医師の人体実験に関する件(決議)

曩に、名古屋市立医科大学における乳児院乳児に対し、保護者の承諾を受けることなく、大腸菌の人体実験をなしたる事件あり。


更にまた、新潟精神病院は入院患者に対し、発熱療法として恙虫の病原体を接種しながら診療録の記載をなさず、新潟大学医学部と協力して一部の患者より保護義務者の承諾なくして患部の皮膚を切除し傷害を与えた事実あり。


かくの如きは、医学の進歩、或は医療に名を藉る人権侵害にして厳に戒告すべきものと認む。


1957年(昭和32年)4月7日
於東京都、人権委員会総会


理由

本件乳児並に精神患者に対する人体実験に関しては、当委員会の調査により、何れも人権侵害ありと認められたるものである。これらの事例によれば、医学の進歩或は医療実施のためなされたものであるとする医学的立場からの処置とされるが、傷害致死の結果をみたことは人体実験という状況下において最善の処置を怠ったものといえる。


斯様な事故が今後発生しないよう強く斯界の反省を希求するものである。