逮捕状の乱発、勾留状切替につき検察官の職権乱用の件(決議)

逮捕状の乱発並に勾留状の切替は厳に慎むべきことで、本委員会は、既にしばしば決議としてその反省を当局に求めて来たところである。


然るに当局は、反省するところなく、近時各種被疑事件につき濫りに逮捕手続或は勾留状切替の手続を敢行し、加うるに勾留中の被疑者を呼出し、仮監に手錠のまま留置し取調べることなく徒らに日時を経過せしめ、敢えて被疑者に苦痛を与うるのみならず、弁護人との面接を阻止する事例少くない。


斯くの如きは、国民の基本的人権を無視したる行動であって黙視することができない。


当局は、将来この種行為に出でざるよう厳に留意自重されんことを要望する。


1956年(昭和31年)3月17日
於水戸市、人権委員会春季総会


理由

官憲による職権乱用の事例は、当委員会調査事件の中にも多くあり、近時逮捕状、勾留状の乱発例は非常に多い。右は捜査当局の機能不充分が原因とはいえ、これらの乱用は、大害あり影響するところ大であるから、当局のこれが改善を期待するものである。そもそも、この弊害は、被疑者、被告人に対しては、原則として逮捕、留置するとする誤った考えによるものであって、基本的人権を無視した処置として黙視できない。