、重大な事実誤認の疑がある場合に、これを適法な上告理由とすべきことは、生命を尊重する法理念の必然的要請である。


よって、現行刑事訴訟法は、少くとも死刑言渡事件については、速かに上告理由を拡張するよう改正すべきである。


1959年(昭和34年)10月24日
於岡山市、第2回人権擁護大会


理由

誤判による死刑の判決が確定し死刑が執行されたとするなら、それは裁判という名の下に行われる殺人ということが出来ようし、これくらい深刻な人権侵犯はない。


真に無実を争う被告人が、誤審により死刑に処せられた場合においても事実誤認は当然の上告理由にはなっていないのである。


基本的人権を保障した憲法の根本精神に鑑みると、死刑を言渡された事件の事実誤認は被告人の権利として、当然上告理由とならねばならないと思料する。


よって、右に副うよう関係法令の改正を求めんとするものである。