公安調査庁、検察庁の特高警察化傾向反対の件(決議)

国民の思想、集会、結社、言論の自由は、憲法の保障するところである。


然るに、近時公安調査官又は警察官が破壊的団体の規則に関する調査に藉口して個人の思想を調査し、集会出席者に妨害を加え、甚だしきは、集会の屋根裏に盗聴器を備える等の事実あることは真に遺憾である。


斯の如きは国民の基本的人権を無視し、特高警察制度の復活を招くおそれあることを憂慮する。


当局は、反省し国民の期待に応えんことを要望する。


1956年(昭和31年)10月27日
於佐賀市、人権委員会秋季総会


理由

左(下)記事例に基き、本決議を関係当局に要望されたい。



  1. 昭和27年2月20日から同年5月8日までの間、東京大学、北海道大学、東京教育大学、愛知大学、早稲田大学事件として学生と警察との対立は実に5回に及んだ。これは明かに個人の思想調査に基因するが故に思想の自由に対する侵害である。(憲法19条)
  2. 昭和28年頃から警察が全国の書店について、個人の購読雑誌名を調査している。これも思想の自由の侵害である。(憲法19条)
  3. 昭和31年6月17日東京教育大学で都学連第6回臨時大会が開催せられたが、この会合に私服警察官が発言内容をメモしていた。これは思想、集会、言論の自由の侵犯である。(憲法19条同21条)
  4. 昭和31年8月12日神戸市生田区中山手通4丁目兵教組合会館2階会議室で日共兵庫県委員会が会議をもったが2階の屋根裏に盗聴器が隠されていた。(憲法19条同21条)
  5. 昭和31年7月秋田県下一帯に亘って公安調査局は共産党の戸籍を洗うために役場へ戸籍謄本又は抄本を出せと命じた。これは結社の自由に対する侵犯である。(憲法21条)
  6. 昭和31年8月27日から3日間、東京都において開催された日本母親大会に茨城県の母親大会の会員が1人も出席しなかった。それは茨城県の警察によって会員の身元を洗われたためであるといわれている。これは集会の自由に対する侵犯である。(憲法21条-朝日新聞朝刊掲載)