捜査官の取調に予断排除の件(決議)

犯罪の捜査に当る者が、関係人を取調べる際、往々にして予断をもって逮捕留置の手続により、被疑者被告人に不利な供述をなさしめ、又は有利な供述を取消さしめ、真実を歪曲するが如き取調べ方法を執ることがある。


斯くの如きは、人権尊重の立場上厳に慎まなければならない。


1958年(昭和33年)11月9日
於金沢市、第1回人権擁護大会


理由

二俣事件における山崎兵八巡査を偽証罪として逮捕した事実があるが、二俣事件の被告は無罪となった。また徳島のラジオ商殺しにおいては、内縁の妻が夫殺しとして有罪が確定しているが、その捜査を為すに当って証人となった雇人を逮捕留置して無理に有罪たらしめる証言を余儀なくさせた。しかも最近、この雇人が前言を取消した事実により、雇人の証言が問題となっている。更に京都五番町事件は遂に真犯人が出るに至り真犯人の存在を立証した証人を偽証罪として逮捕したのであるが、これら検察官の予断に副うような供述を強いて得ようとするような事例が往々にして発生していることに対し、捜査官の反省を促したい。