被疑者の不当逮捕改善の件(決議)

検察官が、被疑者を逮捕するに際しては法に準拠して慎重にされなければならないことは勿論である。しかるに最近砂川事件の学生逮捕およびニュースソース問題に関し、読売新聞社立松記者の逮捕事件があり、いずれも裁判所において令状請求を拒否された事案を生じた。


これは、令状請求が妥当であったかどうかにつき疑惑を生む原因ともなっておりまことに遺憾である。


われわれは、当局に対しこの際一段と被疑者の逮捕に慎重を期せられるよう要望する。


1957年(昭和32年)11月10日
於和歌山市白浜町、人権委員会秋季総会


理由

砂川の学生逮捕は、事件発生後2ヶ月を経過して、逃走のおそれなどない学生を突然逮捕し、しかもその被逮捕者のうちには一部人違いがあったといわれており、また読売新聞記者事件は、罪状の名誉毀損とは関係のないニュースソース秘匿を理由に逮捕したものである。しかし何れの場合も、裁判所より拘留請求を却下されたものであって、この却下された事実からして、逮捕状請求自体に捜査官の行き過ぎがみられる。


右両逮捕事件は、捜査の逮捕権行使に国民の疑惑を持たしむるものであって、遺憾に堪えない。


今後逮捕権の行使については深甚の注意を払うよう緊急要望するものである。